オークション☆
露骨な性描写があります。苦手な方はご注意下さい。
「ふう~、準備完了っと」
俺の部屋の隣に新たにベッドと箪笥を運び入れ、ミナリーの部屋を作る。
「今晩で、二人きりの生活も終わりだな」
「…」
すると、少し無言になったエリーゼがぴとっと俺の背中に抱き付いてきた。
「どうした?」
振り向くとただ求めるように俺を見上げてくる瞳とぷっくりとしたピンク色の唇が見えた。
「…んっ…」
俺は誘われるようにそのまま口付けた。
その後は止まらなかった。
ただただ獣のようにオスとメスになって求めて求めて求め合う。
ギシッギシッギシッと軋むベッドは激しさのあまり壊れてしまいそうだ。
エリーゼの汚れのない真っ白な肌は赤く上気し、汗やら何やらで濡れ、律動に合わせて水滴が弾け飛び、たわわな胸は激しく揺れる。
俺はいつもの遠慮を捨て、エリーゼはいつもの恥じらいを捨てた。
こんなに本能のままに貪り合うのは初めてだった。
快感に悶える表情も、喘ぐ声も、吹き出る汗も、美しい身体も、エリーゼの何もかもが狂おしいほどに愛おしい。
「…ああっ…!!」
エリーゼの身体がビクンっと大きく跳ねたかと思うと、足の先までピンっと伸びてピクッピクッと小さく痙攣し、ふっと脱力した。
気を失っているようだった。
「エリーゼ、大丈夫か…?」
心配になって声をかけると目を覚ました。
「…溶けてしまったみたい…」
「え?」
瞳はまだトロンとしている。
一瞬の間に夢でもみたのだろうか。
「…ご主人様とこうしていると心地良くて気持ち良くて溶けてしまいそうになるんです…」
「…俺もだっ!」
「ああっ!ご主人様っ…!」
残された二人だけの時間を惜しむように体力が尽き果てるまで愛し合った。
明け方に泥のように眠り、昼過ぎに起きて身体を清め支度をする。
「あ、そうだ、エリーゼ。これ着てくれる?」
いつもの黒い服を身に付けようとしていたエリーゼを呼び止め、俺はカバンから新しい服を差し出した。
白く透けた素材の巻きスカートに、上半身はビキニのような形だ。
胸元には金糸で刺繍が施され透けないようになっており、下半身も短パンを履く仕様になっている。
肩紐は同じく白く透けた生地で二の腕にかかるように出来ていて、肩出しの中東の踊り子のようなデザインだ。
しかし白を基調とした服なので上品な雰囲気が醸し出されている。
エリーゼが着るとエリーゼの容貌と相まって神秘的な美しさだった。
「うん、良い感じだ」
「こ、こんな上等な服、よろしいのですか?」
当の本人は慌てている。
まあ確かに高かったが、この服はエリーゼが稼いだお金で買ったようなものだ。
遠慮することではない。
「うん、前の黒も良かったけど、やっぱりエリーゼには白が似合うな」
「でも、二着もいただけません。夜着も頂いていますのに…」
「前の黒はミナリーに譲ることにしよう。それで良いだろ?」
黒い服は戦闘で動きやすいことを考慮して買った服だった。
そう考えるとエリーゼよりミナリーの方に向いているだろう。
お下がりになって悪いが、同じくらい上等な服だし、エリーゼが丁寧に着ていてくれたおかげで、状態はすこぶる良い。
「こんな素敵な服…ありがとうございます」
「気に入ってくれて良かった。さあ行こうか」
オークションは日暮れから始まる。
参加費を払い、内覧会の時のように地下に降りると、前の区切られたスペースではなく、大きなホールに案内された。
そこには以前よりも遥かに多くの人と濃いアラワールの匂いが充満していた。
「ただいまより獣人オークションを開催します。No.1 狼人間 男 16歳です」
紹介が終わるとウオーと叫んでその奴隷は木の棒を振り回した。
どうやらアピールタイムをもらえるらしい。
内覧会に呼ばれていない人はここで初めて商品を見るのだから、当然といえば当然か。
「30万ディナールから、始めてさせていただきます」
「30万ディナール」
「31万ディナール」
「32万ディナール」
「33万ディナール」
「34万ディナール」
「…」
「34万ディナール、他にいませんか?」
「…35万ディナール」
なんか歯切れが悪いな。
オークションってもっと活気のあるものだと思ってたよ。
「狼人間の剣士ってあいつ?」
「いやまさか、目玉は後の方さ、普通」
ついつい他の参加者の会話を盗み聞いてしまう。
なるほど、後の方が大物だからみんな出し惜しみしてるわけか。
ミナリーが最初の方に出てきてくれることを祈る。
「続きましてNo.18 猫人間 女 15歳です」
俺の願いは虚しく、ミナリーが登場したのは後半だった。
会場に異変が起き始めたのはその頃だった。
体調不良を訴えるものが続出し、人数は大幅に減っていた。
まだまだアラワールを実用化するのは無理そうと見ていいだろう。
俺とエリーゼはなるべく吸わないようにイギリス紳士よろしくハンカチを口元に当てていたが、それでも気分が悪くなってきた。
しかしふと周りを見回すと残っている人たちは皆口元に何か当てている。
よく見ると内覧会に呼ばれた人たちだ。
もしかしたら上玉の人たちには事前に注意でもあったのだろうか。
目の前ではミナリーのアピールタイムが始まっている。
軽く宙返りをしながら、剣の形をした木で素振りをする。
め、めちゃくちゃに速い…。
オ~という歓声が響く。
マルスなんて目じゃないじゃん。
いやしかし待てよ。
この会場にはアラワールが焚かれている。
多分、本当の実力はこの7割くらいと見ておいた方が良いだろう。
だが、そんなこと他の参加者が知る由もなく…。
これ非常にまずいじゃないか。
「50万ディナールからスタートです」
「60万ディナール」
おい、誰だよ、最初から飛ばしてる奴は!
