表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/37

冒険者

「よっ!大将!よく似合ってるぜ!」


俺はジョンが持ってきてくれたこちら風の服を身につけた。


羊毛のような手触りの布を二枚程つなぎ合わせたものを頭から被り、植物性の帯で縛る。


袖は七分丈くらいだ。


これにズボンを履いて、草履のようなサンダルを履けば…うん、完全に古代ローマ人だな。


「あと、これ防具に剣だ。悪いな、うちもあんまり金がないもんで大した物じゃないんだが」


「いや、何もかも本当に悪いな。マルス。恩に着るよ」


皮の手袋に皮の鎧を身に付け、青銅の剣を腰に差す。


俺が年下であることを理由に敬語を止めるよう懇願したため、マルスはタメ語で接してくれるようになった。


「さてあとは髪と目の色ですね~」


「この髪と目の色じゃダメなのか?」


俺の髪も目も日本人の多数派、黒なんだけど。


「この世界に黒い髪と黒い目を持つ人は三人しかいません。すなわち、救世主様方です」


「え、はっ!?」


マジで!?


てことはマルスの赤髪とかが標準なわけ?


そういえば、さっきから完全にモブ化してるジョンも金髪に目は緑だし。


「黒に近い色ほど神聖と考えられていて、私のような茶色も珍しいんです。私が巫女に選ばれた理由です」


「へえ~、面白いな。で、どうやって髪を染めるわけ?」


「ジョン!」


「は…はい!しっ失礼します!」


マルスに怒鳴られたジョンが俺の髪に何かを塗り始めた。


「な…何これ?」


「こ…これは牛脂に灰を混ぜたものですっ…この後日に少し長く当てなくてはならないのですが、お加減は如何ですか?」


「あー全然大丈夫」


ジョンはまだ俺に慣れてないせいかやや緊張気味に話しかけてくる。


こいつ普段の俺なら呪詛する程のイケメンなのに何か危なっかしくって憎めないな。


てか、マルスも渋いイケメンだし、ティナはもちろん可愛いし、こいつら顔面偏差値めちゃくちゃ高けえ。


俺が顔面偏差値思いっきり下げちゃってるよ。


「大将!髪おいてる間、今後のことを説明するぜ」


「お、おう」


危ない、イケメンに囲まれてるとついついネガティブ思考になっちまう。


「さっき説明した通り、俺たちはみんなロムルス王国に住んでる。ただロムルス王国は大国なだけあって法がきちんと整備されてて、人間以外の種族はもちろん人間も身分証の無い奴は入れない。出生する時にもらう身分証が一般的なんだが、俺や大将のようにそれが無理な奴に持って来いなのが、冒険者のセキュリティカードだ。冒険者はこの世界で最も古く由緒ある職業で、太古の時代からテルーナにギルドを構えている。今からそこへ向かう」


「わかった。でも何で冒険者のセキュリティカードが有効なんだ?」


「テルーナのギルドを中心としてこの世界のどんなところにも必ず冒険者のギルドがある。この前、とうとう大東亜帝国のギルドは閉鎖しちまったけど、それは例外中の例外だ。この世界では昔から女神様のグレート・テンプルとテルーナだけは国を超えた権威を持ってるんだ。冒険者が悪いことをすればあっという間に包囲網ができるしな。国からしても一番信頼できる身分証なんだ。だからくれぐれも悪いことはするなよ?」


マルスが悪戯っぽくにやりと笑った。


「気をつけるよ」


なるほど、しかも世界中にギルドがあるということは、どこへ行ってもひとまずの身の保証はされるわけか。


これはなって損は無いな。


「で、冒険者ってどんなことをするんだ?」


「基本はギルドに貼ってあるクエストを受けることだな。あと自主的にできることはモンスター退治や宝探し、賊の討伐や傭兵って手もある。ギルドはランク制でランクが上がれば上がるほど報酬も高くなるから資金調達にも良いし、上手くやれば要人に近づいてコネクションを作ることも可能だ」


「持って来いだね…」


「持って来いだろ…」


「あ…あっあの…」


ぱっと見るとそこには俺とマルスから湧き出ていた”お主も悪じゃのう…””お代官様こそ…”オーラに完全に怯えたジョンの姿があった。


髪を洗ってゴシゴシ布で拭き、ティナが差し出してくれた鏡で自分の姿を見る。


「お~結構抜けたな~」


髪の色はティナよりも少し明るい茶色になっていた。


「綺麗な色でしたのに、勿体無い気もしますー」


ティナ、本気で言ってるなら、襲うぞ?


