2-3
「演出とは関わる全ての人、営業、技術、勿論クライアントに至るまで、関わる全ての、全ての人の思いを受け取る器が必要です。センスなんて二の次です。いい企画、いい切り口、その根本さえ揺らがなければ、多くの人が関われば関わる程、ドンドンいいものに仕上がっていきます。我が社のスタッフはその事を知っているからこそ、我が社に携わり仕事をこなしてくれるんです」更に熱を持って会社の様子を語る諸岡。
諸岡自身もどうしてこんなにも剛が気になるのかわからなかった。
しかし、剛が学生の頃死別した両親らしき声が、諸岡の心に訴えかけているのを感じていた。剛をよろしくお願いします──諸岡は胸の中が熱くなった。
そのせいで面接官と就職活動に来た学生が逆転したかのように、諸岡の熱い語りは二十分以上も続いた。社長と人事部部長はその両脇で諸岡と剛の顔を交互に見ている。
「永澤剛君! 」更に大きな声になる。
「はい」
「永澤剛君! 」
「は、はい」ガタン! その声の迫力に、椅子から立ち上がり直立不動になる剛。
「永澤剛君」
「はい!」元気な声で応えた。
「僕と一緒に仕事をしてくれますか? 」
「ええっ? 」──拍子抜けして驚いた。