お勘定
私『そうですね・・・あと中学時代は・・・。』
中学時代は友達の恋を助けたことや、公子と映画館に通い始めたことの他に、麻里の噂も聞いたんだ。中三のときだっけ、不良の岩隈さんが包帯だらけになって登校して来たんだ。
佐知子『岩隈さんが包帯だらけ・・・。』
私『あれ、相手男なんじゃないの・・・?公子、探り入れてみてよ。岩隈さんと話せるんでしょ。』
公子『でも、話しかけないでオーラ、ムンムンだよ。』
私『そんなこと言わずにさ。気になるよね?』
佐知子『うん。お願い公子。』
公子は仕方なく岩隈さんに話しかけた。私たちはそれに聞き耳を立てる。やってることはおばちゃんだ。
公子『岩隈さん、その包帯どうしたの?』
岩隈『あ・・・柳田・・・高校でスケバンやる自信ないよ・・・私・・・。』
私『すっごく、落ち込んでるみたいだね。』
佐知子『彼氏に打たれたのかな。』
公子『岩隈さんらしくないよ。』
岩隈『藤浪麻里って娘にシメられて・・・もう、思い出したくない。』
公子『少しだけ話してよ。話した方がスッキリすることもあるよ。』
岩隈『・・・土曜日に高二の彼氏のグループがやり合うって話を聞いて・・・。』
ブロロロロ・・・ブロロロロ・・・
岩隈『あっちにも、中学の女がいたら私らが相手するよ。』
真田『中三の藤浪麻里って、有名なのがいるらしいぞ。』
岩隈『藤浪麻里?』
藤浪麻里という名前には聞き覚えがあった。病院送りにされた仲間が話していたからね。
坂上『おらっ!!』
岩隈『うわっ・・・タイマン張ってたら埒あかない・・・一斉にかからないと。』
真田『もう三人潰れたもんな。』
麻里『つまんない・・・ヒロー、わざと負けてあげないと盛り上がらない。プロレス見せてよ。』
私はカチンときた。幸い一対一のタイマン勝負。藤浪麻里も小細工は出来ない。仲間の話も誇張されてるんだと思ったのが間違いだった。藤浪に挑んだ私が馬鹿だった。
麻里『私とやんの?』
岩隈『仲間の仇もあんだよ。その整った顔をぐちゃぐちゃにしてあげるよ。』
麻里『ヒロ、いい?こいつが意味わかんないこと、ほざいてるけど。』
坂上『いいんじゃね?あっちからお呼びがかかってんなら、正当防衛だし。』
麻里『病院送りの一歩手前まで行こうかな。こっちは承諾得たけど、そっちは?』
岩隈『いちいち承諾貰わないとタイマン張れないんだ。』
麻里『あ?』
岩隈『ポコチンにぶら下がって・・・ぐほっ!!』
私はボコボコにされたよ。それをあいつらが笑ってみてんの。こっちの男らはヤベェ奴らに喧嘩を売っちまったってトンズラしちゃった。だから、後輩の京ちゃんやミーコの肩を借りて帰ってきた。もう、真田達とはつるみたくない。
佐知子『すごい話だね。』
私『藤浪麻里・・・要チェックしとかなきゃ。高校で一緒になったら最悪だよ・・・と、あの頃は言ってましたが、今では麻里は良い友達の一人です。』
島田『なるほど。高校時代は・・・。』
私『途中からノートにメモしてないですよね。』
島田『・・・。』
私『あなた、本当にフリーライターさん?私の生い立ちが知りたいだけなんじゃないですか。』
島田『高校時代のことを・・・。』
私『答えてください。私も十五年分の生い立ちを話しました。あなたの十五年分のお話を聞かせてください・・・お父さん。』
島田『・・・。』
私『・・・私のお父さんなんでしょ!?違うの!?違うとしたら、あなたは誰!?本の取材にしてはあまりにも不自然過ぎる・・・まるで、単身赴任から帰ってきたお父さんが娘に赴任中の変化を訪ねるような・・・。』
島田『気のせいです。高校時代のお話をお願いします。』
チュー
佐村『いえ〜い(笑)』
ルリ『も〜♡』
堀『棒、返せよ。次々。』
ユキ『佐村さん、奥さん行方不明なんでしょ。いいの?遊んじゃってて。』
佐村『悲観的になってもしょうがないだろ(笑)届けは出してるんだ。俺たちに出来ることはもうない。それより、お姉ちゃん復帰させろよ〜(笑)』
王様だ〜れだっ!!
ユキ『あ・・・私だ。』
堀『私のパイオツに4番がキッスって言って(笑)』
佐村『5番も言って、言って(笑)』
ユキ『・・・4番と5番は色葉さんが帰ってくるまで、この店出入り禁止。』
佐村『にゃ?』
堀『ははは、また、冗談を(笑)』
ユキ『これを断ったら一生出入り禁止。』
血の気、さわー・・・
佐村『ちょ、ちょっと待てよ女王様。あいつ、家出してるだけかもしれないんだぞ?』
ユキ『ここはキャバクラです。お客様の家庭を崩壊させる場所じゃありませんよ。つまり、奥さんが家出してる人が遊びにくる場所ではないんです。・・・佐村さんが良いお客様だから言ってるんですよ。』
堀『ユキちゃん・・・俺、家庭持ってないけど。』
ユキ『じゃあ、堀さんは今後出入り禁止ね。』
堀『ああ!!ちょっと待った!!』
佐村『ルリちゃん。』
ルリ『はい?』
佐村『今度は口にキスしたいにゃ〜(笑)・・・帰るぞ、堀。』
ルリ『・・・(キモ)。』
ユキ『・・・(キモ)。』
佐村は店から出て行った。
堀『あ・・・ユキちゃん、ルリちゃん、バイバイ。絶対に戻ってくるからね。』
ユキ『待って、堀さん。』
堀『な、なに?まさか・・・俺と・・・。』
ユキ『お勘定。』