年の差夫婦
微エロかもです。(主人公ではない)
「ですから、転売目的ではありませんわ!!」
ん?
騎士団の前を通り過ぎようとした時、中から聞き覚えのある声がして俺は立ち止まった。
人垣の間をひょいと覗くと、そこに目的の人、フロリアがいた。
何か揉めているようだ。
「商人が自身の店の主力商品を仕入れて売らないなんてことがありますでしょうか」
あれ、揉めてる相手は競争相手のマルーヌ家か。
フロリアから、商売における美学の違いから犬猿の仲で同業者でありながら仕入先で会うこともない、と聞いていたが、何かトラブルが起きたようだ。
俺は以前、獣人コミュニティの潜入任務でマルーヌ家のオークションに参加しミナリーを購入した。
隠す必要はないのだが、タイミングを失いそのことをフロリアに伝えていない。
気になるが、マルーヌ家に顔も割れているし、ひょんな流れからフロリアに知られると今まで築いてきた信頼関係を失う恐れがある。
う~む・・・・・・。
俺はそっと人垣から離れると、人のいない路地へ入った。
周りも念入りに見渡し、物陰にしゃがみ込むとオフィーリア様直伝の姿隠しの呪文を唱える。
まあオフィーリア様はエリーゼに教えたと思っているから、俺が使ったと知ったらまたあの綺麗な御御足で顔をグリグリしてくるだろう。
たまらな・・・じゃなくて、この魔法は魔力を継続的に消費するので万能ではない。
時間を無駄にしないようさっさと中に忍び込む。
中にはフロリア、マルーヌ家の主人・・・・・・そして他に二人の男女が立っていた。
男は・・・・・・でか、身長が。
2m近くある身長、すらっとしているが、しっかりとした体つき。
あれはかなり鍛えているな、着痩せしているが、袖から見える腕の筋肉、肩幅、胸、腰、脚、うん、どこを取っても靭やかな筋肉ですげー引き締まってる。
精悍な顔立ちは若々しさに溢れている。
外国人の年齢を当てるのが難しいように、異世界人の年齢を当てるのも難しいが、最近ようやく慣れてきた。
透視をする。
アダム、17歳、ほらね、人間・・・ってまじか、てっきり混血かとおもったぜ。
女は・・・・・・でか、おっぱいが。
嘘だろ、なんだあれ、うちのエリーゼを凌駕するだと・・・・・・!
同じくらい大きいのはベレーヌ家でのサキュパスくらいだが、あのサキュパスはまさにスイカップにふさわしいボールのような張りのあるボインボインであったが、こっちは見るからに真っ白で柔らかそうなたゆんたゆんだ。
身体はほんの少しぽっちゃりしていてだらしのない感じが何ともエロい。
顔はこちらの世界の人なのでもちろん整っているが、真っ白な肌にピンク色の頬、トロンとした大きなタレ目・・・・・・顔だけ見れば純朴な雰囲気がするが、大学の先輩曰く、大抵こういう純朴そうな女性の方が性欲の強い変態が多いのだと。
髪、瞳は栗色でこちらの世界の基準でも美しいだろうが、髪の間から牛の角が生えている。
なるほど、牛の獣人なんだな。
それなら納得のいく胸のデカさだ。
そうだな・・・・・・あの熟れた豊満な胸にお尻、憂いを帯びた表情、経験を重ね円熟したエロい雰囲気、女盛りの28歳とみた!
透視on!
ワッカ、35!?
