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モザイク5〜MOSAIC PART 5  作者: AKI
究明編
46/61

夢か現実か

千香の騒動から数日が経った。被害届けは提出したものの続報はない。忘れ去られたのかもしれない。こうして時は一人の心を蝕んだまま過ぎて行く。


千香『・・・なんで葉は来ないんだろう。』


ピローン


今日ムリ(>_<)


千香『返事が遅くなった・・・ムリって・・・元気だよ・・・少し笑顔が強張るようになったけど元気だよ・・・病気じゃないもん。』


明日から学校解禁♪(´ε` )ヒュー


前日ミーティングしよーよ(`_´)ゞ


ピローン


葉『停学解けるの明日だっけ?』


葵『早いね。あーあ、なんちゃって彼女楽しかったなー。』


葉『あのさ・・・正直な話していい?』


葵『うん。』


葉『千香って中学の頃から知ってるから飽きてんだよね。』


葵『つまり?』


ピローン


マジで用事があるからムリ(人)


明日は登校しろよ


千香『登校解禁って言ってんじゃん。鈍感。』


私が入院している病院に私の知らない女の子を葉が連れてきた。


葵『初めまして高水葵たかみずあおいです。』


私『・・・あれ?』


葉『友達の葵。男友達連れてきたら、病院で何をしでかすかわからないから。』


それなら千香ちゃんでもいいはず。さては即席の理由だな。のこのこ短い家出から帰ってきたくせに、もう次の子に手を出すなんて、我が息子ながらトンデモナイ軟派野郎め。


私『私とお父さんが不在の間に悪さしてない?』


苗『正直に言うはずないじゃん。』


葉『何もしてねえよ。』


チラッ


葵『(笑)』


見たぞ見たぞ微笑み見たぞ。私の知らないところでくぅ〜。青春してる。羨ましい。


葉『体調は?』


私『大分マシになったよ。完治は難しいみたいだけど。』


私の病気は急性白血病。病名を聞いた時はびっくりしたけど、現在では治療すれば治る病だと聞いて安心した。


ただそれを伝えたら葉も安心したのか、苗と葵ちゃんを連れて早々に帰ってしまった。


サムも仕事で地方ロケに行ってるから暫くは病院に独りきり。不謹慎だけど損した気持ちになってる。


完治する前提で身構えてるけど、痩せ我慢かも知れないのは私自身が一番気づいてる。


先生やサムが嘘をついてるかも知れないし、その嘘を葉や苗に伝えてしまったかも知れない。


ピンポーン


千香はもう学校に行きましたよ。


葉『は?迎えに来いって言ったの千香なのに。ふざけんなよ。』


ピンポーン


お兄ちゃんはもう学校に行ったよ。


千香『え・・・迎えに来てって言ったら、面倒くさいって言った癖に・・・。』


松葉杖をつきながら頑張って家に来たのに葉はいないと告げられた。


キーンコーンカーンコーン


ガラガラガラ!!


千香『すいません、遅れました・・・。』


クラスの皆の視線が冷たく感じた。それは慣れない松葉杖を使って一生懸命に歩いて遅刻したからではなく、汚された身体の事を知っているからだと思う他ないほど千香は疑心暗鬼になっていた。


先生は腫れ物を触るように余所余所しく、男子は妙な期待を膨らませ、女子は軽蔑の眼差しで威嚇している。千香にはそう見えてしまう。皆が悪者に見えてしまう。裏返せば無地のカードなのに、ジョーカーと思わしきピエロに怯えて、返すことさえできない。


頼みの綱の葉は・・・机で寝てる。席が後ろの葵がシャーペンでツンツンしてる。そっか。もう。そうだよね。あっちからだったけど、こっちからもしたもんね。あーあ。もうやだなー。


