フロリア☆
性的な描写があります。苦手な方はご注意ください。
「さーて、どうするか。」
手元にあるお金は約20万ディナールか…。
今俺が身につけているもので金目のモノといえば腕時計だが、時間の数え方が違うので珍しいと思われても価値があるとは思ってもらえないだろう。
中の歯車や構造にはカルペンさんあたりが興味を示しそうだが、腕時計は分解するには小さすぎるしな。
この小ささに技術が詰まってるんだけどなぁ。
元の世界の形の下着を売り出すのはどうだろうか。
いや、ゴムがない。
この形の下着はゴムがあってこそ役目を果たせるのであって、ゴムがなければただの三つ穴の開いた布だ。
まだふんどしの方がマシだろう。
他に俺が前の世界から持ってきたのは、筆記用具とティッシュとハンカチか…。
紙はパピルスみたいなものはあるが、使ってる人自体あまりみない。
識字率も現代の日本に比べれば大分低そうだし、一般市民はそんなに筆記用具を使う機会はないだろう。
ティッシュは流石にないが、手ぬぐいみたいなのはあるし、現代人の俺としては汚く感じるが、正直こっちの方がエコといえばエコだ。
現代グッズ、使えねえ。
前世界のモノでこの世界をあっと言わせてやろう、ふはははは計画はあっという間に頓挫した。
やはり郷に入れば郷に従えということなのか。
オークションまであと二週間か…煮詰まってきた。
「ご主人様、夕御飯ができました。」
リビングでぶつぶつ考えていると、エリーゼが呼びに来てくれた。
「ああ、ありがとう。」
新しい家に住むようになってから、エリーゼが食事を作ってくれるようになった。
いつか俺と二人で暮らす時のためにこっそり宿屋の女将さんやオズさんの家のメイドさんに習っていたらしい。
…主に俺が乗馬で補習になっている間に。
土地柄、果物が豊富に食卓に並んでいる。
果物は嫌いじゃないから、俺としては悪くない。
そして、
「お、マジか!」
エリーゼはよく俺の好きなモノを聞いてくる。
もちろんエリーゼの知らない日本の食べ物がほとんどだが、エリーゼは俺の拙い説明を一生懸命理解しようとしていた。
「ガルムで味付けをしました。ご主人様のお口に合うと良いのですが…」
ガルムはこの地域で一般的に使われる調味料、魚醤で、調味料を買いに行った時に俺が味見して一番醤油に近い味だと思ったものだ。
クランカ鳥の肉が美味そうに揚げられている。
そう、唐揚げだ。
「…美味い!」
サクっとした衣と噛む度に口に広がる甘い肉汁が堪らない。
うかつにも涙が出そうだ。
そんな様子の俺をエリーゼがニコニコと見つめている。
「本当に美味い、ありがとな、エリーゼ。」
「ご主人様に喜んでいただけて嬉しいです。」
胃袋でもしっかり掴まれてしまった。
ご飯を食べてエリーゼが片付けをしている間に、俺が風呂を沸かす。
湯船を欲張って普通の3倍ほどの大きさにしてしまったため、水を運ぶのが大変だ。
だが、しかし!
この先にある楽しみを思えばこの苦痛は全て喜びである!
大汗をかきながら火を起こし、湯加減をチェックする。
うん、良い塩梅だ。
「エリーゼ、風呂沸いたぞ。」
「はい。」
エリーゼのワクワクがこちらまで伝わってくる。
エリーゼも風呂が好きなようだ。
エリーゼに頭や身体を洗ってもらい、俺もエリーゼの身体を洗う。
ええ、それはもう丹念に入念に。
「エリーゼ、こっちにおいで。」
俺はエリーゼを後ろから抱きかかえるように湯船に浸かった。
広い湯船で何故わざわざ密着するのかって?
