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乗馬☆

後半、性的な描写がございます。苦手な方はご注意下さい。

朝起きて、顔を左へ傾けると長い睫毛に縁どられた瞼がぱちっと開いた。


「…おはようございます、ご主人様。」


「おはよう、エリーゼ。起こしちゃった?」


「いいえ。」


ふんわりとエリーゼが微笑む。


あ~朝からなんて幸せなんだ。


このささやかな幸せを一日でも長く続けられるように、今日も頑張ろう。


柔らかなエリーゼの身体を抱きしめ活力を充電しながら、俺は戦わねばならない敵の姿を思い浮かべた。


「…それは、お前っだあっ!!」


今日も地道にロムルス農場に通い、白い飛行物体相手に格闘する。


最初の三日程は凄惨たるものだった。


初日の二時間で9匹取れたのだから、四時間で18匹、六時間で27匹…タイムリミットである一週間までに100匹はいくな、なんて計算をしていた俺は愚かだった。


人間には集中力というものがある。


そして集中力には限界があるのだ。


平均して二時間に一回くらいの割合で鱗粉を浴び、休憩を余儀なくされた(主に俺が)。


何度か樹木を斬りつけてしまい、あの優しいオズさんにものすごい剣幕で怒られた。


やっぱりオズさんってガボさんの父親なんだな…怒った顔がそっくりだ。


そんなこんなで最初の三日間で採れたキルクの数は30ちょっと。


これは初めての罰金かもしれないと俺は一気に100匹もクエストを受けたことを後悔した。


しかし徐々に変化が訪れた。


マユミールの速さに目が慣れ始めた。


これは大きな変化だった。


目が速さに慣れたらその速さに追いつくように腕を振る。


目測の正確性というものは全てのスポーツに共通して言える大事な要素だ。


これを誤ればバスケットボールでシュートは入らないし、野球でスイングしてもバットに球は当たらない。


動体視力及び深視力の向上。


これがマユミール退治三日目を終えた頃から俺たちに起こり始めた変化だった。


マユミール退治に余裕が出てきた俺たちは同時にミケたちに乗馬を習うことにした。


午前中マユミール退治、午後乗馬という具合だ。


そこで俺は乗馬のレッスン中、自身とエリーゼに起きた変化についてミケに尋ねてみた。


「それはそうだよ~。だから大昔マユミール退治は初心者の必須タスクだったらしいよ~。」


「大昔?今はやらないのか?」


「う~ん、効率が悪いからじゃん~?武術も発達したし、武器も良い物があるしね~。


でも基本はやっぱりマユミール退治だって、僕のパパは言ってたよ~。


基礎を作るには単純なことを繰り返して身体に覚えさせるのが一番、ってね。」


「…一理あるな。」


「乗馬もねっ!」


「え、ちょっ!もう走らせるなっ!ケツがイテえって言ってんだろが~っ!!」


こいつはドSだ、間違いない。


「いつも悪いな。」


乗馬の特訓を始めてから俺とエリーゼにはある習慣が出来た。


「いえ、お加減は如何ですか?」


エリーゼのマッサージである。


力加減、治癒魔法、そしてエリーゼがマッサージをしてくれているという事実…


「…最高だ。」


「あっ…。」


そう答え、俺は俯せの体勢から反転してエリーゼを抱きかかえるとそのままベッドに押し倒した。


「んっ…。」


口づけを交わし、見つめるとエリーゼは照れたような微笑みを返してくれる。


「今日もお疲れ様でした…。」


「ああ、お疲れ。」


俺は今からがメインディッシュだけどな。


ギリギリ七日目に100匹目を駆逐出来、俺たちはギルドに向かった。


「クエスト完遂100ディナールですね。キルクは買い取らなくてよろしいんですか?」


「はい、大丈夫です。」


それにしても、いくらキルクを売ってないとはいえこの労力で100ディナールか…。


今お金に余裕があるといってもそれは護衛や盗賊退治でたまたま得たお金である。


ランクHの俺には不相応なクエストであったわけで、これからはこうやって地道に低ランクのクエストをこなしていかねばならない。


その上、今は二人である。


その日暮らしなんてことがあってはならない。


俺は考えた。


「My Favorite Thing」の旋律が頭の中を流れる。


そうだ、家を買おう。


「家~??」


その日、乗馬訓練の場で早速ミケに聞いてみることにした。


「場所に依るけど、最低50万ディナールは必要だよ~。」


ぐっやはりそれぐらいするのか…


しかし俺の手持ちはあのリアンの塔事件のおかげで70万ディナールほどあった。


というか、家一軒分の資産を持ち歩いていたのか俺は!


