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愛欲☆

性的な描写があります。苦手な方はご注意ください。

「ご要望はございますか?」


「そうですね、迷宮に潜るので腕が立つ方がいい、かつ手先が器用ならなお良い、といったところでしょうか」


「性別はいかがなさいますか?」


「……女性で」


うんうん、分かってましたわ、というようなフロリアの反応が恥ずかしさを増大させる。


しかしだな、現在へヘーイという厳密にいえばオスでもメスでもない無機物にすら苛立ちを覚える狭量な俺のことだ。


男性のダの字も家に入れたくないわけよ。


それにへヘーイのセクハラという名の毒牙からエリーゼとミナリーを守るだけで手一杯です。


「奴隷をお子さんのように可愛がっているマサトさんですもの。母親代わりの奴隷を欲しがるのも当然のことですわ。男所帯に蛆がわき…と申しますし、女手は必要ですわね」


……?


…おっと!久しぶりで忘れてた!


そういえばベレーヌ家では病気の男児の奴隷しか所持していないと思われているんだった。


最近は連れてきてないけど、最初の頃はわざわざエリーゼに変身させてベレーヌ家の仕事に同伴させてたもんな。


MP回復薬を病気の薬と偽って。


ミナリーはマルーヌ家で購入したとはいえ、オークションだったから風の噂で伝わってるかと思っていたが、意外と守秘義務はしっかりしているらしい。


まあ顧客リストは商人の生命線だし、俺自身アラワール対策で顔半分隠してたっけ。


「そ、そうですね。家事とかできれば最高ですね」


「…私も家事はできますのよ…」


「え?」


「…な、なんでもありませんわっ!そう、戦闘、戦闘能力が大事ですわね!それならとびっきりの子がいますのよ。爺!あの子を呼んでちょうだい」


「かしこまりました、お嬢様」


戦闘能力よりもまずは顔とカラ…いや、何も言うまい。


実際人手不足なのだから、戦力になって家事ができ、かつエリーゼとミナリーにちょっかいを出さない女性であれば顔やスタイルはどうでもいいじゃないか。


そうそう、たとえゴリラみたいな顔をしていようと、母ちゃんみたいな体型だろうと、迷宮でいざという時躊躇なく置いていけるしな…ってダメダメ!


差別、ヨクナイ。


もし好みの女性でなかった時の断り文句を頭の中でツラツラと練習していると、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。


いざ、参らん…!


「失礼します」


入ってきたのは、かなり小柄でスレンダーな少女だった。


……なんなんだ、この子。


何か懐かしいような、郷愁にかられる顔だちだ。


「鬼族のリンといいます。ご察しの通り鬼族ですから、隠密の修行をしており戦闘に長けています。手先も器用で賢く、特にこの美貌はケードラ一と申し上げていいかと」


髪の色と瞳ね。


確かにこの世界では珍しく美しいとされる濡烏色の髪と漆黒の瞳を持っている。


いや、完全な黒ではないか。


少し青みががっているが、かなり黒に近い。


この世界では大層持て囃される容貌だろう。


そして鬼族の特徴なのか頭の上に小さな角が二本生えている。


しかし、それよりも俺を惹きつけるのはその顔の造形だ。


スッとしたつり目に黒めがちな瞳、小さい鼻、キュッと引き締まった唇、小さな輪郭。


肌は白くて肌理が細かく、黒に近いパッツン前髪と残りは後ろでお団子にされている。


そう、俺がこの世界に来てから初めて目にする東洋系な美人だった。


異世界に来てからというもの西洋風のお顔しか見ていなかった俺は何とも拭いきれぬ違和感に立ち尽くしてしまった。


そんな俺の様子にフロリアは執事に何か耳打ちしてリンを下がらせた。


「…マサトさん、他の部屋にも当店お薦めの奴隷を用意してございますわ。よろしければ案内させてくださいませ」


俺がリンを気に入らないと思ったのか、フロリアは他の奴隷も用意してくれたらしい。


「では、せっかくなので…」


まあ、他の奴隷も用意してくれるなら他のも見てみよう。


広めの部屋にずらっと並べられた女奴隷たちはどの子もどの子も夢ではないかと思うほど美しかった。


やっぱりこの世界の人って美人しかいないんじゃないか?