昼休み、脚を骨折している千香は教室の窓から校庭を眺めていた。誰も話しかけてくれないから。


でも、目につくのは葉ばかり。あの夜、なんで素直にありがとうと言えなかったのだろう。葉の側には何故か葵がいる。友達と思ってたのに。


葉『なあ、見た?』


葵『うん。あの憔悴っぷりはヤバいよ。はやくなんとかしてあげないと。』


葉『喋りかけるなオーラも凄いだろ。』


葵『その壁を破ってあげるのが彼氏の務めだと思うよ。』


葉『何度も言うけど、もう関わりたくないんだよ。このままだとドラッグに手を出しそうじゃん。』


葵『大声では言えないけど千香って仮面を被ってるみたいなの。元気な女の子の仮面を。』


葉『・・・。』


葵『それが今は外れちゃってて・・・。』


葉『俺みたいにまだ笑われる時期に帰ってくれば良かったのにな。今の千香は近寄り難い。』


葉と葵が話してる。近い。悲しい。切ない。寂しい。千香はついに耐えられなくなって机に顔を埋めた。


晴樹『お前ら付き合ってんの?』


葉『相談してんだよ。』


葵『千香を元通りにする方法を・・・ってね。』


窪田『あのままでいーよ。騙しやすそうだし、帰りに誘おうかな。』


葉『おい。誰の前で言ってんだよ。』


窪田『別れてんだろ?』


葉『・・・別れてねえよ。』


葵『なら、声掛けてあげてよ。』


葉『あのとき、近づかないでって言われた事がショックでさ。』


葵『あのときの千香は・・・ね・・・違うじゃん。』


窪田『どっちなんだよ。結局のとこ実態はないんだろ?』


千香は夢の中を彷徨っている。実態のない人に救いを求めてる。


千香『お邪魔します。』


佳奈『あかーんっ!!』


ドッカーン!!ぎゃああああ


千香『ぐすん・・・痛くないけど・・・げほっ、げほっ。』


魔法の薬でも作ってるのかと思ったら、味噌汁を作ってた。


千香『だ、大丈夫ですか!?』


佳奈『大丈夫、大丈夫。日常茶飯事やから(笑)あ痛たた・・・。』


千香『火傷してるじゃないですか!?人見さんは?』


佳奈『知らん。どっか行ったもん・・・。』


佳奈は慣れた手つきで溢れた汁や具材を拭き取る。


千香『私も手伝います。』


佳奈『ええって。自分のことは自分でやらなあかんって言われてるから。そろそろ何でもかんでも負んぶに抱っこは卒業やって。』


15年目でやっと卒業。佳奈の傷は想像以上に深いものだったようだ。』


千香『それって、別れるための都合いい理由なんじゃないの?』


佳奈『あ、勘違いしてる?私、別れてないよ。今、料理作ってたやろ。人見は行き先告げずに帰りが遅くなったんよ。』


それって結局のところ浮気じゃ・・・。


佳奈『何となく行き先はわかってんやけど、突き詰めるのもどうかなー思うて。』


千香『どこにいるんですか?』


佳奈『街の外れの湖。あそこが一番よう見えるから。』


よく見える?言葉の意味は聞かずにその場所へと向かった千香。さすが夢だ。気づいたらついてた。


湖の畔には確かに人見がいた。唇を噛み締めているようにみえた。


人見『中途半端なことするから・・・。』


千香『人見さん?』


人見『ん、来てたのか。』


千香『何してるの?佳奈さんが味噌汁爆発させちゃって大変なんだよ。』


人見『お前こそなんでこんな所にいるんだ?』


え。どういうこと。湖を覗いてみると病室のような場所が映し出されていた。寝ているのは・・・葉のママ?


人見『お前、死んだのか。』


千香『はい?』


質問の意味がよくわからなかった。いや、こんな質問は想定の範囲外にあるのが通常であるはずの世界ではない夢の世界だから余計に意味がわからない。


人見『いつもは俺たちが会いにいくのに、今日はそっちから来たから疑問に思ったんだよ。どうした?』


あーびっくりした。物騒な質問しないでよ。割とリアルなんだから。


千香『そうそう、葉のことで・・・もうダメなのかな・・・そこから見てるなら詳しく話さなくてもわかるでしょ。』


人見『ごめん。最近はお前らのこと見てないんだ。』


湖を眺めながら人見はそう言った。千香も病室が映る湖を眺める。


しばらくすると人が入ってきた。その人は。


私『うう・・・ふらふらする・・・。』



千香『盗撮みたい。なにこれ・・・って、葉のママ?完全にヤバいやつじゃん。』


人見『盗撮じゃない(笑)色葉が病気になってから、また目が離せなくなった。』


千香『病気って何の?』


人見『癌だよ。』


とんとん


不意に肩を叩かれた。その主は葉だった。


葉『午後の始まるまで、あと5分。』


千香『あ・・・。』


しばらく見つめ合ってしまった。ちょっと気まずかったから。千香が目線を落とすと葉は自分の机に帰っていった。

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