泣き虫な私の番
巻き込まれた少女のお話
空高くそびえるこの山の頂上の花畑に、
お互いに寄り添う2匹の龍がいた。
ぐっすりと寝ている片方の龍に頬ずりする
美しい鱗をもつ白龍は、
なかなか起きない自分の愛する番に
何か言いたげな様子。
そして、その宝石のような瞳からは涙が
こぼれ落ちている。
くるるるる、と喉を鳴らす番に、
湿った鼻を押し付ける。
「グスッ、愛しい僕のリーア、起きて。
長い夜が明けたよ 。
それに、ソロソロ彼奴らがやってくるよ。
僕たちの邪魔をする、彼奴らが来るよ。」
その言葉を聞くと、
ぴくっとリーアと呼ばれた龍は、
うっすらと目が覚めた。
そして、ボロボロ涙を流す自分の番に
気付き、クスッと笑った。
「おはよう、泣き主なアレクシード。
また怖い夢でも見ちゃったの? 」
「ああぁ!リーア!!
遅い!起きるのがおそいよぉぉ!
うえええぇぇん!!」
あれだけ、愛しい番を起こそうとしていたのに、 まだ彼は泣き続ける。
しかし、自分の泣いている彼を
眺める彼女は、
そんなの慣れたわ〜と言う様子で、
のほほんとしていたが、
下からやってくる馬の蹄の音を聞く。
そして、彼らの姿をはっきりと確認すると
彼女は露骨に嫌な顔をした。
また、彼は一層うるうるしてしまった。
そして、やってきた連中の中心にいた1人の少女がこちらへ向かって走ってくる。
それと同時に、2匹の龍は戦闘態勢に入る。
ガルルと威嚇する鳴き声と共に、口から炎をメラメラ吐き出そうとする赤龍リーアと、
そんな勇ましい彼女を見て、
彼は、天に向かい、
きゅるきゅると涙声で少し鳴き、青く晴れていた空を、雷がビリビリとする豪雨にした。
そして、
白龍アレクシードは番に尻尾で叩かれた。
「この可愛いお馬鹿さん!
どうして、私の炎を消すような天気に
しちゃってるのよ!」
「だって!僕はリーアに
戦わせたくないんだもん!」
「もん!じゃないわよーッ!!!」
そうこう、お互い叫び合っていると、
今の喧嘩の原因が近寄って、結界を張った。
そして、少女の後ろに剣士、魔法使い、
僧侶、武闘家が戦闘態勢に入る。
…岩の陰に隠れるひ弱そうな少年はカウントしない。
そして、少女の掛け声と共に、
戦いの火蓋が開かれる。
「さぁ!!炎龍!白龍!
私の使い魔になりなさい!!!」
まだキレまくっている2匹の龍たちに
向かって人間たちは、走り寄ってくる。
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今は、人間たちを倒した後。
ぐすっぐすっ。
疲れて眠る私に
アレクシードが頬ずりする。
「リーア、僕を置いていかないで…。」
馬鹿で泣き虫で心配性の彼が
私の生きる意味。
私は、あの女と共に巻き込まれ召喚された。
あの女は、金髪の美少女となった自分に
酔い、乙女ゲームと叫びながらこの世界の男共をはべらせて、喜んでいたわ。
そんな彼女と反対に私は赤龍の姿で
召喚された。
私を見て、
周囲が困惑する中、あの女はこう言った。
「私の使役する使い魔にするわ!」
彼奴からも城からも国からも、世界からも、私は逃げようとした。
未開の地に辿り着いた時、逃げる事を
私は疲れた。いや、諦めたのかもしれない。
しばらくの間、そこで眠っていたら、何かにスリスリされている。
なんだろうなぁ〜と思いつつも、それが心地よくて、そのまま放置することにした。
でも、無反応な私にそれは焦ったのか、
ペロペロ舐めてきたり、頬ずりを高速でしてきたり…と、色々してきた。
乙女になりしやがるんだテメー…!
文句を言ってやろうかと思ったけど、
…うぅん。今更目を開けられないよね!
どうしよーかなぁとウンウン悩んでいたら、
暖かい雨が降ってきた。
グスグスと何かが泣いている。
心が急にざわざわしてしまい、
思わず、目をあけてしまった。
そこにいたのは、
きれいな、きれいな、
泣いている白い龍だった。
これが、私と彼との出会い。
…頬づり→頬ずり
訂正しました…
お知らせがある為、
作者の活動報告まで足を運んで頂けたら
幸いです(。-_-。)