一つ教えてやろう。
男の半分は性よ…優しさでできています。
エリーゼの白く滑らかな背中ごしに柔らかな爆乳が見える。
た、たまらん。
我慢出来ずに後ろから揉みしだく。
俺のいたずらに呼吸を荒くしながらもエリーゼは文句も言わず、されるがままになっている。
上気した頬に潤んだ瞳、濡れた肌が何ともエロい。
「…ご、ご主人様っ」
上から下へとどんどんエスカレートしていく俺の悪い両手に耐えられなくなったエリーゼが思わず身体を浮かせた。
俺もその勢いに乗ってエリーゼの腰を抱え、立ち上がった。
ザバンっという音と同時にエリーゼはお尻を突き出したまま、風呂の縁に両手をつく。
水に濡れたシミ一つない真っ白で綺麗な肌が背中からお尻に向かって美しい曲線を描いている。
惚れ惚れする艶かしさだ。
「ああっ!」
はい、我慢できませんでした。
ジャバっ、ジャバっと俺の足元で溢れるお湯と同じリズムでエリーゼの豊かな胸が揺れる。
この眺めも最高だが、顔が見えないのが残念なので途中から向き合って座る。
「あっあっあっ…お湯がっな…かあぅっ…!」
悔いはない、たとえのぼせても。
そしてその後、しっかり水分補給をした後に、ミケがくれた素晴らしいベッドでもう一戦交えるのであった。
翌日、エリーゼを家に残し、俺は冒険者ギルドに向かった。
エリーゼには時間になったら山下まで迎えに来るように言ってある。
冒険者ギルドで一通り掲示板を確認してからポストをチェックする。
ポストというのはその町に定住、もしくは長期滞在する冒険者に貸し出されている依頼箱だ。
ベレーヌ家から頻繁に依頼を受けることになりそうなので、俺も一応借りることにした。
「一件入ってるな。」
やはりベレーヌ家からの依頼だった。
内容は町に出かけるお嬢様の護衛、1000ディナール。
ああ、あのお嬢様か。
割も良いし俺は依頼を受けることにした。
「お久しぶりです、お嬢様。」
「お、お嬢様って呼ばないくださいっ失礼だわ!」
「では何とお呼びすればよろしいでしょうか?」
「フロリア…。」
そう言うとお嬢様は顔を真っ赤にして俯いてしまった。
えーと呼び捨ての方が失礼な気がするが、そこは突っ込まないことにする。
前回の護衛の時から薄々感じてはいたが今は鈍い俺でも流石にわかる。
このお嬢様に俺は惚れられているらしい…。
話は最初にベレーヌ家を護衛した時に遡る。
盗賊に襲われた際に外に出てきてしまったお嬢様を助けたことがあった。
原因はあれだろう、むしろあれ以外ない。
二回目に護衛をした時には既にお嬢様に露骨に贔屓され、常に馬車の横に馬を並べながら護衛したのだった。
そして今回の仕事はというと、お嬢様が町を散策するのを俺が一人で護衛するという内容。
…デートを仕組まれたようにしか思えないが、割も良いしベレーヌ家とのコネクションは大事にしておきたいので、丁重に引き受けることにする。
乙女の純情を踏みにじるようで少し悪い気もするが、背に腹は代えられない。
たわいもない話をしながらお嬢様の買い物に付き合う。
楽なように見えるだろうが、俺のこの世界での無知さがいつばれるかこちらはヒヤヒヤしっぱなしだ。
しかしお嬢様から色々な情報を得られて有意義な一面もある。
「最近はどれが一番売れているの?」
「こちらの商品をご購入される方が多いです。今首都アーモでも話題の品でして。」
「そう、男性の方が買われるのかしら。うちの店の女性の奴隷に着せてみても良いかもしれないわね。」
ほう、流石に南部最大の都市ケードラを二分する商店の一人娘だ。
さりげなく市場をチェックしているらしい。
「マ、マサトさん!これどうかしら…?」
と思うと先程までの冷静に分析する姿はどこへやら、新しいドレスを身体に当てて俺におずおず聞いてくる。
しまった、迂闊にもときめいてしまった。
「よく似合って素敵ですよ、フロリア。」
そういうとフロリアは顔を真っ赤にさせて少し口角を上げたが、すぐに無理矢理怖い顔に戻してそっぽを向いてしまった。
「お、お世辞を言われても嬉しくありませんわっ。」
そう言いながらも、最後にはしっかり購入していた。
フロリアが会計をしている間、ふと見上げるとガラスケースに入ったローブを見つけた。
「あ、エルフのローブ!」
この店にもあったのか。
やはりここでも商品ではないらしい。
「どうかしましたの?」
会計を終えたフロリアが俺の視線の先を追った。
「エルフの魔法が組み込まれたローブですわね。欲しいのでしたら無駄ですわよ。私も交渉したことがありますが断られましたわ。」
「入用だったのですか?」
「エルフ関連のものはいくらあっても損はありません。絶対数も少ないですし、いくら積んでも欲しい人ばかりですわ。」
そうだよなぁ…待て。
これはもしかしてビジネスチャンスじゃないか?
新しい家に引っ越してから、俺は一人で仕事をしている。
それは何もエリーゼの戦闘能力だけの問題ではない。
今エリーゼにはエルフの衣装を作ってもらっているのだ。
自分たちの戦力の一部にするつもりだったが、これで今目下悩みの種である金策が全て解決するかもしれない。
「実はここだけの話なのですが…私も冒険者をしておりますから、各地にツテがございまして、エルフの衣装を手に入れることができるかもしれません。フロリアがお望みなら仕入れて参りましょうか?」
「…本気で言っているの、あなた。」
一瞬驚いた顔をしたフロリアだったが、すぐ冷静な表情を取り戻し疑いの目でこちらを見てくる。
「…まあいいわ。乗ってみましょう。本物であったら、お金に糸目はつけないわ。ただし、私これでも目は肥えているの。もし偽物を掴ませるつもりだとしたら、例えマサトさんでも容赦しないわ。」
「もちろん、裏切るようなことはありません。」
容赦しないってどういうことなんだろう、ちょっと怖いが、これは大金と信用の両方が手に入るビッグチャンスだ。
家に戻ったら、エリーゼに色々と相談しなければならない。




