葉と私
私が葉に謝らなければならない事。過去はモザイク掛かっているけど、そのモザイクを作ったのは私自身だから。謝らなければならない。
あれはサムと喧嘩してしまって、人見の家に逃げ込んだ日。喧嘩の理由は子供が出来ないから、二人とも苛々してたから些細な事で爆発したんだと思う。
私は人見の家に逃げ込んだ。サムはそれをわかっていた。むしろ、私を手放したかったのかも知れない。
なんだかんだでよりを戻した私達。人見の家からの帰り道は気まずかった。一言も交わすことなく、お互いが横にならないように歩いてた。
新婚夫婦とは思えない二人は寝室で小声で話し合った。
佐村『どうだった。』
私『どうだったってどういうこと。』
佐村『俺と比べて人見。』
私『・・・。』
佐村『人見はああ言ったけど、選ぶのは色葉だろ。』
私『違うよ。私だけじゃなくて、二人が選ぶんだよ。今後のこと。』
佐村『もしも、近々子供が出来たらどう思う。』
私『私の子供だと思う。』
佐村『そんな感じか。』
私『だから一人になっても構わない。』
佐村『二人で選ぶって言ったろ。』
私『言ったのは私。じゃあ、サムは一人になりたくないってこと?』
佐村『親御さんにも挨拶してるし、友達集めて結婚祝いも開いたんだ。そう簡単に別れられない。』
私『仕方なくってことみたい。』
それから会話は続かなかったけど、翌日には普通の新婚夫婦に戻って愛を育んで葉を身籠った。問題は父親。
戸籍上も実質的にもサムが父親なのは間違いないのだけれど、科学の力で証明されたくはない。
私『こんな親でごめんね。お父さんもそれが分かっていた上で、私たちは葉を出産して育てたの。』
葉『俺はそれをどうとも思わないけど、まるで死ぬ前の最後の遺言みたいじゃないか。』
私『そうだよ。私、一年以内に死ぬかもしれない。』
葉『不吉なこと言うなって。』
私『葉は家族だから良いことも悪いことも共有しなくちゃならないの。』
先日のこと。葉に退院することは伝えてたけど、日にちは伝えてなかった。それだけが原因ではなく、葉は常に疎外感を感じていたのかもしれない。
事件との関連性はないのだろうか。千香ちゃんについての対応が不自然な気がしたんだ。
私『人見は女の子に優しかったけど浮気癖があって、何人も乗り換えてたみたいなの。まさか、千香ちゃんと別れた後に事件が起きたわけじゃないよね。』
葉『過保護かよ。そんなの俺の勝手だろ。』
はっきりと私の問いかけに答えないまま、葉は部屋を出て行ってしまった。
母の勘は死期が近いと冴える・・・らしいから踏み込んだけど、思い過ごしだったのかな。
私は何かを残そうと焦っている。モザイクがかったものじゃなく、はっきりと形の残る何かを。
携帯の着信音。サムから。
食欲あるかと。ないよ。ごめん。ありがと。早く帰ってきてね。安全運転で。うん。あ、甘い飲み物が欲しいかな。