それはそれで危ない。


一部を不動産に変えておくのも悪くないだろう。


それに正直これだけの大金を持って眠るのも疲れてきたところだ。


多少不便でも良い。


安全、安心、そしてエリーゼ相手にハッスルした後でも、


「お兄さん、今日もお盛んねぇ~」


なんて宿屋の従業員に言われない生活、いや性活をしたい!


「安心、安全…あ、エリーゼちゃんってエルフだよね~…お兄さん、明日から二日空けられる~??」


「おおう。」


「良い物件があるかもね~」


そういうとミケは唇の右端をニッと上げてウィンクした。


「あ、今ドキっとしたでしょ~??」


くっそ、不覚にもときめいた上にバレた。


可愛いのは今だけだからな、早く声変わりしやがれ。


しかしミケ様には大変お世話になっているので、決して口には出しません。


実際にめちゃくちゃ感謝している。


こうやってからかってくる時以外はな…。


「ご主人様~!」


おお!!女神だ!!


まさしく女神降臨だ!!


「エリーゼ!」


エリーゼは颯爽と馬で駆けてきて華麗に飛び降りた。


あれ…?俺より上達早いんじゃないか…?


「お兄さん負けちゃってるね~」


妙な空気をエリーゼがぶち壊したのが気に食わないのか、ちょって口をすぼめていたミケがここぞとばかりに口撃してきた。


うるせーよ、しょうがねぇーだろ、元々は運痴なんだからよ。


剣道は長くやってたから何とか様になったが、球技なんて自動ボウリングピンと呼ばれてたんだからな。


ドッジボールで当てられ倒れ、サッカーでボールすかして倒れ、野球でキャッチしそびれ倒れ…。


ヤバい…目の奥ツーンとする…。


一人で乗れるようにはなったが、馬が暴れるといけないので、ミケと二頭で宿まで帰る。


エリーゼは遠慮して俺の後ろにしがみついている。


本当はエリーゼの方が巧いから俺が後ろに乗るべきなんだけどな…。


そこは男の意地ってもんです、はい。


そして何といっても胸の感触が背中に…!


あ、相変わらずけしからん身体だ。


これから堪能してやる、フハハハハ!


「じゃあ、お兄さん、支度しておいてね~。また明日~」


馬はミケが連れ帰ってくれた。


ふとエリーゼを見ると何となく落ち込んだ顔をしている。


ミケが帰ったのが悲しいのか…まさか…!


嫌な予感に冷や汗をかきながら部屋に入る。


その途端、エリーゼが床にひれ伏した。


「も、申し訳ありません…ご主人様…!」


「え?え?え?何!?」


俺は突然の成り行きに大パニックに陥った。


「あ、あの、ご主人様の乗馬はお上手です…!」


「…はい?」


「あの、私はエルフなので、動物ですとか…植物ですとかに交流できやすいのです…。

ですから、ご主人様が下手なわけではないのです…っ!」


そ、そんなこと気にしてたのかー。


もっと悪い想像をしてた俺はホッとため息をついた。


「ひとまず顔を上げて。」


エリーゼはおずおずと顔を上げた。


その潤んだ上目遣い、反則です。


「俺は全く気にしてないよ、それよりも俺の仲間が褒められて嬉しいくらいだ。」


「…ご主人様…っありがとうございます…っんんっ!」


その綺麗な湖水色の瞳が潤んで光を増してきた。


俺はその健気な姿に堪らず抱き上げ激しく口内を犯した。


そしてそのままベッドに倒れ込んだ…。


ハアハアという二人の荒い息遣いと規則正しく響く木の軋む音。


今日はやけにエリーゼが積極的だった。


ようやく慣れてきたはずの俺だったが今日は途中から全く余裕が無くなってしまった。


言葉にならない声を上げていたエリーゼが下から俺の顔を必死に見つめてきた。


「…んあっご…ご主人さまぁっ…あ…」


「…どっ…どうした?」


「わ…わたし…いっ…身も心もっ…ご主人さまでいっぱいでっ…捨てないで…ひあっ!」


前言撤回。


エリーゼ相手に俺は余裕なんて最初っから無かった。


こんな愛しい者に俺の感情(と腰)は振り回されっぱなしだ。


俺の激しさに振り落とされまいと俺の首と腰に絡みついている手足がギュっとしがみついてくる。


もう止められなかった。


そして翌日、寝不足になった俺を迎えに来てくれたミケが冷ややかに見つめてくるのだった。

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