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剛と諸岡が出逢ったのは、剛が大学の就職活動で広告代理店『爽』に面接にきた時だ。面接官が諸岡と安斉社長、人事部の部長だった。
「失礼します」剛がリクルートスーツで面接会場に入ってきた。奇しくも今日と同じ第一会議室をパーテーションで半分に区切って長テーブルが二つ置かれていた。そこに三人が座っていた。
「お座り下さい」
右端の人事部部長がそう言った。
「はい」フロアの真ん中に置かれた椅子に座る。
誰だこれ?──諸岡の第一印象だ。
社長と人事部部長はバリっとしたスーツで、穏やかに剛を見つめていたが、真ん中の諸岡は、ボサボサ頭に無精髭。眼光鋭く座っていても筋骨隆々で背がそこそこ高いのがわかる。ヨレヨレのダークスーツを着こなし? ワイシャツの袖と一緒に腕まくりしている。
ネクタイこそしているが首のあたりはユルユルだ。大物感はありありと出ているが、面接とは別の意味で緊張感がある。そう武道の稽古に来た新人に接する超ベテランのような威圧感たっぷりなのだ。
そんな諸岡をよそに、人事部部長は志望動機や、この会社でどんな事をやりたいか? そんな質問をしてきた。
剛は出来るだけ丁寧に自分を売り込んだ。
映像に興味があり、映画が好きで、どうしても演出方面に携わりたい、美術大学で映像学科を専攻し、数多く映像作品を発表しコンテストでも賞をとっている事を伝えた。