お風呂
ちょいエロです。苦手な方はご注意ください。
次の日、幸せの絶頂にいた俺は、まさかこんな地獄に突き落とされるとは思いもしなかった。
「にゃ~っ!」
「チューっ!」
猫がネズミを追いかけてる…わけではなく、ターランの森でミナリーがノマウスを追い詰めているのだが…。
「ミナリー強いですね~」
「…」
一方的過ぎる、圧倒的過ぎる。
ターランの森が初心者用のダンジョンではあるとしてもだ。
「たっのし~いにゃ~♪」
「チューっ!」
必死に逃げ回るノマウスに対して歌まで歌ってしまうこの余裕っぷり。
これはもはや虐殺だ。
目の前に広がるノマウスの死屍累々、屍山血河…ではなくドロップアイテムの山をエリーゼと二人で拾い集める。
喜ぶべきことであるはずなのに…。
「万年球拾いの俺の心の傷を抉ってくれるぜ」
学区ごとに参加しなければならなかった少年野球、今でも苦い思い出だ。
「もういいぞ、ミナリー。どう考えても余裕でクエスト完遂だ」
「は~い!あ~楽しかったにゃ!」
まだ動き足りないとばかりにピョンピョン軽やかにステップを踏みながら、シミターをぶんぶん振り回しながら近づいてくる。
「ストーップ!武器を振り回しながら近づくな!暴力反対!」
あぶねーつの!
「は~い。ヘヘーイ、今日はとっても楽しかったね」
明日はもっと楽しくなるよ。ね、ハム…じゃなくて。
「ヘヘーイ?」
「この子の名前なの。武器屋さんが言ってたにゃ」
いや、色々違っただろ。
あんなに必死に説明してくれた武器屋の主人が哀れに思えてきたぞ。
頭もハゲかかってたし。
幸薄そうなおっさんのためにここは一つ訂正しとくか。
…でも、大事そうにシミターを抱えてるミナリーの笑顔を崩すのは忍びないから、まあ良いや。
結局可愛い女の子は正義だ、大義のためにハゲてくれおっさん。
「アイテムノマウス63×100ディナール、クエスト完遂の報奨金が1000ディナール、当日の完遂でプラス700ディナール、計8000ディナールです。そして、ノマウスの討伐個体数が100を超えましたので、タカイ・マサト様のパーティーにターランの森二階層のゲートが開きました」
エリーゼを慣らすためあまり深く潜らなかったということもあるが、俺とエリーゼが一ヵ月弱通っても開かなかった二階層のゲートがあっさりと一日で開いてしまった。
これがランクCの実力。
実に頼もしいし、これだけの戦力は喜ばしい限りだ。
だが素直に喜べない自分もいた。
「…今更エリーゼの気持ちがわかったぜ」
今まで主に敵を倒すのは俺だった。
しかしこれからはミナリーに代わる。
前衛が必要で買ったのだから、何ら問題ない。
俺は後ろで守備を司るエリーゼを守りつつ、ミナリーの援護をする、計画通りだ。
問題は、俺もミナリーも武器が剣だということ、ミナリーが縦横無尽に動くので剣同士で連携がとりにくいのだ。
「ま、普通に考えればわかるんだけど、後方から援護できないんだよな」
手裏剣はあるけど、回収が面倒だから、あれは多勢に無勢などの非常事態の時用だ。
今更得物を槍に替えるのは無理だし、このままだと、俺がパーティーの一番のお荷物になってしまう。
奴隷にだけ戦わせて自分は高みの見物とかどんな悪徳主人だ。
「それだけは絶対に嫌だ!」
「ご主人様?どうかなさいましたか?」
風呂を沸かしながらブツブツ言っていた俺をエリーゼが心配そうに覗いている。
「い、いや何でもない…風呂が沸いたからミナリーを連れてきてくれ」
「はい」
今日はミナリーが来てから初めてのお風呂だ。
猫は風呂好きと風呂嫌いに極端に分かれる傾向があるからな。
ミナリーはどっちだろうか。
「嫌にゃ!」
ありゃりゃ、こっちだったか~。
「温かくてとても気持ちいいですよ」
エリーゼが風呂の良さを切々と語っている。
風呂好きだもんな。
「怖いにゃ」
「怖い?もしかして泳げないのか?」
「泳げるもん。でも川はこんな煮えたぎってないにゃ!」
この世界には温泉とかないのか?
