お風呂会議
サムがロンドンから帰ってきた。夕飯は済ませてきたらしい。
私『ねぇ、聞いて。葉が急に家事を手伝ってくれるようになったんだけど・・・。』
佐村『良いことじゃないか。』
私『急によ・・・学校で何かあったのかな・・・。』
佐村『・・・今日、一緒に風呂入る?』
私たちは月に一度、一緒にお風呂に入ってお互いの近況を話し合うことにしている。苗が産まれてからは、お互いの体を見る機会も少なくなった。所謂、セックスレスの状態だ。私がそういうのに興味無くなってるんだけどね。だから、申し訳程度のキス一回もこれで済ませる。あくまでも近況を話し合うことが目的だから、次の段階には進まない。
佐村『葉が、いじめられているかもしれないって?』
私『いや、私もわかんないよ・・・とりあえず近況としては、葉の変化が心配だってこと。』
佐村『でも、そういう兆候ってマイナスな変化のときだけなんじゃないか?』
私『わかんないけどって言ってるじゃない。友達は人並みにいるみたいだから大丈夫だとは思うけど・・・そっちの近況は?』
佐村『この歳になると若い奴らと絡む機会が増えるだろ?世代間ギャップ。最近、良く感じるようになってさ。俺がコードを弾けって言っても弾けねぇの(笑)指の形を教えてくださいって。』
私『えー・・・なんで、ギタリストになったんだろ。』
佐村『ギターを弾くのが初めてだったんだよ。普段は打ち込みで作曲してるらしい。つか、よくコード覚えずに作曲出来るなって、ある意味感心したんだけど。コード進行って何ですか?とも言われた。』
私『怒った?(笑)』
佐村『いや、怒る気にもならなかった。へらへらしてんだぜ?・・・あ、肩だったな。』
私『そうそう、いつ気づくかと。』
肩揉みはお風呂会議の醍醐味。いつかの会議で日頃の家事が原因の肩凝りを訴えたら、お決まりになったのだ。月に一度、この優しさがあるから毎日を頑張れる・・・と、自分に言い聞かせる。でも、人見なら毎日とは言わないけれど、出来るだけ家に帰ってきてくれて、自発的に私の体を労ってくれたんじゃないかな・・・。
佐村『色葉。』
私『はあ・・・ん、なに。』
佐村『久しぶりにする?』
私『しません。』
佐村『衰えてると思ってるだろ(笑)俺はまだまだ・・・。』
私『さて、衰えていないと。どこかで試したんですか。』
佐村『俺も意外とまだまだイケるんだなーって・・・。』
私『だから、どこで!!ロンドンで何かあったの!?変な事件が発覚しても、守ってあげないよ!!』
佐村『ひとり・・・ひとり・・・ちょっと、ふざけて言ってみただけじゃないか、ははは。』
私『まったく・・・発言も気をつけてよ。世間はそういう発言に厳しいんだから。発言と言えば・・・自分の評判知ってる?』
佐村『評判?可もなく不可もなく程度じゃないか。』
私『テレビに最近呼ばれてるから、ネットでボロクソに叩かれてんの。私はネットの中だから、そんなに心配はしていないんだけど、葉が気にしちゃってて・・・この前の喧嘩も、それが原因だったみたい。』
佐村『どんな叩かれ方してんだ?』
私『怒らないでよ。』
ウザいが軸にあって、誹謗中傷の数々・・・たまに擁護してくれる人もいるけど、それが油となって・・・
私『てな感じ。』
佐村『・・・でか、9割方台本なんだけどな(笑)一般の人たちにはわかんないよな。』
私『叩く人もバラエティー番組に出ると嫌な奴になるということは認識してるから、タイトルが『【テレビに出ると】佐村義一【ウザくなる】』だったんだ。』
佐村『なんだ(笑)ネタにされてるってことか。でも、それは葉もわかってるよな。なんで、マジギレしたんだ?』
私『さあ・・・。』
自分の父親はバカにされるのが嫌だったから?でも、葉はサムのことが嫌いだと言ってたし・・・うーん・・・よく、観察してみよう。
千香『テープ、聞かせてよ。』
晴樹『俺は触りの部分も聞いてないんだぞ。』
綾乃『それは晴樹が来なかったからでしょ。やっぱり、私たちがいたら再生出来ない・・・?』
葉『俺も何度か聴き直してるんだけど、あの部分から聴けないんだよ・・・。』
千香『ああ・・・聴けてないんだ・・・そりゃそうだよね・・・。』
晴樹『なんだよ、あの部分って(笑)』
葉『・・・お前、笑ったな。笑ったよな!?』
晴樹『笑ったらいけねぇの?』
葉『あ?』
綾乃『ちょ、ちょっと二人ともダメ!!もう・・・頭に血が上りやすいんだから。』
晴樹『なあ、一体なんだよ。アレって。』
綾乃『すっごく、デリケートな話だから追求しないで。気持ち良い録音でもなさそうだから・・・葉・・・?』
葉『・・・辛い。』