取材開始
葉は千香に直接電話をかけた。
千香『はい、なに。』
葉『なんなんだよ、因縁つけやがって。』
千香『鈍感。』
葉『はあ?』
千香『綾乃と二人きりは楽しかった?』
葉『ああ。』
千香『・・・』
葉『???』
千香『幼馴染みって得だね。』
ブチッ
私『苗の安否が約束されるのならば、取材に協力します。』
苗『ぁぁ・・・ぁぅぇぇ。』
ママ・・・助けて・・・?
私『お願いします・・・私、なんでもしますから・・・どうか、苗だけは・・・。』
島田『私はあなたのお話を聞きたいだけです。この子を眠らせたら話してくださいますか?』
私『・・・わかった。話します。苗にこれ以上、怖い思いをさせないで。』
苗は縄を解かれた。
苗『ママ!!』
いつもクールに振舞う生意気早熟娘だった苗も、今日ばかりは普通の子供のように泣きながら私の胸に飛び込んできた。私は苗を強く、きつく、でも赤子を抱くように優しく抱いた。
私『三日間も怖かったでしょ・・・。』
苗は泣きながら震えるだけ。
私『暴行とかしてないでしょうね・・・縛るのも立派な暴行だけど・・・。』
島田『質疑応答に移りましょうか。まずは幼少時代から。あなたのお母様の名前は?』
私『・・・和子。』
島田『お父様のお名前は・・・?』
私『覚えていません。幼い時に母が離婚しましたので、教えて貰っていないのかも。』
島田『ご兄弟は?』
私『妹が一人。名前は美知です。』
島田『・・・美知さんがお生まれになってからのお話を聞かせてください。』
私『美知が生まれてから・・・。』
私は母さんの実家に預けられていたんだ。母さんが出産で入院するから。何週間だっけ・・・そこまでは覚えていない・・・。
祖母『おかえり、和子。色葉は遊び疲れて寝てるよ。』
私『ZZZ...』
母『色葉。帰って来たよ。』
母さんはすやすや寝ている私を揺すった。私は遊び疲れてるから起きたくない。でも、母さんにはお見通しみたいで・・・。
母『寝たフリしてるでしょ(笑)赤ちゃんの顔を見てよ。』
私『うーん・・・わっ、かわいい。』
美知との初めての出会い。私はお姉ちゃんになった。父さんに報告したい気持ちでいっぱいだった。でも・・・。
私『お父さんはまだ帰って来ないの?』
母『・・・。』
私『お母さん?』
母『・・・お父さんは・・・交通事故で死んじゃった。』
当時の私は死んじゃったという意味がわからなかった。表の意味にも裏の意味にも。
いくつ寝ても父さんは帰って来ない。一年、二年、私は母さんに尋ねた。
私『お父さんはまだ?』
母『・・・はあ、言ったでしょ。お父さんは交通事故で死んじゃったんだって。』
私『え・・・。』
母『お父さんのことは忘れて、美知と遊んであげて。あー忙しい。』
この時は死んじゃったという意味を理解出来た。でも、裏の意味はまだ理解できなかった。お父さんがいないということを理解した私は、とても寂しくなったんだ。
母『ほら、はやく。』
私『・・・なんで、私が。』
母『お姉ちゃんだからでしょ。』
私『美知、嫌い。』
このくらいでいいかな。
私『・・・って感じで、しばらくは美知が大嫌いでした。』
島田『なるほど。両親の離婚がなければ、あなたの人生が狂うこともなかったかもしれないのですね。』
私『・・・。』