謝罪
2014年、二人の子供に恵まれた私は専業主婦として日々を過ごしている。10歳の苗は私に似た女の子。男の子よりも成長が早いと言うのは本当で、お婆ちゃん・・・いや、母さんも私と美知を育てるのに苦労したんだなあ、とつくづく思った。明日、15歳の葉はと言うと・・・。
私『申し訳ありませんでした・・・。』
全く、有名人のお子さんはどうして出来損ないが多いのかしら。
私『・・・。』
葉が学校で喧嘩をして、友達の顔を殴ったのだ。その友達とは仲直りしてるみたいだけど、そのお母さんにしてみたら、息子が顔に痣を作って帰って来たものだから・・・昔は子供の喧嘩にいちいち親が付き添う事なんてなかったのに・・・。
私『葉、もう一度聞くけれど、なんで手を出したの・・・?』
葉『何回も言ってるだろ。父さんのせいだって。ロックは、ロックで、ロックだ・・・今時、流行らないんだよ!!で、お前の親父は時代遅れの馬鹿と言われて殴らずにいられるかよ!!』
私『あのね、手が出ちゃったら、こっちがどんなに正しくても負けなの。たとえ、お父さんが侮辱されても聞き流さなくちゃ・・・歩きスマホやめなさい。』
葉『これ、見てみろよ。』
私『・・・え?』
葉はネット掲示板のサムのスレッドを私に見せた。
私『氏ね・・・ウザい・・・チャンネル変える・・・ダセェ曲・・・偉そう・・・。』
葉『腹立つだろ。何様のつもりだよって感じ。間に受けるのも馬鹿馬鹿しいけど、ネットを見ていたら否応なしに耳に入ってくるんだよ。』
私『でも、それとこれと今日の事は関係ないでしょ?』
葉『俺も爆発寸前だったって事だよ。』
私『・・・言い訳しないで。とりあえず、今日の件はお父さんに叱ってもらうから。』
葉『叱ってもらうって・・・俺、もう15だぞ。』
私『まだ15でしょ。お父さんに生意気な口聞かないでよ・・・あと処理が面倒なんだから・・・。』
葉『それなら、告げ口すんなよ・・・。』
小学生のときは可愛かったのに、中学生にもなると生意気になってくる。武道でもやらせておけばよかった。時代が時代ならヤンキーになっていたかもしれない。サムは今、何してるんだろ・・・。
ルリ『新曲、聞きましたよ(笑)かっこいいですねー。』
佐村『だろ?今の若い奴らに足りないモノを、俺は持ってるから(ドヤ)今の奴らに足りないモノって何か解る?』
ユキ『えーっと・・・わ、わかんないかなーっ・・・ははは(笑)(うっぜえ・・・。)』
佐村『魂だよ、魂だよ。ロックにはそれが必要なのに今の若い奴らときたら・・・。』
プルルルル・・・
ユキ『電話鳴ってますよ。』
佐村『静かにな。』
ピッ
佐村『なんだ。』
私『今、なにしてる?』
佐村『今・・・う、打ち合わせしてる。』
私『なんの?』
佐村『らい・・・ライブの。』
私『仲谷さんに代わって。』
佐村『な、仲谷は・・・今トイレで・・・その・・・いや、仲谷は打ち合わせに参加してなかった・・・は、ははは・・・。』
堀『ふぅ・・・スッキリした。変な食い物入ってないだろうな(笑)』
ユキ『入ってないですよ(笑)お腹弱いんですね。』
佐村『堀!!ちょーど良かった!!電話、代わってくれ!!』
堀『またかよ(笑)』
私『ちょっと!!サム!!サム!!』
堀『あ、代わりました。堀です(笑)』
私『あ、堀さん。・・・本当に打ち合わせですか・・・。』
堀『は、はい、打ち合わせですよ。』
私『ふーん・・・サムに代われます?』
堀『佐村・・・。』
佐村『な、打ち合わせだろ?』
私『うーん、しょうがないか。葉が学校で喧嘩しちゃって、友達を殴ってるのよ。その友達とお母様には、葉と私が謝罪したから良いんだけど、サムに葉を叱って欲しくて・・・そろそろ、私の手に負えなくなってきたから・・・。』
ピッ
佐村『面倒くせえな・・・。』
ユキ『どうしたんですか?』
佐村『息子が学校で喧嘩したから叱ってくれだってよ・・・そんくらい、あるだろ・・・思春期だぜ・・・?』
ユキ『でも、私、学校で人が喧嘩してるの見たことないなー。』
堀『マジか。やっぱり、時代は変わったんだな・・・。』
佐村『俺、今日はもう帰ろうかな。』
ユキ『また、来てくださいね♡(帰れ、帰れ、さっさと金を落として帰れ。)』
打ち合わせなんてウソ、私にバレないていないとでも思ってるのかな。もう、夫婦生活15年越えてんだよ。毎回、おんなじパターンだし。声はどもってるし。堀さんに嘘をつかせて心を痛めないのかねえ。お陰で仲谷さんが出たときは本当に打ち合わせだって分かるようになった。帰ってくるの遅いなあ。
苗『ママー、パパがネットニュースに出てる。』
私『パパが・・・?』
苗『ミュージシャンの佐村義一さんが、飲酒運転で・・・。』
私『(ピキッ・・・。)』