誕生日 2
私の閉ざされた扉を人見が開けてくれた日から数日後のこと。私は再び、人見の家に来ていた。
私『2回目も子供、出来なかった・・・。』
人見『条件が重なっても出来ないときは出来ないんだよ。焦る必要はない。』
人見は煙草に火を点けた。
私『私の身体に問題があるのかな・・・。』
人見『あいつもライブ帰りで疲れてたんじゃないのか?(笑)』
私『・・・人見も疲れてるでしょ。』
人見『俺?全然(笑)』
私『まだ、私が怖がってるのかも・・・サムの愛を受け止められないというか・・・。』
人見『まさか、もう一度抱けとか言わないよな・・・。』
私『・・・言ったら抱いてくれる?』
プルルルル・・・プルルルル・・・
人見『電話、佐村じゃないのか?』
ピッ
私『はい・・・。』
佐村『今日は晩飯いらないから。ちょ、おいっ、やめろって(笑)じゃ、じゃあ、そういうことだから。』
ピッ
私『・・・私じゃ満足出来ないんだ。』
人見『佐村だろ?』
私『うん・・・おあいこさま・・・。』
人見『・・・。』
私は人見の煙草を灰皿に押し付け、その開いた口元に噛み付いた。
濡れた唇が音を立てる。自分でも何をしているのかわかっていた。いけないことをしている。
人見『佐村にバレたらどうするんだよ。』
私『バレないよ・・・鈍臭いから。』
人見も真面目になったけれど、根底には不良気質が残っている。更生した私の頼みを断り切れない。
私『私の体覚えてるでしょ・・・私も人見の体覚えてる・・・。』
人見『・・・。』
私『・・・痛い!!痛い!!痛い!!つまみすぎ!!』
人見『・・・。』
私『・・・痛い!!痛い!!痛い!!噛みすぎ!!吸いすぎ!!バカ!!』
人見『そんなにしたいなら、俺以外のバカを探せ。佐村もお前も友達なんだよ。その片方を失う行為なんてしたくない。
私『かっこいいこと言って・・・激しくいたぶったくせに。あー、痛い。』
人見『・・・煙草、無駄に一本、消費しちまった(笑)』
人見はまた煙草に咥えようとする・・・。私はその口を塞ぎ人見にのしかかった。
私『サムも私以外の人と寝てるんだよ!!昨日も帰って来なかったし、今日の電話も浮かれてた!!』
人見『夫婦の問題なんか知るかよ!!お前ら二人で話し合えや!!どうせ離婚すんだろ!!』
私『離婚・・・離婚は絶対にしない。離婚したら、また一人に戻って狂っちゃう・・・それに・・・離婚したとしても・・・人見と結婚することは出来ないんでしょ!!』
人見『お前の親に男として三行半を突きつけられたんだ。一人前の俺を見せる前に亡くなってしまったから・・・。』
私『いつまで、母さんのせいにするの!!男なら、そんな呪縛、物ともせずに、あの窮屈な檻から、私を助け出して欲しかった!!』
人見『被害妄想が過ぎる。また、何か吸い始めたか。ついに薬に手を出したか。』
私『うう・・・もう、どうにでもなればいい!!』
人見『・・・。』
な、何・・・この目・・・私は不快感を覚え、人見の上から降りた。
人見『レイプ終了?』
私『なんで、抵抗しなかったの。』
人見『抵抗したら、怪我させるかもしれないだろ。まあ、次、こんなことになったら抵抗するよ。落ち着いたか?』
私は軽々と人見に丸め込まれたんだ。もしも、人見が私を受け入れてたら、葉の本当の父は人見だったのかもしれない。
私『か、隠してなんかないよ。(寸前までいっただけだ。)』
佐村『えらく長い時間、記憶を辿ってたな。』
私『私、物忘れ酷いから。』
ガチャ
葉『・・・。』
私『あ、おかえり。今から誕生日パーティーするから。でも、その前にお父さんから話があるから。』
佐村『もう、昨日の事だから、いいんじゃないか・・・?』
私『つべこべ言わずに形だけでいいから。』
サムは渋々、葉に説教する事になった。さて、父の威厳的な物は持っているのか。私は夕食の準備をしながら見守ろう。
佐村『葉、お前、友達殴ったのか。』
葉『ああ。』
佐村『別に理由は聞かないけど、どうだ、殴って、なんか得はしたか?』
葉『・・・父さんの歌詞?』
佐村『知ってんのか(笑)あの歌詞を書いた男の息子がこれじゃ示しがつかないだろ?男は得があるとき以外は我慢しろ。そんな頻繁に得付きの喧嘩なんて起きないけどな(笑)』
葉『得付きの喧嘩って・・・?』
佐村『後ろで支度してるから、言いにくい。ちょっと耳貸せ。』
葉『・・・女を守るとき?』
佐村『この筋肉は泣かす為についてるんじゃないだろ?恥ずかしいこと言ってるから、母さんに告げ口すんなよ(笑)』
誕生日パーティーは鍋だ。私的にも楽。
私『よいしょ・・・恥ずかしいことって何(笑)苗も来なさい。薬味いるよね。』
タタタッ・・・薬味、薬味・・・。
佐村『な、守りたくなるだろ?』
葉『・・・。』
鍋が空になると、誕生日ケーキ。ロウソクは15本・・・大きくなったね。