発情期☆
性的な描写があります。ほんの少しGL要素があります。苦手な方はご注意ください。
「ハッ!」
順調に二階層を進んでいた俺たちだったが、今日は珍しく俺の出番が多かった。
日々の筋トレの効果かこの二階層ならばチートがなくても対処できるようになったのは中々に嬉しい。
しかし、俺のところにモンスターが回ってくるということは、ミナリーの調子が悪いということだ。
確かに、今日のミナリーの戦いぶりは精彩を欠いている。
「大丈夫か、ミナリー」
襲ってきた牛に似たモンスター、ブルタウルスを駆逐し、ミナリーに駆け寄る。
「・・・ちょっと疲れてるみたいにゃ・・・」
珍しくミナリーが肩で息をしている。
風邪でも引いたのか。
「今日はここまでにしよう」
「はい、私もそれが良いと思います」
覚束無い足取りで歩いていたミナリーは、迷宮から出たところでとうとう倒れた。
「おい!・・・大変だ!」
急いでミナリーを家に運ぶ。
「うう~ん・・・にゃぁ・・・」
顔が赤くなり、苦しいのか身体をくねらせている。
瞳も潤み、少し体温も熱い気がする。
「オズさんのところに行ってくる。あの人なら良い医者を知ってるはずだ」
「はい」
俺はこの世界の医療水準を知らないが、あまり発達しているとは思えない。
ミナリーに何かあったらどうしよう。
焦りばかりが募る。
「オズさん!いらっしゃいますか!?」
「あれ~お兄さん、久しぶり~。どうしたの?そんなに焦って」
ガボさんと一緒にミケがいた。
オズさんは今広大な農場を見回りに行ってるらしい。
二人がいたのは幸いだ。
「そうか、事情はわかった。なら、すぐ医者を」
「いや、ちょっと待って。ミナリーちゃんっていくつ~?」
すぐに動こうとしてくれたガボさんをミケが制する。
「15だ」
「・・・ガボさん、アレかもよ~」
「・・・あ、あ~アレか・・・」
ミケの言葉にガボさんは何か思い出したように苦い顔で頭を掻いた。
「アレってなんだ?」
「ミナリーちゃんの様子見ても良い?猫人間の生態でちょっと心当たりがあるんだよね~」
ミケがガボさんの了解を得るように顔を覗くと、ガボさんも行ってこいというようなジェスチャーを返した。
「・・・頑張れよ・・・」
ミケ後をついて行こうとする俺の近くに寄ってきて、ガボさんは心底同情したような顔で呟いてきた。
な、何なんだ?
しかし二人の様子だとあまり緊急性のあるような雰囲気ではない。
二人の予想があたっていますように、と俺は心の底から祈った。
・・・その時までは。
「まだ苦しそうで・・・」
心配なのか、エリーゼは俺たちを迎えたあとも足早でミナリーの部屋に戻った。
「それで、アレって何なんだ?」
本人の前では言いにくそうなことなのだろうと、俺は部屋に入る前にミケを問いただした。
「あ~それはね・・・」
「ミ、ミナリー!あ、あっ、いけませんっ・・・!」
急に響いたエリーゼの声に俺は急いでミナリーの部屋に駆け込んだ。
「な、なんなんだ・・・!?」
「あ~やっぱり~」
俺の目の前に広がっていたのは、エリーゼの上に跨ったミナリーの姿だった。
エリーゼの胸元ははだけ、白くたっぷりとした豊かな胸がさらけ出されている。
その魅惑の果実の薄桃色をした頂にミナリーがしゃぶりついていた。
「美味しいにゃ~・・・」
「あぅっ、いけません、それは、ご主人様のモノっ!あぁっ!」
な、何故こんなことに・・・!
