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モザイク5〜MOSAIC PART 5  作者: AKI
究明編
53/61

壊れた

だって、そうなんだもん。


葵の台詞は葉を混乱させた。


どういう意味と聞こうにも、帰ってくる答えは分かっている。かといって、それが見当違いだったときの対処は分からない。


葵『無理やりキスされて、いつのまにか月は過ぎて、その間に沢山悩んだ。正直に言うと食事が喉を通らない日もある。』


葉『俺のことで?』


葵『一人になると寂しいけど。それを癒してくれるのは、いつも葉だったから。でも、病んじゃったちかりんがいるから、気のない素振りを続けてた。』


葉『・・・なんとなく分かってた。けど、マジで?なあ、本気マジなのか?』


何度も確認する。あれだけガードが固かった葵は本当に友達の一線越えを許してくれたのか。


葵『やっぱり、ちかりん?』


葉『いや・・・千香のことは、もうどうでもいいんだけど・・・本気なんだよな?』


葵は小さな声で『うん。』も言いながら頷いた。その顔は、いつも見ている葵とは違って見える。


葵『ママが帰ってくる前に。』


葉『・・・あ、ああ。』


早速、葉は葵の胸を・・・


葵『添い寝してくれるだけでいい。』


葉『まさかソフレ?』


葵『ううん。気が早すぎ。』


十分後。葵がぽつりと。


葵『やっぱり、安心する。もういいよ。』


葉『は?』


葵『確信し・・・。』


葵が体を起こしたとき目に映ってしまった。目に映ったものは人。それも二人が良く知る人。


千香『う・・・うう・・・。』


大粒の涙が溢れている。葉はまだ気づかない。葵も葉に伝えることができない。


葉『もっと安心させてやるよ。』


葵『ん!?待って・・・。』


葉が本気になった。葵はこの間にも千香がいた方向を確認する。が、既に姿はなかった。


葉『どこ見てんだよ。』


葵『千香・・・。』


その言葉を聞いて葉はその手を止め、スマホを手に取った。



葵の家で用事?


何してんのー


・・・


(・・)


まだかなぁ(。-_-。)ちかつ〜ん


(・・)



葉『全然、気が付かなかった。』


葵『私も。』



ピロン


嘘つき(・・)



葉『かえって説明する手間が省けた。』


そういうことーバイバイなー



葵『千香はもういいんだ。』


葉『あの事件から面倒臭い奴になったから。』


葵『・・・どうなのかな。』


葉『何が?さっきから安心するとか、どうなのかとか何なんだよ。』


葵『人見。』


葉『人見?その名前嫌いなんだよ。』


葵『私、人見大輔の隠し子。で、葉は多分、人見大輔と白瀬色葉の子。私と葵は異父母姉弟。』


葵の言葉に葉は怒りを覚えた。良く、そう簡単に嘘をつけるなと。ブーメランだけど。


葉『根拠は。』


葵『根拠はないけど、普通の人とは違う何かが・・・。』


グサッ


千香『・・・。』


葵『う・・・あ・・・。』


葉『な、何やってんだ、お前!!』


そこに立っていたのは無表情の千香。葵の横腹を包丁で刺した。


千香『何が目的か知らないけれど、私と葉を騙したなんて許せない。クールなフリして空かしてるのも、ずっと気に食わなかった。上から目線で説教したり。ね、葉。』


葉『・・・!?』


包丁は葉の眉間を指す。葵も一瞬の出来事に呆然としていたが、事を理解し始め呻き始めた。


千香『もう付き合い始めて一年が過ぎる頃だよ。でも、最近は日曜日に遊ぼうって言ってもはぐらかしちゃうし、葉から呼び出されて、わくわくしながら待ち合わせ場所に行っても、抱かれるだけ。その後はすぐバイバイ。』


葉『じゃあ、別れよう。その・・・あれだ、友達のままで別れよう。』


千香『やだ。そんな幻想なんかやだ。恋人だよ。ドライブしたり、遊園地に行ったり、チョコの交換したり、ショッピングしたり・・・そういう恋人になりたい。』


葉『友達に戻っても出来る。』


千香『友達のままじゃ結婚出来ない。』


葉『そんな先のことなんて知るかよ。今のこの状況はどうすんだよ。』


千香『・・・。』


葵『うう・・・痛い・・・助けて・・・。』


横腹が真っ赤に染まり、医学の知識が無くとも出血多量の結末は脳裏に浮かぶ。葉は包丁を持つ千香の手首を掴んだ。


葉『殺人者になりたくなければ、それを離して救急車呼べ。まだ辛うじて間に合う。』


千香はまるで精神が閉じられた人間のように俯いた。


千香『怖い・・・。』


葉『お前が一番怖えよ、馬鹿。あーくそ。』


部屋の中にあるダメージジーンズを切り葵を止血した葉。救急車を呼んだ後に考えた。千香はどうする。と、考えは無駄になる。刺されたと救急車を呼べば、セットで警察が付いてくる。


葵が運ばれる。葉はそれに付き添う。赤い包丁を持った千香は俯いたまま連れて行かれた。


救急車内で葉は葵を励まし続ける。頑張れとか、負けるなとかよりも、意識を保つ為に、他愛ない雑談を続けた。


しかし、緊急事態でなくとも話題は尽きるもの。心拍計の音と生々しい息遣いが聞こえるだけ。


結局、葉は葵の側に居るだけで何もできなかった。俺って何なんだろう。最低な男なんじゃないか。千香の我慢にも気付けず、瀕死の葵も励ませず。そもそも二股かけて誰が得をしたのか。


救急車は母親が入院していた病院に着いた。

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