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リアンの塔☆

残虐なシーンと性的なシーンがあります。

苦手な方はご注意ください。

ギシッギシッギシッギシッ


ガタン!


ギシッギシッギシッ


「あんっ…!あっあっあっあっあーーっ!!マルス!!愛してる!!」


「俺もだ…ターニャ!」


…いい加減にしろ~!!


眠りに落ちたはずの俺の意識は隣の部屋から響く嬌声で急浮上してしまった。


最初はラッキーと思って聞いていたが、流石に三回戦目となると怒りたくもなる。


たまに子どもたちやジョンの方を見やるが、三人とも起きる気配は無い。


いつものことなのかもしれない。


俺からしたらまさかのハプニングだよ…。


「ウオーーーーーー!!!」


三回目になるマルスの狼のような唸り声が聞こえ、やっと静かになった。


終わったようだ。


ようやく寝れる…。


しかし元気になってしまったムスコのせいで俺はその後も中々眠ることができなかった。


「おはよう!よく眠れたか?」


朝スッキリした顔でマルスが声をかけてきた。


「うん…。」


マルスには感謝しきれない程恩があるのだが、俺の中の悪魔がリア充爆発しろ!と叫んでいる。


「おはよう。もうすぐご飯できるから待っててね。」


ターニャさんの顔も心なしかツヤツヤしている。


肉付きの良いはち切れそうな胸とムッチリしたお尻が人妻の色気を存分に醸し出して、俺は昨夜のことを思い出さずにはいられなかった。


くそ~…この欲求不満をモンスター退治で発散するしかない。


支度をしてジョンとマルスと騎士団に行く。


出発する時のマルスとターニャの熱烈なキスに不自然に目を逸した俺にマルス家のもう一人の奴隷、クロムが苦笑いを寄越してきた。


良かった!


マルス家にも分かってくれるヤツがいる!


クロムは、マルスがターニャと結婚する前からの古参の奴隷だったらしい。


昨日はガタイはデカいが無表情でロボットみたいだと思っていたが、急上昇だ。


俺はしばしクロムとアイコンタクトを交わし嘆きあった。


「あ、ちょっと待っててくれ。」


家を出て騎士団に向かう途中マルスが武器屋に寄った。


そして腰につけるベルトのような物を持ってきた。


「ほい、大将に。」


「え?」


「手裏剣というヤツだ。大将は反応が良いから多分剣よりもこれの方が良いと思うんだ。」


俺が知っている手裏剣とは少し違って小さな剣が5本ベルトに引っかかっている。


腰に付け、試しに遠くの巻物店の看板に投げつける。


命中した。


「流石だな!」


ジャンプしてマルスが手裏剣を抜き取る。


最近ようやく女神様のチートがどういうものか分かってきた。


今も俺には手裏剣の動きと看板の揺れがスローモーションのようにしっかり見えたし、投げる腕の感覚も肌を通じて手に取るように分かる。


体操選手の言う空間感覚というヤツだろうか?


このおかげで細かいコントロールが可能になったので、外すことは無い。


「ありがとう。でもこれ本当にもらっちゃっていいのか?」


「ああ。昔は使ってるヤツもいたらしいけど、最近じゃ技術が廃れて需要も無い。二束三文だったから気にするな。」


「じゃあ遠慮なく。」


騎士団に着くとアランたちが馬に乗せてくれた。


20騎くらいで討伐隊を編成したらしい。


「では、お気を付けて。」


「ああ。お前たちこそ気を付けてな。」


「はい。」


リアンの塔で討伐隊と分かれ、いよいよ俺にとって二つ目となるダンジョンに入った。


「少し屈んで歩けよ。トラップに引っかかるとまずいか…オウッ!!」


マルスの下半身が消えた。


落とし穴だ!


「マルス!?うわっ!」


反射的にマルスの腕を掴んだ俺もマルスの重みに耐えられることなく落ちてしまった。


ドスンッ!


「マルスさん!マサトさん!大丈夫ですか!?」


「大丈夫そんなに深くな…え?」


何と穴に落ちた俺とマルスの前にいたのは、明らかに昨日の盗賊と同じ目の周りに刺青をした3人の男だった。


「まずっ…!」


「おりゃ~~!!」


盗賊たちが襲いかかって来た。


一人とマルスが対戦する。


俺も慌てて手裏剣を投げた。


「ギャッ!」


見事に一人の額に刺さった、残り2人。


カキンッ!


