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変な声が聞こえてきた寝室へ向かうとサムが腰を抜かしていた。
私『千香ちゃん?』
千香『あはは・・・昨日からお邪魔してました(笑)』
そういえば、昨日はサムの誤解をどうやって解くか考えてたから、疲れてリビングで寝たんだ。という事は、葉と千香ちゃんは二人きりで寝室に!?
私『あー・・・頭が痛いよー・・・。』
葉『母さん。』
葉は古いカセットテープを私に見せた。
佐村『なんだそれ。』
私『なんだろう・・・。』
千香『15年前のことを覚えてないんですか?』
15年前?その頃は既にカセットテープじゃなくてMDだったし・・・あ、もしかして!?
サムが参加したカウントダウンライブを録音したテープ?
私『ライブの録音?』
佐村『15年前はお前が妊娠していたから、カウントダウンには参加していない。』
葉『母さんが妊娠する前。多分、結婚してすぐの音声が入ってた。』
結婚してすぐ・・・もしかして・・・。
結婚パーティーの翌日にカセットテープに亡くなった母さんと行方不明の父さんへのメッセージ、これから生まれてくるであろう子供たちへのメッセージを吹き込んだんだ。
佐村『悲観的になるなよ。これから新しい人生が始まるんだ。』
私『でも、過去の過ちは確実に私の体を蝕んでしまうんだよ。長生きなんて出来ない。だから・・・未来の子供たちに・・・メッセージを残しておかないと・・・。』
佐村『まあ・・・俺も覚悟はしてる。覚悟はしてるとは言っても、健康になることが第一なんだけどな。』
私『・・・撮ろう。』
MDじゃなくてカセットテープに録音したのは、アナログの声を聞いて欲しかったとか、そんな理由だったと思う。
私はマイクに向かって喋りかけたけれど、声が震えてしまう。
佐村『ダメだ・・・やっぱり、キツいだろ・・。』
私『大丈夫・・・伝えなくちゃならないから・・・私の罪は・・・罪は・・・。』
佐村『親不孝をしてしまったこと。』
私『サム・・・。』
佐村『そうだろ?』
私『そ、そう。私は親不孝という罪を犯してしまって、あなたたちにお婆ちゃんに抱き締められるという特権を奪ってしまいました。お爺ちゃんは・・・。』
佐村『お爺ちゃんも同じだ。』
私『・・・うん・・・うう・・・おえっ・・・。』
カチッ
佐村『もういい。色葉は頑張った。失った人生はこれから一緒に取り戻せばいいんだよ。俺だって7年間くらい無駄にしてるからな(笑)』
私『サムの7年間は現在の為になってるから無駄になんかしてないよ・・・それに比べて、私の10年間は・・・うう・・・。』
思いつきと結婚で浮かれていた時期に作ったものだから、しょうもないテープだけど聴いてみた。すると苗が・・・。
苗『お爺ちゃんって、島田さん?』
佐村『島田・・・フリーライターの島田がなんとかって言ってたよな。』
私『・・・。』
佐村『そいつとか!!苗がお爺ちゃんなんて認識なら、俺より歳上か。何考えてんだよ!!』
私『島田さんは、私のお父さんよ!!だから、苗にとってはお爺ちゃんなの!!』
佐村『お父さんって、どういう意味でだよ!!パパか!!都合の良いパパか!!』
私『はあ!?パパはパパだけど、そういう意味でのパパじゃなくて、血筋の繋がってる私のお父さんよ!!わかった!?私のお父さんなの!!』
佐村『色葉の親父さん・・・?』
あ・・・反論してしまった・・・嘘を吐くな口撃が始まる・・・。
夫婦喧嘩中に葉と千香は自室に移動していた。
千香『怖い、怖い(笑)いつも、あんな感じ?』
葉『今回のはマジでヤバイって。離婚するんじゃないかな。』
千香『離婚したら、どっちについて行くの?』
葉『母さんかな。母さんは一人じゃ生きていけないから、俺が稼がないと。』
千香『中卒はヤダよ。』
葉『高校は決まってるじゃん。最低でも高校中退だって・・・あ。』
千香『どうしたの?』
私も行くよ。そのまま、あっちに住もうと思ってるんだけどいつ行くの?
葉『綾乃からメール来た。』
千香『来たんだ・・・。』
そっちは、いつ出発する予定だったんだ?
明後日には出発しようと思ってた。みんなの都合が悪いかな?
千香『何、この上から目線。』
明後日に合わせるよ。都合のつかない奴らは置いてけばいいんだよ。
なんか、私の送別会みたいだね。
千香『何様のつもりなんだろうね。』
葉『さっきからなんだよ。』
千香『複雑。ただそれだけ。勝ったのに・・・ぶつぶつ・・・ぶつぶつ・・・。』
コンコン
私は葉の部屋のドアをノックした。二人きりだから、何をしているかわからない。
私『葉、入ってもいい?』
葉『何の用。』
佐村『話があるから来い。』




