いい稼ぎ方
1987年、日本中が好景気で浮かれていた。そんな時代に私は高校を卒業して、都会に向かったんだ。最初は低家賃のアパートにそれぞれ住むことになった。佐村と麻里の二人、鈴木さんは一人。私はお金が貯まるまで人見と同居。
ガチャ・・・
私『うわ・・・実家と同等・・・。』
人見『来年にはもっといいところにお互い住めるだろう。俺、何のバイトやろうかな。』
私『人見は適応能力が高いからなんでも出来るよ。問題は私。わざわざ都会に出てきたのにレジ打ちしてもね。みんなと違って夢もないし。』
ペラ・・・ペラ・・・
人見『夢なんて俺も持ってないぞ(笑)就職活動しなくてラッキーと思ったからメンバーに加わってるだけだし。』
ペラ・・・ペラ・・・
私『それ佐村が聞いたら怒るよ(笑)』
ペラ・・・ペラ・・・
人見『殴られるよ(笑)』
ペラ・・・ペラ・・・
私『いいバイトないね。』
ペラ・・・ペラ・・・
人見『俺は日雇いで十分だけど、そっちはバイトで保つか?』
私『多分、男と女で賃金違うよね。体力の問題もあるし、バイトだけじゃ難しいかな。』
人見『引越しのバイトも厳しいもんな。あれ、美味しいぞ。簡単に儲かる(笑)』
私『そういえば麻里はどうするの?』
人見『佐村と麻里は曲作りと宣伝、広報。俺と鈴木さんが資金集め。・・・作詞家になれば?』
私『佐村の元でタダ働きでしょ。私は私で街に出て働き場所を探すよ。』
後日、その言葉通り街に出てみた。でも、恥ずかしい・・・バイトよりも服を探さなきゃ。髪も化粧も田舎娘・・・。
ガチャ
人見『遅かったな・・・!?』
私『似合う?』
人見『似合わない・・・かな(笑)』
私『えー。』
人見『バイト探してくるんじゃなかったのか?』
私『街を歩いてると自分の出で立ちが恥ずかしくなっちゃって。おかけで財布はすっからかん。』
人見『じゃあ、一万やるよ。』
私『サンキュー。生きるって楽勝だね。』
人見『行動すれば金が手に入る最高の時代だ。明日は何して稼ごうか。』
私『ディスコの警備員やってよ。私もディスコの経験してみたいし。』
人見『そんなタイプだったか?』
私『髪も整えたし、服も買ったし、メイクも練習しなくちゃならないから、勉強だよ。』
コンコン・・・ガチャ
佐村『明日、スタジオ借りて練習しよう。腕なまってるだろ。貯まった金。』
佐村は当然のように金を徴収しに来た。人見も当然のように金を渡した。そして私の姿を見て鼻で笑った。
佐村『馬鹿じゃねえの。なんだよ、そのケバい格好。ディスコか?ディスコか(笑)』
と、私を馬鹿にしながら出て行った。
人見『まあ、気にすんな。流行ってんだから、しょうがない。煙草吸う?』
私『・・・吸う。』
あの頃は私も普通に煙草を吸ってた。母さんの望むような大人になりたくなかったから。父さんがいたならそんなこと思わなかったと思う。
キラキラしたミラーボールが回ってる。ごきげんなナンバーがステップを踏ませる。でも、そんな世界に興味はない。人見には勉強したいって嘘をついたけど、本当の目的はアレを試してみたかったから。映画のようなワン・ナイト・ラブ、あわよくばマネー大作戦。
私『ここ、開いてる?』
男は頷いた。
立川『君は踊らないの?』
私『一人で飲んでるあなたが寂しそうだったから。私みたいなのを待ってたんでしょ?』
立川『まあね。』
最初はディスコで踊らずにお酒を飲んでる男をターゲットにした。そういう男の方が呑み込みが早いだろうと思ったからだ。
立川『田舎から出てきたんだ。』
私『刺激が欲しくて都会に来ちゃったの。』
立川『あーそういうこと。いくら?』
私『途中で囁いてあげる・・・。』
ガチャ
麻里『だからこの言葉の意味は!!えーっと!!うーんと!!』
佐村『キラキラやワクワクのどこに深い意味があるんだよ!!主人公は至る所で踊り過ぎだろ!!』
朝帰りすると佐村と麻里が揉めていた。鈴木さんもいる。
私『・・・。』
鈴木『気にするな。いつもの喧嘩だ。』
私『・・・うん。』
人見『白瀬、遅かったな(笑)何してた?』
私『踊ってた。曲が完成する度に、この部屋で喧嘩すんの?私、一人暮らしする。』
人見『生活費は?』
私『バッチリ。いい稼ぎ方・・・じゃなくて、いいバイト先を見つけたから、引越し手伝って。』
一人になった私は”いい稼ぎ方”を駆使しながら生きることになった。