「そんなに熱くないから大丈夫だ。まず身体を洗おう」
お湯に浸したタオルを石鹸で泡立てる。
石鹸で身体を洗われたことはあるらしく、大人しく従ってくれた。
豊かな胸の膨らみから桃のようなお尻、そこから生えた尻尾までしっかりと念入りに磨いていく。
「みゃうっ…」
デリケートな尻尾を優しく撫でるとミナリーから鳴声が漏れる。
「私はご主人様のお身体を洗いますね」
俺がすっかり楽しんでいることを理解しているので、エリーゼはミナリーを洗うことはせず、俺の背中を流してくれる。
フニっ。
至高の感触に俺のミナリーの身体に集中していた意識は一気に背中に向いた。
フニュックチュッ。
背中を洗い終わり、ミナリーを洗っている俺を邪魔しないように後ろから手を伸ばして俺の前半身を洗うという暴挙にでたエリーゼは意図せずそのけしからん凶暴な果実を俺の背中に押し付けることになった。
その上手を動かす度に双丘がこすりつけられて石鹸の泡立つクチュクチュとした音が鳴り響く。
これは、絶対ワザとだろ。
ミナリーを丹念に洗い上げたあと、エリーゼのこともしっかり、丁寧に、特に魅惑の果実はしつこいくらいに洗い上げた。
「ふ~」
ゆっくりと風呂に浸かる。
あ~最高の時間だ。
続いて入ってきたエリーゼを抱き寄せる。
「ほら、ミナリーもおいで」
しかしミナリーはまだ頑なに湯船に入ろうとしない。
「あっ」
俺はお湯の中でエリーゼにいつもの悪戯を開始した。
「は~風呂は最高だ。な、エリーゼ?」
「は…はいっ…」
エリーゼの顔はお湯の温かさとは別の理由で赤くなっている。
さっき俺のムスコをそわそわさせた仕返しだ。
「…そんなに気持ちいいにゃ?」
「…とっても気持ちいっ…いですよ」
そんなエリーゼの様子に触発されたのか、ようやくミナリーが恐る恐る湯船に浸かってきた。
それを見届けて俺はエリーゼへの悪戯を止めた。
「どうだ?」
「う~ん、よくわからないにゃ」
ミナリーは何故エリーゼがそこまで気持ち良さそうな顔をしていたのかが理解できないようだった。
それでも慣れたのか、しばらくするとバシャバシャとお湯で遊び始めた。
公衆浴場でやったら怒られるぞ…。
まあ後一歩で風呂の魅力がわかるだろう。
しかし動き回る度にプリンプリン揺れるお椀型の胸やフリフリする尻尾がたまらんな…。
身体に付いた水滴や水しぶきが眩しい。
ふとエリーゼとミナリーと三人で海水浴に行く妄想をしてしまった。
ビキニのけしからん二人の身体に白いドロっとした日焼け止めクリームを塗り塗りするのか。
夜は、誰もいない砂浜で波の音を聞き、満点の星空の下で二人を愛しまくる。
さ、最高だ。
この世界には水着というものはないのだろうか。
風呂から出て三人で寝室に戻り、十分に高まっていたエリーゼからガッツリいただいた。
俺の海水浴妄想もヒートアップし、フィニッシュに日焼け止めクリームを再現してしまった。
うむ、たまらんな。
もちろんミナリーのこともしっかり堪能し、二人を両腕に抱えて眠りについた。
「ご主人様」
翌朝、支度をしているとエリーゼが少し光沢のある紫色の布を持ってきた。
「お、完成したのか!」
「はい、染めてご主人様が以前ご所望なさったマントと同じようなデザインにしました」
「マジか!ありがとな!」
本当だ、前服を見に行った時に俺が無意識にガン見してしまったド○クエの主人公のマントそっくりだ。
