三角関係
葉『くそっ!!』
葉はカセットテープを投げ捨てて、ベッドに顔を埋めた。
葉『くぅ〜っ・・・あの日に告白しておけば良かった・・・ん?』
スマホに着信。
葉『あ、綾乃?』
綾乃『葉、ヒドイよ。』
葉『千香だろ・・・あいつになんて言われたんだ・・・。』
綾乃『葉がヒドイんだよ。』
葉『・・・俺が?』
綾乃『千香を襲ったことあるんでしょ。』
葉『・・・は?』
綾乃『千香、抵抗出来なかったって・・・早く葉から離れないと危ないよって忠告してくれたんだ。泣きながら。』
葉『・・・・・・まてまてまてまてまて!!お前、それ信じてんの!?』
綾乃『信じたくないけど、泣いてたもん・・・同じ高校に進学するのが怖いって。』
葉『ちょっと来い!!説明してやるから!!』
綾乃『・・・。』
ブチッ!!
・・・葉は無言で千香に電話をかけた。
葉『おいコラ!!お前、綾乃になんてこと吹き込んでんだよ!!』
千香『うわっ、ヤンキー口調(笑)』
葉『笑ってんじゃねーよ!!どうしてくれんだよ、俺の中学最初にして最後の恋物語があああ!!』
千香『草食過ぎたのが敗因でしょ(笑)卒業式後、桜の樹の下でとか考えてた?ウケる〜(笑)』
葉『ウケるって、お前のせいで中途半端な状態でバンドが自然消滅だぞ。』
千香『今どきバンドなんて流行んないじゃん。コードの勉強もしてないでしょ。』
葉『母さんと苗が出て行ったせいで、気持ちが乗らないんだよ。』
千香『気持ちが乗らないね・・・失踪初日、綾乃を連れ込んだよね。』
葉『連れ込んでねえよ!!迎えに来てって言われたから行っただけだ!!やりとり見てただろ!!』
千香『やりとり見てたよ。というか、ここまでチラつかせても気づかない鈍感なんだ・・・。』
葉『また、それかよ。俺は鈍感じゃ・・・。』
千香『二年生の林間学校で同じグループになったときから・・・好きだった。』
葉『・・・なんて言った?』
千香『二年生の時!!林間教室で!!一緒になったときから好きだった!!』
葉『マジで・・・?お、お前、散々俺のことを鈍感だってイジッてたはずじゃ・・・。』
千香『少しでも近づきたくてイジッてただけ。だから、綾乃まで葉を鈍感だってイジり始めたときくらいから、ヤバいと思っちゃって・・・。』
葉『嘘をついて、俺から綾乃を遠ざけようしたのか・・・。』
葉は怒るにも怒れない。卒業を前にして、まさかの三角関係発覚。清純寄りの綾乃が好きな葉と、ドジだけどやるときはやる葉が好きな千香と、葉を幼馴染みの男友達と思っている綾乃。
千香『半分は・・・本当・・・。』
葉『半分は!?また嘘を・・・。』
千香『・・・。』
葉『嘘じゃないもんってか・・・俺ん家、来い。詳しく聞きたい。』
千香『今の葉、鈍感じゃないよ。』
数分後、千香がやってきた。妙に嬉しそうな顔をしている。
ガチャ
葉『化粧してんの・・・?』
千香『一応告白したから、葉は彼氏ってことでしょ。』
葉『だから、化粧して来たって・・・口紅、大きくはみ出してるしよ・・・鏡見てみろよ。』
千香『えっ・・・うわっ、うわっ、本当だ・・・どうしよ。』
葉『別にどうにもならないだろ(笑)口紅落としてこい。で、あの話は・・・?』
千香『あれ、嘘。びっくりしたっしょ?』
葉『・・・は?』
千香『卒業式が近いから、早く懐に飛び込まないと、高校でライバルが増えたら最悪だし。表立ってモテるタイプじゃないから大丈夫かな。よーく、観察すると、所々に優しさが滲み出てるんだよね。聞いてる?』
葉『俺は卒業式の後、綾乃に告白する。』
千香『懲りないね。もう絶望的じゃん。LINEも消されると思うよ。』
葉『簡単に嘘をつく女より、綾乃の方が魅力的なんだよ・・・あれ?』
千香『うう・・・うう・・・そんな・・・そんな言い方・・・うわーん!!』
葉『お、おい泣くなよ!?』
ピンポーン
葉『げっ・・・。』
ガチャ
綾乃『よくよく考えたら葉がそんなこと・・・。』
千香『うわーん!!』
葉『ち、違うんだよ、綾乃、よく聞けよ・・・。』
バチン!!
綾乃『変わったね・・・葉・・・。』
葉『だから、よく聞けって!!』
綾乃『千香、大丈夫・・・何された・・・?』
千香『うう・・・うう・・・。』
綾乃『落ち着いて話して。ほら、こっちで。』
綾乃は落ち着かせるために千香と寝室へ。
綾乃『入んないでよ。』
葉『はあ・・・。』
数分後・・・。
ガチャ
綾乃『・・・葉。』
葉『・・・。』
絶対にヤベェよ・・・完全に冤罪じゃねぇか・・・相当に不利だよ・・・。
綾乃『高校生活、千香と楽しんでね(笑)』
ガチャ
千香『うわーん、うわーん、きゃはははは(笑)』
葉『なに、ガッツポーズしてんだよ!!綾乃、綾乃ーっ!!』
綾乃はウインクしながら親指を上にして、家から出て行った。
葉『そんな・・・。』
千香『今日からカップルだね。初体験、初体験(笑)』