イカと卒業式
風呂上がり、いつものように先に眠りにつく準備をしているサムの横に潜り込んだ。
私『おやすみ。』
佐村『なんで苗を巻き込んだ。』
私『巻き込んだって、何に。』
佐村『口を塞がれたみたいなこと言ってたぞ。』
私『もし、それが本当だとして、苗を連れて帰ってくる?苗がサムに告げ口出来るような状況を作る?苦しみを知っている私が苗に同じ苦しみを味合わせるとでも思ってるの?』
佐村『・・・お前が何か隠してるから、こっちも疑うんだろ。』
私『やましい事はないって電話したでしょ。』
佐村『俺がバンドを組んでた頃のどうしようもない女だったお前を知ってるから言ってるんだぞ。』
私『お前、お前って、さっきから何様のつもり?』
佐村『は?そっちこそ何様のつもりだよ。反論するなら、ちゃんと俺の目を見ながら反論しろよ。』
それをしたら喧嘩になるでしょうが。
私『とにかく何でもないから。』
佐村『苗が怯えてたじゃないか。』
私『多感な年頃なの。』
佐村『お前のせいでワイドショーが賑わってんだぞ。どうすんだよ。』
私『どうもしないでしょ。大体、葉の卒業式を蹴ってイカを食べに行くってどういう神経してんの。』
佐村『連絡もなしに10日近く家を空けてた奴が言えることか?』
私『奴?へー、私は”お前”を超えて”奴”になったの。昔は色葉って優しい言い方をしてたくせに。おまえって言い方、本当は嫌だけど。』
佐村『昔と変わったことと言えば、冷たくなったよな。風呂以外で裸も見てないし、肌にも触れていない。』
私『ミュージシャンという肩書きがあれば、外で自由にやれるじゃない。というか、やってるでしょ。こっちは開き直ってるから、そんな気分になれないの。』
佐村『お前さ、俺が尻に敷かれてるフリしてんのわかってんのか。』
私『わかんない。そういうとこだよ、ネットで嫌われてるの。煩い。はやく寝てよ。』
ウザい。そう言うと、サムは私に背中を向けた。だから、私もサムに背を向けて眠った。
こんなときは決まって夢の中に人見がキャスティングされるんだ。シチュエーションは夕日に照らされた校庭が見えるベンチで私がくつろいでいると、人見がやってきて悩みを聞いてくれるというもの。
キーンコーンカーンコーン
人見『元気?』
私『このシチュエーションで察して。』
人見『ごめん、ごめん(笑)最近は忙しくて暇がないんだよ。何があった?』
私『実は・・・。』
私は人見に事を話した。夢だから一瞬だ。
人見『わざわざ隠す必要はあったか?』
私『結果的にはギスギスしちゃってるけど、お父さんと会えたなんて言ったら、もっとギスギスするよ。それなら連絡するべきだっただろって。』
人見『わかってるじゃないか。連絡しなかったのが一番の原因だろ。謝ったか?』
私『ごめんとは言ったよ。ただ、連絡を取りたくても取れなかったことをわかって欲しいな。でも、その理由を聞かれちゃうよね。ギスギスではぐらかそうと思ってる。』
チリリリリリリリ!!カチッ
私『ぬうううう・・・はあ・・・だる・・・サム、起きて。』
佐村『わかって・・・ZZZ...』
起きないなら起きないでイカの踊り食いに間に合わなければいい。サムなんかより、葉だ。
葉の部屋の扉をノックし、扉を開けると既に起きていた。流石。
私『昨日、お風呂入ってないから、シャワー浴びておいで。』
葉『・・・うん。』
なんか元気がない。卒業式だから、しんみりしてるのかな。
30分後、サムが降りてきた。
佐村『起こせよ!!』
私『起こしたし!!』
佐村『俺の目が完全に覚めるまで揺するなり、促すなりしろよ!!』
私『仕事じゃなくて遊びだから、そこまで頭が回らなかった。』
佐村『一夜明けて、俺が昨日のことを忘れてると思ってるんじゃないだろうな。』
私『葉の卒業式だというのに、イカを食べに行く人の言葉に重みがあると思ってんの?』
ガチャ・・・
苗『・・・。』
春休み中の苗が起きてきた。
佐村『苗はお前に任せらない。』
私『いいよ、連れてって。中洲で夜遊び出来なくなるだろうし。』
佐村『中谷や若い子もいるから大丈夫だ。』
私『夜遊びするんだ。』
佐村『夜遊びを提供していた女に言われたくねえよ。』
夜遊びの提供なんてしていない。夜遊びを終えた人を捕まえてただけだ。あれ・・・。
私『昔のことは不問のはずだったじゃない。それにお前って呼ぶのも・・・。』
佐村『苗、行くぞ。眠たいか(笑)つーか、パジャマだな。服は・・・。』
無視されたから教えるもんか。適当にタンスを開けてたら見つかるよ。葉は・・・あれ、もう行ったんだ。