羽織ってみると、軽い。
動くとマントがばさっと翻る…俺の中二病が滾ってくるな。
「それで、実はキルクが…」
「もうないのか?」
「はい、使い終わってしまいまして」
「そうか」
今日は予定変更してマユミール狩りだな。
「ええ~!マユミール退治…」
ミナリーのテンションがみるみる急降下していった。
まあわからんでもないがな。
俺も憂鬱だ。
ギルドに行ってマユミール退治のクエストを申請する。
今回はロムルス農場ではない。
俺の馬にミナリーを乗せて、二頭で向かう。
馬もいつまでもオズさんに借りてるわけにはいかないし、そろそろ自分たちの馬も買おうかな。
「よろしくお願いします」
農家の人に網を借りていざスタートだ。
以前より断然早く狩れるようになっている。
前より成長しているという実感は嬉しいものだ。
それはエリーゼも同じなのか、俺たちは予想外にあまり苦痛を感じることなく黙々とまゆミール狩りに専念できた…一人を除いて。
「…つまんにゃ~い!!」
さっきから気怠げにマユミールを狩っていたミナリーが2時間程経ってついに爆発した。
「ま、待て待て!シミター…じゃなくてヘヘーイをしまえ!」
作物に傷つけたらオズ神様の祟りにあうぞ!
「農場で武器をブン回すんはいぐねえなあ」
キター!!
「オ、オズさん、なぜここに…?」
ここロムルス農場じゃないよね?
「ちーと知り合いんとこに呼ばれてよお…ん、この武器…?」
オズさんはミナリーが振り回していたヘヘーイを素手で掴んでいる。
そのままじっくりヘヘーイを見つめだした。
心なしかへヘーイが萎縮してるように見える。
初めてヘヘーイに同情した。
「まあいっが。くれぐれも作物に傷つけたらいがんよお」
まるで邪気のない笑顔でこう言ってオズ神様は去っていった。
祟りは免れたようだ。
流石のミナリーもオズさんの実力を感じ取ったのか、それからは黙ってマユミール狩りに専念していた。
途中蝶蝶らしき虫に気を取られ追いかけたりしてはいたが。
日が暮れるころには100匹狩ることができた。
ギルドに届け出て、食材を買い帰宅する。
「今度はエリーゼの防御服を作ってくれ」
俺が先に作ってもらってしまったが、一番必要なのはエリーゼだ。
何しろ防具がないのだから。
「はい」
今日も余裕があったので、風呂を沸かす。
ミナリーはすっかり慣れてくれたようだ。
「はあ…はあ…」
大人の夜の運動を終え、脇に置いてある水差しからコップに水を注ぎ喉を潤し、伸びきってる二人にも飲ませる。
少し落ち着いたようだ。
俺絶倫なのかな。
クタクタの二人の様子を見ながら、まだまだ余裕の我が身に不安を感じた。
無理をさせるつもりはないので、二人を抱え横になる。
「…今日のおじさん、怖かったにゃ」
オズさんのことか、強い人にはより強い人が分かるというが、ミナリーは本能的にオズさんに秘められた実力を感じ取ったのだろう。
「ヘヘーイも怖がってたにゃ」
すると隣のミナリーの部屋からベックションとおっさんのようなくしゃみが聞こえた。
「…今なんか聞こえなかったか?」
「う~ん…わかんにゃい…」
もうお眠なのかミナリーはウトウトしている。
「…私もわかりませんでした」
ミナリーより体力が乏しいエリーゼも少しぼうとしている。
俺の気のせいだったのかな。
何やら胸騒ぎが収まらないまま、俺も眠気には勝てず意識を手放した。