女の年齢だけは未だにさっぱりわからねえ・・・・・・。
「何度も言いますが、転売目的ではありませんわ!私が私の家の奴隷として二人をオークションで競り落としたのです!」
「代理人を立てて、素性が分からないようにしてですか?怪しいにも程がありますな」
「私と分かったらオークション会場に入れたのですか?断られるのは明白ですわ。騎士団長様、アダムは確かにマルーヌ家の使用人としてしてはならない罪を犯し奴隷となりましたが、根はとても働き者で真面目な青年です。本人が選んだ道とはいえベレーヌ家として雇えなかったことを悔いておりましたわ。ですから、オークションで正規に落札したのです。何を咎められることがあるというのですか」
「働き者の奴隷など、奴隷商であれば手元にいくらでもいるはず。しかも牛人間の奴隷まで落札する必要があるのかな?んん?騎士団長様、奴隷商は独自の仕入れルートを持っており、情報は我々の命綱です。同業者が我々の仕入れた商品からその情報元を聞き出さないとどうして言えましょう」
「なんて詭弁・・・・・・!騎士団長様、ご存知だと思いますが、ワッカはマルーヌ家の奴隷であり、アダムはマルーヌ家の使用人、アダムがワッカと関係したことはもちろん許されないことで奴隷に落とされて当然ですわ。ですが、報復のためにワッカを娼館に、アダムを闘技場に売ることが許されるのでしょうか?」
「誰に売ろうが私の勝手じゃ!!」
「もちろん、そうでございますわ。しかしオークションで競り勝ったのは私ですわ。大方少しでも値を釣り上げたいと複数の娼館と闘技場の関係者に声をかけたのでしょうけども、オークションにかけられれば全てを左右するのは数字の大きさのみ。報復がかなわないからと私が購入することを阻むということが許されるのでしょうか。アダムは奴隷に落とされ、ワッカは罪人奴隷とされ、十分罪の報いは受けましたわ」
「ウオッホン!報復ではありません、騎士団長様。この小娘は話を自分に有利に進めようとして適当なことを抜かしておるだけでございます。アダムのオークションの次点が闘技場、ワッカが娼館だっただけでございます。私の主張は最初から変わりございません。私は、ベレーヌ家が『奴隷転売の禁』を犯している!最初からそれを申し上げたいのです」
「私の代理人以外は闘技場関係者と娼館関係者しかいなかったのですよ!オークションの記録を見ればその不自然さがわかりますわ。わかりました、今はそれはそれとしておきますわ。私は転売が目的ではございませんし、そもそも『奴隷転売の禁』はエルフが希少種となり始めた頃に法外な値が付けられることを抑えるために発せられたもの。今回のことに適用するのはあまりに無理がありますし、エルフがほぼ絶滅した今では転売を禁じたところでエルフの値は法外。忘れ去られた死んだ法律ですわ。ご存知のように、現在では奴隷を買ったお客様が奴隷と反りが合わずに、買値より高い値をつける他の奴隷商に売ることは禁じられておりません」
「それは奴隷商同士ではないからです。『奴隷転売の禁』は奴隷商間の転売目的の売買を禁じているのです。そしてこの法律は忘れ去られようと今も厳然と存在しております。転売しないなどと申しておりますが、信用できるものか、んん?さらに言えば、それをどのように確かめれば良いのでしょうか?転売しないと約束したとして、私は何年もそれを確かめにベレーヌ家へ行かなければならないのですかな?騎士団長様、『奴隷転売の禁』がある以上、それを守るためには、奴隷商に転売される可能性のある商品は奴隷商に売らない、これしかないのでございます」
「ですから・・・・・・!」
「相分かった」
「き、騎士団長様・・・・・・!」
「両名の言い分、しかと理解した。・・・・・・フロリア・ベレーヌ殿、貴殿の主張、疑うわけではないが、『奴隷転売の禁』という法があることは事実。法の順守は絶対である。奴隷商が商品である奴隷を売らないということを約束したとて、信用することは難しい。フロリア・ベレーヌにマルーヌ家への奴隷の返還を命ず。ジージ・マルーヌは代理人から受け取った金額をきちんとベレーヌ家に返金せよ」
「そ、そんな・・・・・・」
「ありがとうございます!!さすが、さすがは騎士団長様でございます!!」
「ジージ・マルーヌ殿、貴殿のアダムとワッカへの過度の報復の疑いも晴れてはおらん。適正な取引を求む」
「は、はは・・・・・・それはもちろん」
俯いたフロリアがアダムとワッカに近づく。
「ごめんなさいね、二人共・・・・・・」
「いいえ、フロリア様、僕の母が泣きついたばかりに、ご迷惑おかけしました」
「それが理由ではありませんわ。私は商人よ、価値のある商品は買いに行く、それだけですわ。・・・・・・こうなってしまっては仕方がありませんわね・・・・・・お母様については安心なさい。私が責任もって面倒を見ますわ」
「本当に何もかもありがとうございました・・・・・・!」
フロリアが騎士団を出てもアダムは頭を下げ続けた。
「アダム様・・・・・・私のせいで・・・・・・」
「ワッカ、いや、僕のせいだ。僕のせいで娼館になんて」
「いいえ、アダム様、私は20年間ご主人様の慰み者でしたから娼館に行っても今までと何も変わりません。心配なさらないで・・・・・・辛いと思うのはあなたという愛しい人に出会ってしまったから・・・・・・」
「ワッカ・・・・・」
うっ、うっ、泣かせるねえ・・・・・・ってヤバい!ヤバい!ついつい気になって魔力使いすぎた!