その中でも、スイカップな女性に目がいってしまうのは男としては致し方ないだろう。


ボテッとした唇にトロンとした瞳が実に色っぽく男の劣情を駆り立てまくる。


「彼女はサキュパスの血が混じってますから…男の方はお好きでしょうね」


何となくフロリアの言葉じりに冷ややかな響きを感じ取って俺は慌てて目を反らした。


はち切れんばかりのすんばらすぃお胸ではあったが、俺にはエリーゼというマシュマロおっぱいの持ち主がいるからな。


ケモ耳の可愛らしい女の子もたくさんいるが、やはりミナリーのぷりぷりとしたお尻と愛らしいお顔には誰もかなわない。


全て見終わった時には俺の中に選択肢は一つしか残されていなかった。


「どなたかお気に召された者はいましたか?」


「そうですね、どの子も俺には勿体ないくらいですが…最初に見た鬼族の子かな」


精巧なお人形のようなコテコテとした顔は嫌いじゃないけど、あの子の東洋風のエキゾチックな容貌は透明感と清涼感があって目に馴染んだ。


それにやはりここは異世界。


あの子もまた絶対に二次元にしか存在しなそうな超絶黒髪美少女だったしな。


何あのパッツン前髪、そしてちょっとキツそうなでも整った顔立ち、色白でほっそり小柄な身体…。


ドンピシャで好みなんですけど…!!


マジ制服着せたいわ!


浴衣着せたい…いやチャイナ服も捨てがたい!


隠密って言ってたよな…?


くノ一プレイ…?


やりましょう!


という心の叫びはおくびにも出さず淡々と告げる。


「ええ、ええ!マサトさんならきっとそうおっしゃると思ってましたとも!女性の価値は決して胸の大きさで決まるものではありませ…何でもありませんわ」


気にしていたのか。


俺はそのフロリアの手のひら感も好きだよ?


なんて口にしたらベレーヌ家出禁になるかもしれないからよしておこう。


俺にとってはたまに中央の情報も入る貴重な伝手だしな。


まあ、確かにリンの胸はかなりささやか…というか絶壁疑惑も拭えない感じではあるが、これはこれで東洋系の良さが際立って大正解だ。


「ところで価格は…」


「鬼族の隠密技はかなり優れている上に頭も大変賢いと有名です。加えてリンはこの容姿ですし…市場に出せば80万ディナールは下らないでしょう」


たっか!!


普通の戦闘女奴隷の倍はするということか…。


「う~ん…正直俺はしがない冒険者ですから、そんな大金は…」


「あら、あれだけのエルフ製品を手に入れることができる方ですもの。それなりの力量のある冒険者とお見受けしますわ」


いや、あれはチート…というかエリーゼ様様のおかげで俺の実力ではないんだなー。


さてどうするか。


本当は前回のエルフ製品を売ったお金からミナリーを買った値段を引いても115万ディナール余ったのとミナリーの活躍で現在貯金は150万近くある。


買えなくもないが今後迷宮でミナリーを欠く上、子供も生まれるのだから80万ディナール出すのはちょっとキツい。


しかし欲しいな…一回良い品を見ていると妥協したくなくなるのが人間の性というもの。


仕方がない、揺さぶってみるか。


「そのたまにしか手に入らないエルフ製品を最近格安で手放しまして…」


ピクっとフロリアの肩が動いた。


「今後のお付き合いの分も含めてだったので、俺としては良い取引でしたけどね」


ニコッと満面の笑みでフロリアに笑いかけると、フロリアは顔を青くしたり赤くしたりした後、フーと息を吐いた。


「…マサトさんには敵いませんわ。今後のこともありますし…今回は特別に、特別に!40万ディナールでお売りしますわ」


大事なことなので二回言いましたってか。


半額か、確かにかなり譲歩してくれたな。


しかし妻子を持った男の懐事情を甘くみるなよ。


今後のことを考えてなるべく、なるべく!貯金したいんだ。


「…もう少しなんとかなりませんかね…?」


「は、半額ですわよ!原価を切りますから、これ以上はまかりなりませんわ!」


「たかが40万ディナールではありませんか。私とて冒険者の端くれ、自分が手に入れた品物の価値くらいわかっています」


さあ、品評会で受賞した後いくらで売れたんだ?


さあ、さあ、さあ!


「うっ……絶対に今後も卸してくれますわね…?」


「はい。手に入ったら必ず」


「うぅ……いくら儲かった分を差し引けといわれてもただでお譲りしたらお父様じゃあるまいし、怒られますわ…10万ディナールで許してくださいませ」


80万チャラになるほど儲かったのか。


やはりやるおる、この娘。


絶対に、絶対にまた卸してくださいね、と念を押されながら俺はベレーヌ家を後にした。


流石に10万ディナールは持ってきてなかったので、ミナリーに頼まれた魚と、少し買い物をして帰る。


八百屋の女将さんに悪阻に良い食べ物を聞いたら、あれやこれやとサービスされ大荷物を抱えて帰宅することになった。


しかし残念ながらミナリーはその夜魚はおろか食物をほとんど口にすることができなかった。


「ふう~…」


俺はミナリーが寝ている部屋からそっと抜け出し、ゆっくりドアを締めると緊張を解いた。


妊娠が分かったのでミナリーを隣の元の寝室に戻すことにしたのだが、元々独りで寝るのが好きではないミナリーの不安がる様子に放っておけず、結局ミナリーが眠りに付くまで背中を摩りながら側についていたのだ。


