まさか
千香が学校に来なくなって一週間。スマホにメッセージを送っても返信なし。
俺、なにか悪いことしたか?
・・・既読。
一体、どうしたんだよ。
・・・既読。
記号だけでもいいから、返信してくれよ。
・・・既読。
五月病なら相談に乗るぞ。
・・・既読。
土曜日、お前ん家に行くから。
千香『・・・また、既読だけしちゃった・・・はあ・・・。』
ピンポーン
千香『来ちゃった・・・。』
葉『よっ。元気そうじゃん。』
千香『元気そうって・・・ベッドに潜り込んでるのに・・・鈍感・・・。』
葉『五月病だろ?カラオケで大声を出せば、嫌な事なんて吹き飛ぶ。カラオケ行こう。』
千香『私の悩みはカラオケでワイワイくらいでは吹き飛ばないもん・・・。』
葉『やっぱり悩みがあるのか。相談するなら俺しかいないだろ。返信しろよ。』
千香『・・・。』
千香は布団の中に潜り込んだ。葉が煩いと思ったからだ。
千香『葉さ・・・もしも、私がこの前ので妊娠してたらどうする?』
葉『は?』
千香『・・・あ、ごめん・・・聞き方を間違えた。私が妊娠してたらどうする?』
葉『どうするって、男は18歳を超えないと二人の面倒も見ること出来ないんだろ?』
千香『結婚が出来ないだけなんじゃないの・・・?』
葉『いやいや、どっちにしても18歳になった瞬間に結婚とか無理だから。収入とか考えたら無理だって。だから避妊薬飲んでくれてるんだろ?』
あれから、来ないの・・・
葉『ん?聞こえないから、隣に来いって(笑)』
まだ五月なのに・・・まだ高一同士なのに・・・怒られるだけじゃ済まないよね・・・。
葉『聞こえないって言ってるだろ。』
葉が布団をめくると、千香は涙を浮かべていた。
千香『騙してごめん・・・嘘ついてごめん・・・本当にごめん・・・。』
葉『!?』
千香の腕には無数の線が入っていた。
千香『夢の中にも出てきちゃうから耐えられなくなっちゃって・・・おえっ・・・。」
葉『耐えられないって何がだよ!!相談しろって言ったろ!!』
千香『・・・お腹。まだ膨れてはいないけど・・・今週来るはずだったのに来ないから・・・多分・・・二回目、そのままでしたときに・・・。』
葉『薬は?俺を騙したっていうこと?』
千香『騙すつもりはなかった。こんなに簡単に出来るとも思わなかった・・・。』
子供が出来なくて悩んでる人の話とか最近、多いから甘く見てた。
葉『本当に出来てんの?付き合い始めて二ヶ月と数週間で。病院は?』
病院には行っていない。理由を聞かれるだろうし、年齢詐称もリスクが大きいだろうし。
千香『この傷を見られたら面倒くさいことになるだろうし・・・。』
葉『っち・・・ああ、もう・・・くっそ、ムカつくな・・・俺、言ったよな。飲んでるとは言え最低限の対策はしようって。』
今まで聞いていた葉の声とは違う。低く重い声に怯えた千香は沈黙してしまった。葉も居心地が悪くなって出て行った。千香は針を玩具のように扱いながら、これからどうするか小一時間ほど考える。答えは見いだせない。そして、葉が帰ってきた。
あの傷を思い出したら、ほっておけなくなったからだ。
千香『葉・・・。』
葉『周りの奴らに例え話として尋ねてみたら、おろせば解決するって返事が大半だった。』
千香『他人事だもんね・・・。』
葉『綾乃以外は。』
千香『綾乃!?なんで、綾乃に連絡を!?消してって言ったじゃん!!綾乃も消してるはずだよ!!』
葉『なんで、女ってそうあるかな。消した所で頭に残ってるから意味ないって。返信はこんな感じ。』
もしかして、千香が・・・?
葉『綾乃も消してるはずなのに返信が来たということは綾乃も覚えてたんだよ。俺が送り主だとは一言も書いてないのに(笑)』
ピロン
千香『あ。』
葉なんでしょ?
うん。あっちで上手くやってる?
上手く・・・あんまり上手く出来てないかな。私は不器用だから。
千香『不器用なんて嘘ついてる。』