俺は急いで騎士団を出て、魔法を解いた。
う、ふらふらだ・・・・・・。
「あら、マサト様・・・・・・ってきゃー!マサト様!お気を確かに!」
あー、フロリアの声が聞こえる・・・・・・。
その後、フロリアの家で目覚めた俺は、介抱してくれたフロリアに人垣から見てたことにして先ほどのことを詳しく聞いた。
アダムの父親は農家で育てる作物が美味しくて有名だったこと、母親が病に倒れ治療費を稼ごうと焦り騙されて全財産を取られたこと、そして失意のうちに命を絶ったこと、お給金の良いマルーヌ家で必死に働いていて母親の治療費を稼いでいたこと、ワッカと恋に落ちて一線を超えてしまったこと・・・・・・。
「何とかしてあげたかったですわ」
「どこに売られるかはわかっているのですか?」
「ええ、でも私がそこに交渉に行っても応じないわ、マルーヌ家が言い含んであるはずですもの」
「・・・・・・実は今日は新しい奴隷を買いたいと思っていたんですよ。私も手広くやっていますので人手が欲しくて」
そうなのだ、しかも作物を育てるノウハウのある人がなお良い。
「え・・・・・・もしかしてマサト様」
「どこに売られるか教えていただけますか?」
「え、ええ!ありがとございますわ!!」
後日、交渉に行くと二箇所ともあっさりと買った金額の二倍での譲渡に応じてくれた。
マルーヌ家は破格の値段で二人をそれぞれ娼館と闘技場に売りつけていたので想定より安く済んだ。
しかし契約の問題でマルーヌ家を挟まないといけない。
最初は渋っていたが、ワッカは俺の女に、アダムを冒険者としてダンジョンに連れて行くと言うとやっと応じてくれた。
ジージ・マルーヌは自分の女だったワッカとそれを寝取ったアダムが幸せに暮らすのが嫌だったようだ。
無論、ワッカを俺の女にするつもりはないが。
人の恋路を邪魔して馬に蹴られて死ぬのは御免だ。
契約が成立した後、家に向かいながら、二人にはきちんと説明した。
麓のトーテムで移動する。
「わ「え、魔法!?エルフ!?」」
うん、なんか慣れたな、この反応。
「さ、こっちだ」
混乱する二人に家族を紹介したり説明を続けながら、俺たちの家からすこし離れたところに案内する。
「ここが二人の家だ」
「え、こんな良い家・・・!しかも畑まで・・・!」
二人を買うと決めてカルペンさんに建ててもらった。
この山に暮らし初めて一年以上が過ぎ、わかってきたことがある。
ここにあった城はどうやら小田原城のように集落を含んだ城だったようだ。
実際畑の跡が見られ、オズさんが収穫に来るほど豊かな実りがある。
下は険しい山肌なのに、上に実り豊かな大地。
この不思議な地形、異世界って意味わからねえ。
仕組みがわからなくても電子レンジをみんな使うように、せっかくだから使いたいと考えた。
ここに村を作ろう。
うまくいくかわからないが、この二人はまず住人第一号だ。
「最初は俺が養う。必要なものも揃えてやる。だけど、その内自立して二人で頑張って欲しい」
「で、でも、僕たちはご主人様の奴隷です!ご主人様にお仕えしなければ・・・・・・!」
「もちろん必要な時は力を貸してくれ。その時は命令するさ。でも今は・・・・・・まあこんなとこだけど、新婚生活満喫してくれ」
「いいのですか・・・・・・?ほ、本当に私、アダム様と・・・・・・」
「もちろん、エリーゼ用意できた?」
「はい」
「今から結婚の儀を執り行う。えーと、俺の故郷のだけどな」
「これはご主人様からお二人にお祝いの指輪です」
「俺の故郷では結婚式で指輪を交換してお互いの指にはめるんだ」
「こ、こんなことまで・・・ありがとうございます・・・!!僕、このご恩は一生、一生忘れません・・・!!一生ご主人様に心からの忠誠をお捧げします・・・!!」
「私もです・・・・・・!」
「まあまあまず涙ふいて・・・・・では、始めるぞ」
参列者は俺とエリーゼ、ミナリー、リン、ミナタ、ミナコ、あ、あとヘヘーイ。
式の後、俺の家でささやかなお祝いをして、二人は新居に帰っていった。
『あ゛あ゛ああああぁぁ!!!オホオオォォォ!!!しゅごいいいいい!!!!しゃいこお゛お゛!!!』
『ワッカ!!!ワッカ!!!ああ!!最高だ!!!ワッカ!!!』
『あ゛あ゛あ゛ごんなのってえ゛えええこんなのってえ゛えええモ゛オオオオォォォォォォ!!!!』
「こ、こんなに聞こえるものなのですね・・・・・・」
「ま、まあ新婚初夜だから、その内落ち着くさ・・・・・・」
むっちむちの35歳の女と鍛え上げられた17歳の男か・・・。
男と女のそういうエネルギーのピークはこの年齢だった気がする。
ま、ま相性が良いことは喜ばしいことだよね・・・家壊してくれるなよ・・・。
二人の愛の喜びのデュエットは毎晩一週間欠かさず開催された。
「あ、あの・・・・・・本当にお恥ずかしいお話なのですが・・・」
一週間後の朝、二人が赤面しながら家に来た時、俺は何かを察した。
「これからはほどほどに・・・・・・」
「「本当に申し訳ありません!!」ございません」
俺は今度はちょっとばかり頑丈なベッドを買いに行った。




