轡という底知れぬ相手
いやぁ、今回はバトルものにしようと頑張って見たんすけど、やっぱ難しいっすね!
うん!バトルもの難しいわー(棒読み)
「さてさてさーて!今日からクラス代表生徒決めていくよー!」
今張り切ってみんなを仕切ろうとしているのはクラス委員長の小岩井轡。この学校では珍しい空間を使う能力者だ。
空間を使う、と聞くと空間消滅、空間を爆破なんてのを連想させがちだが 、実際はそんな恐ろしいものではなく、学生の今くらいの能力者の実力では教室一個分の空間を作り出してその中のものを浮かせる程度のことしか出来ないらしい。
「んー?みんなやる気ない感じかな?だめだよー!やる気MAXのハイテンションで行こー!」
「なぁ、委員長」
「なぁに?あと、委員長じゃなくて轡って呼んでいいんだよー?」
「委員長、クラス代表の生徒決めはいいが、このテンションの中やるのは進行具合とかにも支障が出ると思うんだが?」
「むぅ、九条君のイケズゥ!……うん、そうだね……確かに……」
「何か考えでもあるのか?」
「んとね、やる気出してくれたら私がヌードをした写真集を出してあげるとか?」
「やっぱ、やる気よりあんたは恥じらい感を出せ」
何を堂々と言ってるんだこの人は……。
でもまぁ、こんな人でもれっきとした……。
「学園内実力5位なんだよな……」
「どうしたの?」
「いいえ、ただ、あんたの実力ってなんでこうふだんからにじみでたりしないのかなって」
「ふふーん!それは私が空間操作でさっきを消して……」
「それだけか?」
「……」
俺の一言に黙ってしまった委員長はやがてニコッと笑いつつ「何が言いたいのかなぁ?」と返してきた。
「いや、何でもない、続けてくれ」
「ふふ、さーて!みんなー!誰か代表になりたい人いるかなー!」
流石に今のやりとりの後で手を上げる奴はいないだろうと踏んでいた俺の予想は大いに外れ、十人ほど挙手する生徒が目に映った。
「この中から七人か……」
「いいや、五人だよ?」
「は?」
「君と私で後は五人でしょ?」
「俺は強制なのね?」
ニコッと笑う委員長の轡……いや怖いよ、笑顔がここまで威圧的な人初めて見たよ!!
「……ならあと五人はどうやって決めるんだ?」
「九条くんは誰がいい?」
「俺か……うーん、別に誰でもいいや」
「なにそれー!投げやりな感じ?」
まぁ、投げやりと思われても仕方ないだろうな、実際そうだし何より。
「俺はこいつらのこと何も知らないからな」
「……」
事実だった俺はこいつらの何もかもを知らない。
「ほんとに?」
「嘘をついてなにか俺にメリットがあるか?」
「お家にならあるんじゃない?」
「シャンプーじゃねぇよ」
委員長はこう言った冗談を言うため実力が測れないのだ。
ただ、委員長が戦っているところを見た人は口を揃えて「悪魔が踊っているようだった」というのだ。
ほんと、人の実力というのは見た目では測れないのが厄介だ。
「取り敢えず、あと五人のうちひとりだけなら俺が決めれる、あとはそっちで決めてくれ」
「ひとり?ひとりって言うと……?」
「可憐だ」
俺がそういうと可憐は「私ィ!?」と言って机を蹴り飛ばして立ち上がった。
「無理無理!私の戦いとかできないよ!?能力を欠点ばっかりだし……」
「そこは俺がどうにかしてやるから」
「でも……」
「お前ならできる」
可憐は少し考える素振りを見せると俺の方を見て、
「じゃあ……お願いしようかな?」
ニコッと微笑んだ。
「これで三人だ、残りはあんたが決めてくれ」
「うーん、仕方ないねぇ、なら……ちょっとだけ苦しいけど我慢してね!」
「は?」
俺がそういった時にはもう既に何もかも遅く、俺と可憐以外のクラスメイトは喉を押さえつけて苦しみもがいていた。
「っ!」