呆然としている俺にミケは全く動じず、説明し始めた。
「猫人間は13歳で成人した後、発情期がやってくるんだ~。ミナリーちゃんはこの様子だと初めてみたいだね。これからも何回も来るけど、理性が吹っ飛んじゃうようなことは最初の発情だけだから大丈夫だよ~。満足するまでしてあげれば治るから~」
道理でミナリーの表情は熱に浮かされたように目の焦点があっていない。
ただただ快楽を求めているようだ。
このままだとエリーゼが食われる。
俺は急いでミナリーをエリーゼから引き剥がした。
「エリーゼちゃんには僕から説明しとくよ~。ということでお兄さん頑張ってね~」
そういうと、まだミナリーに襲われたショックが抜け切れていないエリーゼを連れてミケは部屋を出て行った。
エリーゼから引き剥がされたミナリーは俺を見ると新たな獲物を見つけたとばかりに絡みつき熱烈に口付けをしてきた。
「・・・ん・・・んふ・・・レロっ・・・チュプッ・・・はあ・・・」
蕩けた表情を浮かべるミナリーに俺は腹を括り、ミナリーを抱き上げると自分の部屋の広い寝台にのせ、乱暴に服を脱がし、のしかかった。
いつもの可愛らしいミナリーはいない。
そこにいるのは、身体中から汗を噴き出し、半開きの口から透明な液体が溢れるのも構わず、瞳を潤ませながらオスを求める淫らなメスだ。
そんな妖艶なミナリーもこの上なく愛しいと感じるのは、自分のメスに対するオスの性なのだろうか。
「にゃあっ!もっと、ほしい、もっと、たくさんっ・・・!ミナリーにっ赤ちゃんんっ、ちょうだいっ・・・!」
発情したミナリーは誰と愛を深めているのか分かっていない。
何故なら今のこの行動は愛を確かめ合う行為ではないからだ。
種の存続のために子孫を残す。
我々動物に生まれたときから備わっている本能だ。
より人より獣に近い猫人間は発情期によって理性に邪魔されずその使命を全うしようとしているのだろう。
「・・・ああ!孕め、俺の子を!産んでくれ・・・!」
「にゃあああ!!」
生命の神秘に導かれるその行為を俺は素直に美しいと感じた。
それは明け方、ミネリーが糸が切れたように眠りについたときまで続いた。
俺も疲れきっていたが、身体がベタついて気持ち悪いのと昨日から放置してしまったエリーゼが心配で寝室を出る。
「あ、ご主人様」
リビングに降りるとエリーゼが心配そうに駆け寄ってきた。
「今、濡れタオルをお持ちしますね」
「ああ、頼む」
以心伝心とはこのことだな、と感心しながら俺は椅子に座って脱力した。
エリーゼが背中を拭いてくれる。
火照った身体に冷たいタオルが気持ちいい。
「峠は越えたみたいですね。ミケさんのお話だともう少し続くようなので、ご主人様もお休みになられた方が良いと思います」
エリーゼは俺のために軽い朝食を用意しながら、ミケから聞いた話を教えてくれた。
猫人間の発情期のためとはいえ、人並みに欲を貪った俺を軽蔑するわけでもなく、案じて動いてくれる。
こんな嫁は、この世でただ一人しかいない。
「今度、エリーゼのために時間を作る。エリーゼのためだけに」
そう言うとエリーゼは華が咲いたような笑顔を見せた。
「はい、ご主人様」
あー俺はこの笑顔が大好きなんだ。
寝室に戻って眠っていた俺は、女の呻くような声と石鹸で身体を洗うような水音で目が覚めた。
陽は高く登り、昼過ぎのようだ。
その音は隣で寝ていたミナリーから発せられていた。
起きていたミナリーの顔は赤く上気し、声が漏れないように歯を食いしばっている。
ダメだとわかっていながらせずにはいられないといった表情だ。
俺はそのまま狸寝入りを続けた。
ミナリーの手の動きが速まるにつれてミナリーの表情も余裕のないものに変わっていく。
「・・・みゃあッ・・・ッ!」
ミナリーの身体が痙攣し、荒い息をしながら脱力するまで俺はじっと眠ったフリを続けた。
「・・・起きたか?」
たっぷり時間をおいてさも今起きましたという顔でミナリーに声をかける。
「・・・ごしゅじんしゃま・・・ミナリーの身体へんにゃの・・・」
まだ身体の火照りは冷めていないようだ。
顔は赤くなり、瞳は今にも泣き出しそうに潤んでいる。
しかし、俺を認識しているということは理性は取り戻したようだ。
「どうして欲しい?」
「にゃぁ・・・ミナリーわるいこにゃっ・・・」
「ミナリーは何も悪くないよ、素直に言ってごらん」
俺はミナリーのふわふわしたピンクの髪をなでた。
「・・・ごしゅじんしゃまが欲しい、ごしゅじんしゃまっ!んんっ!」
先程のミナリーの痴態で既に臨戦態勢に入っていた俺はそのままミナリーに貪りついた。
「ごしゅじんしゃま!すきっ!だいすきにゃっあっ!」
昨日までのものとは全く違う今日のこの行為。
俺は人間だからだろうか。
どんなに激しい子孫を残すためだけの営みより、今の愛を確かめ合う行為の方がずっと心も身体も満たされていく。
二人の愛が弾けた頃、ミナリーの濃い発情も終わった。




