誕生日
葉『元気?』
綾乃『家で練習すればいいのに。最高の先生がいるじゃん(笑)』
葉『嫌いなんだよ。千香、俺のは?』
千香『これも持って帰ればいいのに。はい。』
葉『ありがとう。バレたら最悪だろ?昔話を聞かされるだけだ。』
晴樹『そんなに嫌いなのか。』
葉『・・・練習、始めよう。』
家族サービスとは言っても、葉は不在だから、三人でショッピングモールに出かけた。
私『葉がね・・・。』
佐村『14歳なんてそんなもんだって。』
私『15歳よ!!』
苗『パパ、私の年齢覚えてる?』
佐村『ちょっと待て・・・4年生・・・10歳?』
苗『当ったり(笑)』
私『計算する意味がわかんない。』
佐村『そろそろブラとか着けるんじゃないか?』
苗『・・・キモ。』
私『ははは、どうなんだろ。見た感じだと、まだいらなそうだけど、見て見ようか。』
こんな感じで男の子と違って、女の子は本当に成長がはやい。
佐村『葉の誕生日プレゼントはいいのか。』
私『買うよ。でも、何が欲しいのかわからない。男の子って思春期、何が欲しいの?』
佐村『何が欲しいって言われても・・・俺の場合は既に音楽で食って行くと決めてたから・・・いや、15の誕生日は何も貰ってないぞ。』
私『ギター継がせる?』
サムは少し笑いながら首を傾けた。
佐村『今って有名になるのは簡単だけど、有名になってからが大変な時代だろ?それに、どんなに努力を重ねてプロになれたとしても、親の七光りって言われるだろうし。だから、目立つ職業はやらせたくないんだよな。』
ちょっと驚いた。ちゃんと葉の将来の考えは持ってるんだ。それなら、もっと積極的になってくれればいいのに。
葉『なんか不自然なんだよなー。』
綾乃『うーん・・・あ、あった。これじゃない?』
葉『コード進行の禁句・・・?』
綾乃『不自然に聴こえるコード進行があるんだって・・・難しいね。』
葉の誕生日プレゼント・・・どうしよう。
佐村『現金をやればいいじゃないか。その方がこっちも楽だし、葉も楽だろうし。』
私『去年までは欲しい物を言ってくれてたから、楽だったんだけど・・・。』
去年はスマホをねだられた。ついでに防犯用に苗のスマホも買ったから拗ねたのかな。
話し合った結果、無難に洋服を買ってあげることになった。喜んでくれるかな。
ガチャ・・・
私『ただいまー。葉、帰ってる?』
葉『あ、やべっ!?』
綾乃『ちょっと!!もう、帰って来たじゃない!!』
苗『久しぶり(笑)』
綾乃『ははは、久しぶり・・・。』
私『綾乃ちゃんだっけ?』
綾乃『す、スタジオ見学してました。』
ガチャ・・・
佐村『まだ、明るいのになあ・・・あれ?』
綾乃『どうも・・・。』
葉『まだ、俺たち用事があるから。』
ガチャ
私『あ、ちょっと待って・・・行っちゃった。』
佐村『あの娘、誰?』
苗『ふふふ。』
苗がサムに耳打ちしてる。私は葉に電話をかけた。
綾乃『素直に言えばいいのに・・・。』
葉『スタジオを見せてくださいってか?絶対に嫌だ。スタジオの中に父さんの私物が置いてある棚があるけど、どうせ、父さんがいたら見られない。』
綾乃『でも、その私物の中に作曲ノートなんて本当にあるのかな。』
葉『・・・見せて貰ったことがある。高校生の時に毎日、思いついたフレーズをノートに書き留めてたんだって。』
綾乃『やっぱり・・・葉はお父さんが好きなんだよ。』
葉『俺は父さんなんか・・・俺は綾乃が・・・。』
プルルルル・・・プルルルル・・・
出ない。せっかく、サムが3年振りに葉の誕生日、家に居るのに・・・。
佐村『なんだよ、あいつ。自分の誕生日、忘れてるんじゃないか。』
私『少し人見の遺伝子が混ざってそうだよね、あはは(笑)』
軽い冗談をかましたつもりがサムの怒りを買ったようだ。
佐村『今、なんて言った。』
私『え。』
佐村『あいつ、俺に似てないなと思ってたんだけど。』
私『鼻がサムにそっくりだし・・・歩き方もそっくりじゃない・・・。』
佐村『・・・何か、隠してないか。』
私『・・・。』
確かに思い当たる節はある・・・。