「か…髪は良いとして目はどうするんだ?」


一瞬頭に浮かんだ疚しい考えを押し留めるように俺は言葉を紡いだ。


てか本当にどうするんだ?


流石にコンタクトレンズとか無いだろ。


「これがあります!」


ティナが元気一杯服の中から取り出したのは…目薬?


「エルフの作った目薬です!」


「ええ~~!!」


おお…あの大人しいジョンが叫んでるぞ…。


「そんなに珍しいのか?それ」


「め…珍しいも何も!エルフは絶滅危惧種なんですよ!?」


「ほ…ほう…」


ジョン、お前キャラ変わってるぞ…。


「エルフはこの世界で唯一魔法が使える。それで乱獲されて価値もウナギ上りだ」


「へえ。でもマルスはあんまり驚いてないな」


「これでも冒険者歴は長いからな。エルフ関連の物もちょくちょく見かける。しかしお前がそれを持ってたとは知らなかったぞ、ティナ」


「これは兄がレースで優勝した時の賞品なんです」


「それで、これを目にさすと色が変わるのか?」


「おそらくは…なりたい色に変えることができると」


「なりたい色なぁ~」


何かワクワクするな。


憧れの外人になれるわけだろ?


青い目とか、いやもしかしたら赤い目とかも可能かも、むしろオッドアイとか…!


「…ティナはどんな色が好ましいと思う?」


気持ち悪いとか言うな!


だってそうだろう?


自分のなりたい色もいいけど、自分が一番なりたいのは少しでも女の子にモテることだよ!


悪いか!


「う~ん…私はやっぱり今のマサト様の瞳の色が一番良いとは思いますけど…」


ティナ、本気で言ってるなら、襲うぞ?襲うぞ?


大事なことなので二回言いました。


「ええいっ!」


不自然じゃない女の子にモテる色になれ!と願いながら目薬をさした。


「あっ!良い色です!」


「おっ悪くないな」


「僕も良いと思います…」


えっ?みんなの反応が上々じゃないか!


これは期待できる!


「…いや、あんま変わんねーし」


俺は鏡を見ながら心底落ち込んだ。


鏡に映った俺の瞳はダークブラウン。


「いや、変わったぞ。少なくともこの世に有り得る色になったからな」


ああ、そういう基準ね。


「じゃ準備もできたことだし、そろそろテルーナに向かうとするか!」


「お…おう!」


そうだ、凹んでる場合じゃない。


これからが本番じゃないか!


「では、皆様道中お気を付けて」


え?


「あれ?ティナは?」


「私はグレート・テンプルの巫女ですから、持ち場から離れるわけにはいきません」


「そ…そうなの…」


「何、心配するな!俺とジョンが付いてる。」


違うんだ~!!


そういうことじゃなくて、え、じゃあ今から男三人旅?


こ…心のオアシスがぁ~!!


「ではマサト様のご無事をお祈り申し上げております」


就活生にお祈りは禁句だから!


あ、そっか俺はもう就活生じゃないんだ。


そうだ、甘いことは言ってられない。


心を引き締めないと。


「さようなら!」


俺はティナに大きく手を振った。


ティナも小柄な身体精一杯伸ばして…ってあれ?


浮いてる?


羽だ!


荷物でも背負ってるのかと思ってたらあの膨らみは羽だったんだな。


本当に天使だ。


必ず迎えに来るよ!


こうして固い決意を胸に俺はマルスとジョンとテルーナへ向かった。

やばい…!ハーレムのはずが、早速女の子が枯渇…!笑

早急に対応したいと思いますので、お許し下さい!m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