こっちも負けるわけにはいかねえ。
「70万ディナール!」
「80万ディナール」
「90万ディナール!」
俺ともう一人の一騎打ちにオオ~と会場は初の盛り上がりを見せる。
手を挙げかかった他の参加者たちは10万ディナールずつ上げていく俺たちに引いて早々にリタイアしてしまった。
「…95万ディナール」
「105万ディナール!」
「…105万ディナール、他にいませんか?」
「…」
「では105万ディナールで落札です」
ヒューと歓声と拍手が沸き起こった。
何とか落札できたが、思った以上に値段がつり上がってしまったな。
すぐムキになる俺の悪い癖だ。
しかし何はともあれ落札できて良かった。
係の人に案内されて奥の部屋に移動する。
「ふん、あんな不細工に105万ディナールもかけるなんて、とんだブ専だな」
誰だコノヤローと思ったら、先ほど俺に競り負けたヤツだった。
何だ、負け犬の遠吠えか。
思いっきりシカトしてやった。
節穴なのはてめえの目の方だ。
女奴隷に大事なのは髪の色じゃねえ。
顔の作りとカ ラ ダ だ!
性格と戦闘能力はその次だ!
奥の部屋に入るとミナリーがいた。
「まことにありがとうございました…ミナリー!」
「ふにゃ~」
どうやら少し疲れたらしく床にゴロンと寝転がっている。
アラワールのせいだろう。
ガボさん曰わく、アラワールを吸うと強制的に実力以上の力を発揮させられるため、体力を酷く消耗するらしい。
「では、契約を行いましょう」
よく見ると、この部屋には見覚えのあるハイエルフの機械があった。
「騎士団じゃなくてもできるんだな」
「奴隷を商いできる者は限られていますからね。騎士団の許可をきちんと取らなければなりません。違法奴隷を取り締まるために、契約は奴隷商館で行うか、奴隷商人から委託された人間と共であれば騎士団でもできます」
そういえばエリーゼと契約した時はミケが委託されて騎士団で契約できたんだったよな。
ミナリー 女 猫人間 奴隷(タカイマサト所有)
契約が終わり、例の変態セット…ならぬ枷を渡される。
「あ、そうだ。このお香、欲しいんだけど、もらえるかい?」
そういうと係の人はビクッとすると、
「しゅ、主人に聞いて参ります」
と奥に引っ込んでしまった。
そう、すっかり忘れていたが、これが今回の俺の最大のミッションだった。
しばらくすると、奴隷商人がやってきた。
「この度はオークションにご参加いただき、まことにありがとうございました。確かオズ様のご縁戚の方でしたね」
「はい、そうです」
「このお香について何かご存知のことはございますか?」
「いや、何も。ただ前より奴隷が生き生きしてるように見えるので、欲しいと思いましてね」
「お気づきでしたか…良いでしょう、差し上げます。タカイ様は今回のオークションの最高金額での落札者でしたから、サービスいたします」
「あ、もう終わったの?」
「はい、たった今滞りなく。タカイ様のおかげで実に盛り上がった良いオークションが出き、次回への弾みもつきました。また奴隷をご入用の際にはぜひ当館へお越し下さい」
「そうさせてもらいます」
ふと、もしかして俺と競ったあの男はサクラだったのではないかという考えがよぎるが、サクラにしてはがっついてたし、そんなことはないだろう。
俺が最高金額の落札者ということはその後も大して盛り上がることはなかったということか。
この奴隷商人にとっては不本意な結果かもな。
ひとまず、アラワールも手に入ったし、ミナリーも落札できた。
目的は全て達成できたな。
ミナリーを連れてオークション会場を後にする。
「改めてよろしくな。俺が主人のタカイマサト、冒険者だ。こっちがエリーゼ」
「初めまして、奴隷のエリーゼと申します。これから宜しくお願いしますね」
「ミナリーです、よろしくにゃ」
ミケといい、猫人間は敬語が苦手なのか?
まあ舌っ足らずな喋り方が可愛らしいから許す。
ミナリーを俺の馬に乗せて、家へと向かう。
背中に当たる身体がエリーゼと違うのに違和感を覚えるが、中々に良い膨らみだ。
内覧会の時に見た引き締まってぷりんっとしたお尻を思い出す。
今晩が実に楽しみではないか、ふはははは。




