録音テープ
ちゅー
私『それ、美味しい?』
苗『美味しいよ。飲む?』
私『私は苦手・・・公子、私のも取って。』
公子『はい。ハンバーガーなんて久しぶりに食べるでしょ。』
私『そうだね。葉は昼どうしてるのかな。携帯にかけてみよう。』
スタジオの中はまるで倉庫のよう。アルバムはアルバムでも、思い出のアルバムも積まれている。
葉『げっ・・・。』
千香『ん・・・ははは(笑)』
葉『わ、笑い過ぎだろ!!』
綾乃『なになに。』
葉『ああ!?綾乃は見るな!!』
プルルルル・・・プルルルル・・・
千香『誰?』
葉『母さん・・・出るか。』
私『葉、お昼はどうしてる?』
葉『え、昼・・・まだ、食ってないけど。』
私『ちゃんと食べなさいよ。冷蔵庫に今日の昼に使うはずだった鶏肉があるから、鶏肉を焼いて、キャベツをみじん切りにして、皿に盛り付けて・・・。』
葉『わかった、わかった。』
私『本当にわかってる?』
葉『わかってるって、切るよ・・・ウザい。』
綾乃『いつ帰ってくるか、聞いてないよね・・・。』
葉『あ。』
綾乃『もう・・・バカ!!』
葉『ま、まあまあ。見張りしなくていいから。二人で探してても見つかりそうにない。』
千香『でも、見張りいないとまずいでしょ。』
葉『スタジオの外で一人にするのも可哀想だろ・・・可哀想だろ。』
千香『なんで、二回言ってんの(笑)』
綾乃『ねえ、これって、葉のお父さんとお母さんが結婚する前の写真じゃない?』
千香『付き合ってるときの写真だ(笑)』
二人で水族館に行ったときの写真。ノラないサムを引っ張ってお花畑を見に行ったときの写真。車の中でふざけて撮った写真・・・。
葉『もういいだろ。それも関係ないじゃん。』
綾乃『もっと見たい。』
動物嫌いのサムが怖がりながらウサギと戯れてる写真。ライブ会場が苦手な私が精一杯笑っている写真。九州旅行で温泉街を手を繋いで歩いてる写真。
千香『ラブラブだね。』
喧嘩した証拠にと私の泣き顔を収めた写真。サムの脇腹の傷がまだ癒えてないことを示す写真。
綾乃『傷・・・今も残ってる・・・?』
葉『うん・・・。』
指輪を貰った日の夜、私の小さい手とサムの大きい手を重ねている写真。結婚式の代わりに開いたパーティーで仲間たちと笑っている写真。新婚旅行先の綺麗な海で撮った写真。
葉『もういい。真面目に探そう。』
ポタッ・・・
綾乃『これって、カセットテープ・・・?』
千香『見せて・・・うわあ、初めて見た。ここなら聴けるんじゃない?』
葉『貸して。穴ある?』
三人はカセットテープを差し込む”穴”を探した。・・・あった。
千香『もしかしたら、未発表曲とかなんじゃない?』
葉『わからない。デモテープかも知れないぞ。』
テープを再生すると、流れてきたのは・・・
私『・・・いい?』
佐村『OK』
私『ふぅ・・・私は、えーっと・・・佐村義一さんと結婚しました。』
綾乃『お母さんの声だよね・・・?』
葉『・・・。』
私『子供は・・・三人くらい欲しいかな、あはは・・・でも、私は・・・子供を産んだとしても、長男、長女が成人するまで生きている自信がありません(笑)』
葉『・・・。』
私『だから・・・恥ずかしいけれど、こんな音声を残してみようと思いました。この音声を聞いているということは、私はもうこの世にいないということ。サム・・・お父さんに頼んでる。私が子供を成人まで育てることが出来なかったら・・・うう・・・。』
葉『・・・。』
私『ごめんなさい・・・私はあなたが産まれる前、堕ちるとこまで落ちました。体も心もボロボロになるほど・・・自業自得・・・だから・・・うう・・・。』
佐村『ダメだ・・・やっぱり、キツいだろ・・。』
私『大丈夫・・・伝えなくちゃならないから・・・私の罪は・・・。』
カチ
千香『あ・・・。』
綾乃『聞くのやめちゃうの・・・。』
葉『15歳・・・あと5年・・・まだ可能性はあるじゃないか。』
千香『でも・・・ドッキリで作っただけじゃないの?』
綾乃『私の罪は・・・って言ってたよね。』
葉『・・・ちょっと、今日はもう探す気になれない。また日を改めて、今日は解散しよう。』