鍔迫り合いになる。


盗賊が先に振りかぶった。


あーあ、そんなにバット振るみたいに剣を振っちゃダメだろ。


試合モードに入った俺は冷静に抜き胴を決めた。


「ヴッ!」


しかし致命傷には至らなかったようだ。


「チッ!」


しょうがないので、後ろから振り向きざまに頭を斬った。


「グアッ!」


残心は基本だろ、と思いながら振り返ると、また他の盗賊が襲いかかっってきた。


手裏剣を投げて対応する。


「ゲッ!」


盗賊が倒れる。


するとその後ろにも4人程盗賊がいた。


あれっ!?


何か明らかに増えてるよね!?


「大将!!ここがアジトだ!!」


マジかよ!!


ひとまず、他の盗賊と剣を交えているマルスの背後に忍び寄った盗賊に手裏剣を見舞う。


そしてうちかかって来た男の剣を受ける。


俺の後ろからも斬りかかってきたが、それは俺の5感、主に聴覚と触覚が補足した。


「グワッ!!」


俺が避けたので後ろの盗賊の剣が俺と打ち合っていた盗賊に当たった。


仲間を斬って動揺したところを斬る。


しかし一回じゃ斬れないので何回か斬りつけてようやく絶命した。


切れ味悪っ!


生きて帰ったらまず剣を買い替えようと心に決めた。


次のヤツに対応しようと思った時、視界にマルスが二人に打ち掛かられて片膝を折った姿が映った。


「マルスッ!」


そっちへ移動しようとするも俺も目の前のヤツが斬りかかってきて手一杯だ。


ヤバい…!


「ギャッ!」


倒れたのはマルスではなく盗賊の方だった。


「アランッ!」


「マサトさん!無事ですか!?」


討伐隊の人たちが次から次へと穴から降りてきた。


ジョンの姿も見える。


ジョンが呼んできてくれたんだ。


突然現れたきっちり武装した討伐隊に盗賊は恐れをなして逃げ始めた。


そして俺の視覚は奥の部屋から少し除いてすぐ消えた体格の大きい顔中に刺青をした男が目に入った。


あれがボスか…!


俺は討伐隊の登場にうろたえる目の前の盗賊の喉に手裏剣を突き刺して引き抜くと、奥の部屋に走った。


ボスの横についた二人が剣を構えるのと同時に手裏剣を投げる。


「グアッ!」


もういっちょ、と手裏剣を手で探るが…そういえば5本しかなかったんだった。


「ウオオオオ!!」


ボスは死を決意したのか、逃げるのを止めて斬りかかってきた。


お…重い!


流石にボスなだけあるか。


寸でのところで受け流す。


またボスは大きく振りかぶった。


受けると力の差で押し切られると判断して、横に抜けながら胴を斬る。


斬れない…?


こいつ楔帷子着込んでやがるのか!