そして不本意ながらへヘーイにミナリーに何かあった時は大声で知らせてくれるように頼み、俺はようやく寝室に戻ってきた。


「ママに、にゃるから、がんばらなきゃ…」


好きな魚も喉に通らないほど衰弱していながらも、そう自分に言い聞かせているミナリーの姿はこれまでの愛らしさとは違う淑やかな可憐さを持っていて、俺は庇護欲をそそられずにはいられなかった。


「…あれ?エリーゼ?」


既にいるものだと思っていたエリーゼが寝室におらず、俺は一階に降りた。


「エリーゼ、どうしたんだ…?」


「あ、ご主人様、すみませんっ…!もうお休みになられますよね。戻ります」


エリーゼは外で空を見上げていた。


今夜は曇っていて昨夜のように星は見えない。


「…あ…」


「…なにかあるなら、言ってごらん」


闇夜に立ち尽くしていたエリーゼがそのまま儚くなりそうで俺は慌てて抱きしめて囁いた。


「……私…ダメなんです…」


「え?」


腕の中のエリーゼは小さく震えながら、ポツリポツリと言葉を零した。


「…本当に嬉しかったんです。ミナリーにご主人様の赤ちゃんが出来て、私、嬉しかったんです…それなのに……羨ましくて…私も欲しいって…ご主人様の赤ちゃんが欲しいって…思ってしまって……そんな浅ましい自分が…恥ずかしっく、て…」


ポロポロと自責の念に駆られて泣くエリーゼに俺はなんと言葉をかけていいのか分からなかった。


前に、ミナリーが来るより前、この家ができるより前に、この場所でエリーゼと子供について話したことがある。


もし、二人に子供が出来たら。


エルフは繁殖しづらい、人間との間に子供が出来るなど、おとぎ話でしか聞いたことがない。


そう言いながらも、できると思うと答えてくれた。


エルフは愛する人との間にしか子供を成さない、だから…。


『わ、私は出来ると思います…ご主人様の赤ちゃんっ…』


真っ赤に照れながらそう答えてくれた。


そんなエリーゼを俺はなんで泣かせてしまったのだろう。


「……エリーゼは、エリーゼだけは、一生俺のもんだから…!」


「…ふぇ…?」


「俺の子供にだって譲らない。十月十日どころか一日だってエリーゼを独占されたくない。エリーゼの全ては俺のもんだから…そうだろ…?」


ミナリーとの間に子供が出来て本当に本当に嬉しかった。


エリーゼとの間に子供が出来てもきっと本当に嬉しいと思う。


でも、出来なくったって、エリーゼが俺にとって大事で愛しい存在であることに変わりはない。


その気持ちをとにかく伝えたくて強く抱きしめながらエリーゼを見つめた。


「…はい…私の全てはご主人様のモノです…!」


エリーゼは花が綻ぶように笑ってくれた。


どちらともなく唇が近付き、ふれあった。


お互いの想いを相手に伝えるように徐々に深くなっていく口付けは終いに貪るような激しさに変わっていく。


「…んんっ…!…あむっ…ふっ…ちゅるっ…あ、はっん…」


手も同じくらいの熱量を持って忙しなく這い回り、エリーゼの夜着を下ろし、滑らかな肩、そして柔らかでありながら弾力のある白く桃色の頂を持つ双丘を剥き出しにして愛し尽くす。


夜風が晒された皮膚を撫でていくのが、火照った身体に気持ちいい。


「はっ…はっ…」


カクンと腰の抜けたエリーゼを、片膝をエリーゼの両脚の間に差し込み受け止める。


木の幹にエリーゼの背中をあずけ、彼女の白い腕が首に絡み付くのを感じながら、彼女の潤いに膝を合わせる。


樹木についた夜露か、俺の足が濡れていく。


「…エリーゼ、木に手を付いて…」


愛しい女の腰を掴み体勢を反転させた。


「…ああっ!…ご、主人、さまぁっ、愛、してっ、ますっ…!」


「…俺もだっ!愛してるっ!愛してるっ…!」


あの日と同じ場所で、あの日ように、後ろから抱きしめ二人だけのリズムを刻んでいく。


あの時からほんの少し時間が流れ、二人はあの時より大人になり、愛の喜びしか知らなかった二人は愛の苦さも知ったのかもしれない。


それでも若い男と女の肉体は深いところで繋がりこすれる度に摩擦で熱くなる肉と心とが溶け合っていく悦びで満たされていく。


愛の潤いを掻き分け引き抜き相手に自分を刻み込む作業は、言葉よりも雄弁にお互いの愛をお互いに伝えるのだ。


「…愛してる…」


寝台に戻ってからも愛を確かめ合った俺たちは、しっとりと濡れた身体を寄せ合い満たされた心で眠りについた。

皆様からのご意見を参考にして熟考した結果、三人目はこうなりました。

詳細は活動報告の方に記載させていただきます。

貴重なご意見、まことにありがとうございました!

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