ギター講習
私『・・・。』
佐村『・・・。』
葉『・・・。』
葉をリビングに呼び出した。大事な話と数点の疑問がある。
佐村『まず、なんで、お前があのカセットを持っていた。』
葉『たまたま、スタジオの中で見つけただけだよ。』
私『そんなことはわかってる。お父さんは何故カセットテープを盗んだのかを聞いてるの。』
葉『盗んだ?そんな大袈裟な。』
佐村『普通の家庭なら大袈裟だろうけど、あのスタジオにあるものは俺の商売道具だし、未発表の曲なんかも眠ってるんだよ。極端なことを言えば海賊盤を作って儲けることも出来る。犯罪だぞ。』
葉『話が飛躍し過ぎだって。海賊盤を作って儲けるなんてこと思いつきもしなかった。金の亡者みたいなこと言うなよ。』
佐村『・・・お前、なんて言った。』
私『ああ、もういい、もういい。次は綾乃ちゃんと千香ちゃんのこと。』
佐村『良くないだろ!!親に金の亡者って、どういう育て方してんだよ!!』
私『急にうるさい!!良くないけど、思春期だからしょうがないんだって!!』
佐村『俺は親に口答えしたことなんてないぞ!!どうなってんだよ!!』
私『子供を育ててんのは二人だって思い出したばっかりでしょ!!』
嘘をつくな口撃を避けるために、失踪中の詳細を告白したんだ。意外にもサムは理解してくれて、テープの内容について話した。その過程で子供を育ててるのは二人だという事と、その子供の葉が何故カセットテープを持っていたのかという疑問が湧いてきたのだ。
千香『あの・・・。』
千香ちゃんが葉の部屋から出てきた。声が大きすぎたかな・・・恥かしい。
千香『葉は確かにお父さんの未発表曲を探してました。でも、それは海賊盤を作って儲ける為なんかじゃなくて、自分の夢を叶える為に・・・。』
佐村『夢?』
葉の夢・・・私の記憶は小学生の頃に聞いたサッカー選手で止まってる。ワールドカップの影響だったっけ、サッカーなんて習ってなかったし。
葉『別に夢なんかじゃない。』
千香『だって練習してたじゃない。お小遣いを貯めてギターも買って。』
佐村『ギターって・・・お前、ギター弾けるのか?』
葉『弾けない。挫折した。』
私『挫折って・・・まだ中学生だからなんとかなるから、お父さんに教えてもらえば?というか、なんで隠れて練習してたの。ギターはどこ?』
千香『私の家にあります。』
ふーん・・・モテるためのギターっぽい。
佐村『ちょっと待ってろ。』
サムがスタジオに入っていった。ギターを持ってくるみたい。
佐村『ほら、弾いてみろ。』
葉『弾けないって、俺。』
佐村『弾けなくてもいい。じゃあ、音を鳴らせ。それくらいならできるだろ。』
葉は渋々音を鳴らした。でも、酷い音・・・。
佐村『もっと勢い良く鳴らせよ。そのギター高いんだぜ(笑)』
葉『これチューニングが合ってないんじゃ・・・?』
佐村『合ってないなら合わせてみろ。』
葉『・・・。』
言い訳しても無駄だ。ギターのチューニングは合ってる。葉は再び、ギターを鳴らし始めた。しばらく葉のふにゃふにゃソロを聞かされて耳が痛い。
佐村『基本を教えてやるよ。まず中途半端なストロークは・・・。』
サムが葉にギターを教えてる。これぞ、私が求めていた親子愛!!
葉『わかった。わかったから、もういいよ。』
佐村『本当にわかったか?』
げっ、葉が無理やり断ち切りやがった。4月からは高校生になる年頃だからしょうがないか・・・。
葉は千香ちゃんと一緒に自室へ・・・ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待った!!
私『あ、あの・・・お二人さん・・・昨日、お泊まりしたんだよね。千香ちゃんのご両親は知ってるの?』
千香『メールしてるから大丈夫です。』
千香ちゃんと葉は部屋へと入ってしまった。大事な話もし忘れたし・・・。
佐村『親父さんとは、もう連絡つかないのか。』
私『つかない。それよりも別居の件。』
佐村『どっちが言い出したっけ。』
私『最終的な結論として離婚はせずに別居しようってことになったんじゃない。』
佐村『健康なくせして、精神薄弱のフリされても苛つくだけだしな。』
私『奇跡的に健康になったことで、どんどん腑抜けになってくのも苛つくよね。』
佐村『指輪返せよ。』
私『キャバクラで見せびらかすの?』
佐村『俺はお前みたいな変態じゃない。』
私『じゃあ返さない。離婚じゃなくて別居だし。』
佐村『事実離婚だろ。』
私『なら、生活費と養育費の他に慰謝料も貰おうかな。』
佐村『俺は離婚って言ったんだぞ。』
私『苗が独り立ちするまでは離婚したくないから、別居という形に落ち着いたんでしょ。』
佐村『葉はなんて言ってた?』
私『聞きそびれちゃった。』
佐村『そうか。苗は?』
私『苗・・・あれ・・・そういえば苗は・・・。』