ボスがにやりと笑った気がした。


ひとまず間合いをとって一呼吸おく。


「キエエエエイーー!!!」


気合を入れて踏み込んだ。


「突きいいいいーーーー!!!」


「ガッ!!」


ボスの剣が振り降りてくる前に喉に突き入れた剣から手を離して、抜け、振り返る。


ボスが倒れるのが見えた。


「…すごい!」


疲れて肩で息をしてる俺の隣にアランが興奮気味に来た。


「強いですね!マサトさん!あ、こっちは片付きました。お怪我とかありませんか?」


「大丈夫…。」


むせ返るような血の匂いが気持ち悪い。


「ちょっと…外出ていいか?」


「あ、どうぞ。」


出口は俺たちが落ちてきた穴ではなく、横穴だった。


「リアンの塔の罠は移動するから、たまたま盗賊のアジトの上に落とし穴ができたらしい。」


「盗賊も相手が悪かったな。あの人は何者なんだ。一人で10人殺してるぞ。」


そうか、俺は10人も…。


騎士団の会話が耳に入ってきた。


外に出て息を吸う。


「マサトさん、ご無事でしたか。」


ジョンが話しかけてきた。


「お前が呼んできてくれなかったら危なかった。ありがとな。」


「いえいえ。でもすごいですね!マサトさん本当にお強いです!」


「…強いって良いことかな。」


思わず呟いてしまった。


「弱肉強食ですから。この世界は。」


「そのトップにならなきゃいけないんだよな。俺は。」


「はい。」


迷ってる暇なんて無いか。


「おう、大将。これ、手裏剣。」


「あ~ありがとう。って!マルス、腕大丈夫か!?」


「大したことねぇよ。ちょっと掠っただけだし、もう騎士団のヤツに縫ってもらったから。」


「なら良かった。」


でもターニャさんの反応が心配だよ、俺は。


「騎士団の人たちは?」


「アジトを今徹底的に調べてる。かなり金目の物が見つかったらしくて、小躍りしてるよ。」


「その分け前って俺たちはもらえないの?」


「盗賊の財産とかは全部騎士団の物だ。ま、そっから俺たちに賞金を出してるんだから文句は言えねぇよ。」


「ふ~ん。」


「ぎゃ~!化物だ!」


中から叫び声が聞こえた。


「モンスターかっ!」


俺たちは急いで中に戻った。


盗賊のアジトの奥にまた大きな穴が空いて、そこから虎のようなモンスターが大量に飛び出してきている。


「騎士団の奴ら隠し部屋を探そうと無理に穴を空けたな!ここはただのアジトじゃない、ダンジョンだってのに!」


マルスがイラついたようにモンスターに斬りかかった。


一太刀で消えた、強くはないようだ。


しかしモンスターに見慣れてない騎士団の人たちはビビって逃げ始めている。


「こらー!逃げるな!それでもお前らは騎士か!」


アランが呼び止めているが、効果は無い。


仕方がないので、マルスと俺とジョンが応戦する。


3人で16匹程狩ったところで、残りのモンスターは恐れをなして逃げてしまった。


「予想外にクエストも完遂しちまったな。運が良いのか、悪いのか。」


タイグレットのドロップアイテム、牙を拾いながら、マルスは苦笑した。


その後、アランに騎士団の不甲斐なさを平謝りされながら、俺たちは帰路についた。


「えーと、マサトさんは、9人の盗賊で10000ディナール×9、90000ディナール、頭で10万ディナール、それから盗賊殲滅の報奨金50万ディナール、計69万ディナールです。どうぞ。」


「えええ!?そんなにもらっていいの!?てか、報奨金ヤバくね!?」


「ええ。マサトさんの活躍からしたら、少ないくらいですよ。それに…。」


今回で騎士団もかなり儲かりましたから、とアランが小声で囁いてきた。


なるほど、お主も悪よの~。


「結構良いアイテムもあって…あ、マサトさん特別に見てきます?」


「いいのか?」


「はい。マサトさんは今回のMVPですから。」


アランが保管庫に案内してくれた。


これが、なになにの地図で、これはどこそこの壺で、と色々説明してくれたが、俺にはさっぱり分からない。


ただ一つ、青い石のついたペンダントに目がいった。


「これは?」


「あ~ターコイズのペンダントです。中々良いものですよ。…どなたか良い人にあげるんですか?」


「ち…違うよ!」


アランのニヤついた顔に思わず否定してしまったが、このペンダントを見た時に思い出してしまった。


空に羽ばたくティナの姿を。


「やっぱ、これ貰えるか…?」


「はい、もちろんです。」


アランは快諾してくれた。


俺は賞金とペンダントを持って、マルスの家に戻った。


「あ、マサトさん。」


子どもと遊んでいたジョンが困った顔で駆け寄って来た。


マルスが怪我をしてたので、俺が保管庫を見せてもらってる間、先に帰ってもらっていたのだ。


「どうした?」


「あの、マルスさんがこのクエストをギルドに届けて欲しいそうです。本当はマルスさんが行くつもりだったみたいなんですが…ターニャさんが。」


「あ~理解。」


まあ、マルスに頼りっぱなしなのも良くないしな。


その足でカントーラのギルドへ向かう。


「これ、お願いします。」


「はい、お預かりします。」


お姉さんが確認作業をしてる。


「はい、アイテムタイグレット16×200で3200ディナール、クエスト完遂の報奨金が1000ディナールでクエストを受けて4日目なので400ディナール、計4600ディナールですね。」


「はい、どうも。」


「あ、それからタカイ・マサト様はランクアップですので、腕をお出し下さい。」


「え?もう?」


「盗賊退治をなさったのですよね?騎士団から連絡があってその分加味されて、早いランクアップとなりました。」


「そっか。」


左腕を出す。


タカイ・マサト 男 人間 冒険者ランクI


お~、ランクアップした。


「それじゃ。」


「そこの者、ちょっと待て。」


ギルドを出ようとしたその時、一人のおっさんが俺に話しかけてきた。


ガタイの良い奴隷を二人連れた、良いもん食ってますって体型の派手なおじさんだ。


「は、何でしょう?」


「お前、盗賊を倒したのか?」


「まあ、一応。」


「ふむ。私の護衛をやらぬか?」


「へ?」


「私は商人でな、明日ケードラの町に商品を運ばねばならないのだ。しかし、最近ここに限らす色んなところで盗賊が出没していてな。今ギルドにクエストを頼みに来たところなのだよ。旅は二日、飯は三食付くし、悪い話じゃないだろう。」


「う~ん。」


色んな町を見てみるのも良いかも。


「わかった。やるよ。」


「うむ。では明日、町の門のところに太陽が真上に上ったら来てくれ。」


「はい。」


いつまでもマルスのところにはいられない。


俺は俺で力をつけなくちゃ。


俺はマルスの家に戻った。

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