二股
千香『つーん・・・むっ。』
気配を感じた。後ろを振り向くとヤツが立っていたから嫌な気持ちが倍になった。
葵『恋の相談なら乗るよ。』
千香『悩みなんてないし。』
嫌な気持ちになったらどうする?癪だけど、そこから立ち去る。
葵『最近、触れ合ってる?思わせぶりなLINEを送るより、直接会った時に言った方がいいよ。不満は生ものだから。』
千香『・・・最近は二人きりの時間があまりない。』
格好良く去ろうとした葵は驚いた。毎日会ってると葉から聞いていたからだ。
罪悪感を感じる葵。千香の部活中に二人きりの時間を作ってることへの罪悪感。本当のことは言えない。
葵『何か葉に伝えたいことある?部活中に伝えようか。』
千香『葉に近づかないで。それだけ。』
そうは言われても、葉を問いたださなくてはいけない。いつもの時間、いつもの場所で葉と葵は二人きり。失恋の傷を癒すために会っていた筈なのに、習慣になってしまっている。
葉『じゃあ、このまま乗り換えよう。』
葵『は、正気ですか。』
葉『だって、満更でもないんだろ?』
葵『千香がいなければ、まあ・・・いいけど、友達を傷つけることは出来ないって前も言ったよね。』
葉『千香がいなければいいのか。』
葵『だ、か、ら!!自然消滅を狙ってるようだけど、このまま千香と別れたら、千香がさらに病んで事件を起こしたり・・・』
そのとき事件が起きた。葉が葵にキスをした。自身の特性に気付き始めてる葉。それは培ってきたものなのか、天性のものなのか。だが、相手が悪かった。
葉『痛え!?』
葵『通報していいかな。』
冷たい視線と低い声が葉に突き刺さる。でもそんなこと関係ない。もう一度キスをした。
とにかく千香から離れたいのと、スケベ心と、交流している内に葵の方が良いなと思い始めたのとが混ざり合う。
もう止められない。ここで引いたら、あの日の二の舞にもなる。
葵『ん・・・普通、もう一回行く!?』
葉『俺、中学卒業するとき好きな奴がいたんだけど想いを伝えられなかったんだよ。勝算ないと思ってたから・・・。』
葵『だから千香を選んだって、今更何言ってんの。千香を本気で愛したし、本気で助けたでしょ。ズルいよ。そんな男と付き合いたくない・・・その娘にはもう会えないの?』
葉『え。』
葵『中学生時代に好きだった娘。』
葉『SNSのアカウントが消えてなければ連絡は取れるかもしれない。ただ綾乃が独りとは限らないし、月日も経ってる。』
葵『千香には悪いけど、私が襲われるよりはいい。』
葉『襲ってねえし。俺の家、母さんは病院、父さんは仕事とその介護で妹しかいないから、暇な時来いよ。』
そう言い残すと葉は千香との待ち合わせ場所へ行くといい、その場所へと向かった。
葵はもやもやしている。葉は千香を手離す代わりとして私を選んでいるのか、私への好意が千香を超えたから私を選んでいるのか。
後者だとしたら嬉しい反面、どうしようもないもどかしさで心が痛くなる。一緒にはなれない理由もあるし。
葉と千香は久しぶりのデート。なんだかんだで二人きりでは優しい葉。
千香『明日は日曜日だし、久しぶりに泊まりたい。』
ピロン
千香が泊まることになったから今日は無理
葵『あっそ。』
髪を解かしながら呟いた。




