サボり
初めまして、あかべと申します。
このサイトに登録して2時間弱の若輩者が勢いだけで書いてみました。
最後まで読んでいただければ幸いです。
今日、なんとなく会社を休んだ。
特に業務の内容や会社内の人間関係に悩まされていたわけではない。
本当になんとなく会社に行きたくなかった。
コンビニで缶コーヒーとタバコを買い、近所の公園に入り近くにあったベンチに腰掛ける。
買ってきたタバコをビニール袋から取り出し、封を開けて火をつける。
「ふーっ」
吸い込んだ煙と共に自分の中に溜まっていたモヤモヤを吐き出す。
顔を上げ空を仰ぐと相変わらずの曇り空。
「雨…降りそうだなぁ」
スーツ姿で朝っぱらから公園でタバコを吸ってる20代半ばの男性。
はたから見ている人にとって自分はどう思われているのだろうか。
夏休み真っ只中、しかもお盆ときたもんだから平日の朝でも公園にはそこそこの人気がある。
数少ない遊具で何人かの子供達がはしゃぎながら遊んでいる。
公園にあるもう一つのベンチで遊んでいる子供達の母親らしき人たちが談笑している。
それでも誰もこっちを見ない。
見ようとしないのか、はたまた関心がないのか。
まぁ考えてみれば楽しい時間を過ごしている時は誰だって周りに疎くなる…と思いたい。
ちょっと変なおじさんがいる。
その程度の認識だろう。
しばらく公園をぼーっと眺めているとタバコ葉っぱが全部灰になっていた。
携帯灰皿に灰を落とそうとタバコを近づけた瞬間、この季節に似つかわしくないくらいの強い風が吹き抜け、灰皿の一歩手前でぽとりと落ちた。
「スーツ汚れちゃった」
灰が落ち、汚れてしまったスーツを眺めながらふと感慨深い気持ちになる。
上京前に母親から買ってもらったスーツ。
上京して給料が入ってきてから、自分でも何着か買っていたが大事な日には必ず着るようにしていた。
なんとなく勇気が出るから。
大事に着続けていても3年も経てば割とヘタってきた。
俯いていると頬をつたって一滴の水がスーツに落ちてきた。
顔を上げるとにわかに雨が降り始めていた。
「あれから3年も経ったんだな」
スーツに落ちた水滴が雨なのか涙なのかは、もう自分でも分からなくなっていた。
…………。
地元から就職のために上京して忙しいままに毎日を過ごしていたら気づいたときには3年の月日が経とうとしていた。
特に業務の内容や会社内の人間関係に悩まされていたわけではない。
本当になんとなく会社に行きたくなかった。
例え体調が悪かろうが仕事には毎日行っていたからこれが入社して初めての有給だ。
上司に休むことを連絡する時はとても緊張した。
電話帳から上司の電話番号を選んで後はボタンを一回押すだけなのに、いつもは数秒で終わるはずなのに。
今日ばかりは30分以上かかった。
「もしもし、山口です。朝早くに申し訳ありません。」
腹をくくって発信した。繋がるまで10秒とかからなかった。
たぶん最初の一言は声が震えていただろう。
「おう、山口か。おはよう。どうした?」
「今日体調が悪いので、お休みを頂けたらと思いまして連絡させていただきました。」
「休むのは構わないが、大丈夫か?いままで多少体調が悪くても来ていただろ?」
「ぶっ倒れるほどではないですけど、この状態で行っても仕事にはならないかなと思いまして…」
「んー。わかった。こっちはおれに任せておけ。山口はしっかり休んでまた明日元気になって出てこいよ。」
「ありがとうございます。すみませんが、よろしくお願いします。」
電話が切れると同時に緊張の糸もぶつりと切れた気がした。
案の定、上司からは心配された。
これもひとえに日頃の行いの成果ってやつだろうか。
上司の気遣いはとても辛かった。
それから休みだというのにスーツに着替えいつも通りの時間に家を出た。
もう何回も歩いた見慣れた通勤通路。
変わらない風景。
夏休みだからか子供はちらほらと目につく。
いつものように歩いているといつの間にか駅についていた。
駅のコンビニで缶コーヒーとタバコを買って、駅から離れた。
来た道とは別の道を歩いていると、公園が見えた。
公園に入ると数人の子供とその母親らしき人たちが楽しそうに過ごしていた。
遊具の少ない公園だったが、遊んでいる子供達は大層楽しげだった。
入口の近くにあったベンチに腰掛けるため、足を向けると空からぽつりぽつりと雨が降り始めた。
傘を持っていなかったので、踵を返し公園を後にする。
公園のベンチには飲みかけの缶コーヒーとほぼ新品のタバコの箱があった。
そして次の日も会社を休んだ。
この度はこんな駄文に付き合っていただきありがとうございます。
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