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面会者

助けた女の子といちゃいちゃします(?)

……これ何てエロゲ?


病院のベッドでおとなしく寝ていると面会時間なのか、一人の少女が面会にやって来た。


独り身の自分の病室なんか医者以外来る人間は居ないと思い込んでいたためかなり面食らった。


さらに驚いたことにその少女は地味だがかなり可愛かった。真っ黒な髪をお下げにした眼鏡っ娘でもちろん眼鏡は丸眼鏡。

真っ白で滑らかな肌が黒いセーラー服によく映えている。正に委員長や図書委員、といった様な風貌の少女である。


そんな少女が男の病室、しかも個室にやって来た。これはもうエロゲと言わず何と言うのか。


……しかしとても無愛想だ。そのせいで見た目の可愛さが半減してしまっている…いや、無愛想どころか険悪な雰囲気を醸し出している。これはエロゲで言えば好感度ゼロだろう。寧ろマイナスかもしれない。


何か怒ってる?怒ってる??怒ってます???ねぇ、怒ってるんです????


何にせよ、無言で枕元に立たれたこっちとしてはたまったもんじゃないのは確かです。


険悪モード全開で枕元に立つお下げ少女に何か言うにしても何と声をかけたものかと男が考えていると、少女が先に口を開いた。


「この間は助けて下さってどうも有り難う御座いました」


少女が男を見下ろしながら発した、無機質な感情の籠らない声。

しかしそれで男は彼女があの時助けた少女である事をやっと思い出した。


男が自分を庇って大量の鉄ポールの下敷きになった時、この少女はとても冷静だった。まるで感情など何処かに置き忘れて来たかのように淡々と救急車を呼び、男に声をかけ続けていた。あくまで淡々と、機械の様に無機質な声で。きっとこの子は常にこんな感じなのかもしれない。


「ああ、いいよいいよ別に、と言うか突き飛ばしちゃったけど大丈夫だった?頭ぶつけたり、膝擦りむいたりしてない?」


「……貴方って変な人ですね。自分の方が遥かに重大な負傷をしているというのに私なんかの心配をする。そもそも何故見ず知らずの私なんかを助けたんですか?」


いきなり変な人って言われた。確かに普通じゃないことは自覚してるけど変な人は地味に刺さったぞ。


だかここは大人の対応をすべき所である。


「変な人って…地味に傷付くなぁ……あ、君を助けたのはアレだよ、アレ、えっと…ほらアレ、一目惚れってヤツだね、うん」


流石に『僕は未来に起こる他人の不幸が見る事ができて、君が死ぬ未来が見えた』なんて事を言ったとしても只のイタい奴なので、傷ついたことをソフトに主張しつつ笑いながら冗談めかして誤魔化した。


……結果、少女の氷柱の様に鋭く冷たい視線と『セクハラですよ』と言う一言に既に傷ついていた俺の硝子ハートは粉砕される事となった。


どうやらこの子には冗談があまり通じない様である。


「冗談だよ冗談、僕が君みたいな年の女の子に手を出したら捕まっちゃうよ」


「こちらこそ冗談ですよ、安心して下さい」


……いや、そんな無表情で言われても困る。


冗談は通じていたらしいが表情が全く変わらない、正に鉄壁の無表情仮面。そのせいで冗談が全くもって冗談に聞こえない。なんて恐ろしい子なのっ!!


「あ、そういえばこれ、お見舞いです」


そう言うと少女は果物の詰め合わせのバスケットを渡してきた。

…メロンなど高い果物が入っていないしあまり大きくないのできっと安いやつを自分の持っている小遣いで買ったのだろう。親は買ってくれなかったのだろうか、それとも少女が話していないのか。


「君は真面目だね、わざわざお見舞いを買ってまで面会に来てくれるなんてさ、でもそうやって見下ろされてると怖いからとりあえず座って欲しいな〜なんて」


「そんな事は無いです」


真面目だという評価に対する否定なのか、それとも男の恐怖に対する否定なのか。


少女はベッドの脇にある小さな椅子に座りながら少女はそっけなく答える。


そこで男はある事を閃いた。

少女に貰ったフルーツ盛り合わせからリンゴを数個取り出し少女に尋ねる。


「リンゴって食べる?嫌いじゃない?」


「リンゴですか?普通ですね」


OK、OK、嫌いではない様だ。


「じゃあ今から剥くから、そこの果物ナイフとってくれるかい?」


「お見舞いを私が食べては意味がないのでは?」


男の意図を察し、そう言いつつもちゃんとナイフを取って柄の方を向けて渡してくれる。


細かい所に真面目な性格が現れてるなーと男は思った。


「んじゃ、いっきまーす」


男は物凄い速度でリンゴの皮を剥いた。しかも繋がっているリンゴの皮を一回も千切ることなく全て。実は男の昔からの得意技である。


「どやぁ」


と言ってドヤ顔をしながら少女に切って爪楊枝を刺したリンゴを手渡す。


「……ぇ、あ、はい。」


少女は若干唖然としていたがリンゴを手渡されると素直に受け取った。そして男のドヤ顔を見て少しはにかむ様に笑った、様な気がする。


気の所為かもしれないが。


もしかしたらドン引き故の苦笑いかもしれないが。

次は少女について掘り下げる予定です。

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