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モザイク5〜MOSAIC PART 5  作者: AKI
究明編
57/61

ヒーロー

数日後、学校では事件のことについての全校集会が開かれた。


葉と千香の仲は周知の事実。隠す必要もなく、葉は女子から質問攻めにあった。女の勘は恐ろしく、事件の真相をほぼ言い当てたような憶測も流れた。


晴樹『外野の癖に勝手なこと言うよな。』


葉『まあ・・・。』


男友達は葉に同情的だ。壊れた千香が起こした事件に振り回される必要はないと。


葉は真実を話せる相手が欲しいと思った。父や母、妹には話せない。あまりにも近すぎる。


女友達にはアテがない。男友達では同情を欲してるようで気恥ずかしい。


家族のように近くなく、男友達のように変に同情的でなく、自分を理解してくれるだろう女友達。言うなれば優しい彼女に真実を話したいのだ。


アテがなければ探せばいい。


葉『なあ、晴樹。綾乃の番号って消してないか。』


晴樹『お前、消したのか。』


葉『千香に言われて番号もLINEも消したんだ。』


晴樹『そういうことか。』


教えてもらった番号に掛けてみる。留守電だ。


葉『えーっと、由井綾乃の番号で間違いないよな。間違いなければ折り返し・・・。』


綾乃『葉?』


葉『久しぶり。』


綾乃『ごめん、知らない番号だったから・・・。』


葉『いいんだよ。晴樹から教えてもらって掛けてる。』


綾乃も番号を消していた。それでもいい。月日は流れている。事情を話すと綾乃は驚いたような声で応えた。


どうやら、テレビやネットを見る暇もないらしい。


葉『俺はどうすればいいと思う?』


綾乃『わかんない。でも・・・。』


言葉に詰まるのは特別な思いが透明な壁を作り出しているから。


葉『どんなアドバイスでも構わない。』


笑ってくれても、叱ってくれても。そう思っていた葉に予想外の反応が返ってくる。綾乃は鼻をすすっている。


綾乃『千香を捨てちゃダメだよ。その葵って子も捨てないで。』


どうすればいい。二人を捨てきれなかったから事件が起きた。葉は事情を詳しく話す。綾乃は・・・


綾乃『どっちかを捨てる気?』


千香。躊躇なく答える葉に綾乃の鼻すすりがはっきりと鳴る。


それに対して風邪かと聞く葉。鈍感は中々治らない。


千香のために引いたのに、千香を捨てると言った葉に悲しくて堪えているのだ。


綾乃は千香を捨てるのならば何故、葵の側に居てあげないのかを問われた。


葉『怖いんだ。』


指名手配犯のような気持ち。顔の見えない群衆が監視している。本当はずっと側に居たい。


綾乃『漫画とかドラマの世界では主人公がその場に居ないと、物語は停滞してしまうんだよ。』


葉『主人公?冗談はよせよ。俺なんてただのモブ。』


綾乃『モブはそんなに感情豊かじゃないと思う。』


葉『だからと言って俺が主人公なわけ・・・。』


綾乃『じゃあヒーロー。みんなから愛されるヒーロー。私も好きだったヒーロー。』


綾乃との通話が途切れた。電波が悪いのか、再度かけ直しても綾乃は出なかった。


近くにいたはずの晴樹もいつの間にか姿を消しており、空は夕焼けで真っ赤に染まっていた。


その暖かい色に見惚れていると、晴樹が戻ってきた。長えから暇つぶしていたらしい。一体何時間、綾乃と話していたのか。葉は時計を見て立ち上がった。まるでヒーローのように。

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