「い、委員長!?何をしているの!みんな苦しそう!」
「(空間操作か……あそこ一帯の酸素を抜いたと考えるべきだな)」
俺はスキルデバイスに術式を入力し、クラスメイトに向けた。
「コード零零八、対象空間操作……エラー対象として術者小岩井轡のスキルを相殺、そして術者に十分間スキル発動を禁ずる」
そう唱えると小岩井轡を囲んでいた術式はパラパラと散っていき、クラスメイトはやっと開放されたと皆が床に伏せていた。
「なんの意図があってこんなことをした……委員長」
「意図……ふふ、私ね、弱い仲間は嫌なの!だから、みんなには強くなってほしいなぁってね!」
「一歩間違えば死んでいたぞ」
「かもね!」
さっきまでのおちゃらけていた雰囲気はどこかに行き、今はなにか大事な何かを隠すために自分を偽っているように見えた。
「……まぁ、大事には至らなかったから今はいいかもしれない……が、もし、これ以上手荒な真似を繰り返すようなら俺は代表を降りるぞ」
「はーい!」
小岩井轡はまた、元気にいつも通り返事をした。
「じゃあ、俺は保健室から人数分の治療薬を取ってくる」
「あ、なら私も行く」
そう言ってついてきた可憐はぎゅっと俺の袖を握ってきた。
「ねぇ、蓮太……あの人ほんとに空間操作系の能力者なの?」
「ん?」
「だってあの人この学園での空間操作の能力の枠を超えてない?あんなの見たことないよ」
「あー、そうだった、お前は知らないんだったな」
「?」
そう、普通の人なら俺の前の説明を受けたあとにあの能力を見せられたらおかしいと思うだろう……だが、あいつは……
「あいつの能力は空間操作じゃなくて空間を作り出す能力だからな」
「空間を……作り出す?」
歴代の学園長クラスの能力者が扱うそれは禁忌とされている地域もあるほどに強力な能力だった。
俺も知ったのはつい最近で、知った時、驚きよりまず最初に納得してしまった。
よく良く考えれば学生レベルの空間操作程度で学園内5位になんてなれるわけがないのだ。
「空間を作り出す能力……それって、たしか……」
「あぁ、学園長クラスが所持する能力だ」
「それならなんで轡さんが……」
「それは……多分……」
そこまで言うと俺のケータイがブーブブッと鳴り、メッセージの着信を知らせた。
「ん?クラスのグループか……えっと?代表が無事決まったみたいだな」
「へぇ!もう決まったんだ!早いね!」
「やり方はあれだがな」
「うん、あの人やり方ひどいよね……」
「まぁ、俺たちは絶対にやられないよう気をつけなきゃな」
「ん……なんか、お腹すいてきちゃった」
「まだ一時間目だぞ?」
「すいちゃったものは仕方ないじゃん!」
もう限界と言ってお腹を摩る可憐はひとりでにとぼとぼと歩いて学食の方へと向かう。
「学食行くのか?」
「んー、ここの学食のおばちゃん優しいからいつもご飯くれるんだよー」
お腹がすいているのは完全にこいつのせいなんだがな。
それでもここのおばちゃんと言うものは飯をくれるらしい。
「今日のご飯はなっにかなー!」
「おい、あんま走るとこけ……」
その刹那だった。
俺は得体の知れないさっきを感じ振り向く……すると、そこには。
「お前が九条蓮太か、私は生徒会書記の鳳翼だ」
「生徒会書記?」
「あぁ、訳あってお前には生徒会室へとご同行願うことになった」
「俺は何もしてないぞ?今のところは」
「いいから来い、生徒会長が待っている」
「……」
生徒会長……俺の苦手な相手でありそして。
「お前のことをすごく楽しみにしていたぞ?未来のだんな様よ」
何を間違ったか、俺の許嫁である。
あとがきに書けばいいものを前書きに書いてしまったのでいうことが特にない天羽アクトです。
特にないのでここらで私の誕生日を……え?知らなくていい?……あ、そう……。




