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プロローグ

初執筆・初投稿作ですー。

色々拙い部分もあるでしょうが大目に見て楽しんでいただけたら幸いですー。

ではどうぞー!

 レース竜。 

 それは竜には違いないが、伝承の中にあるような竜では決してない。炎を吐くこともなければ人間を無惨に襲う事もないし、自然を操る不可思議な力を駆使するようなことも一切ない。

 

 何よりも速く飛び、誰よりも早くゴールを駆け抜ける。ただそれだけのためにレース竜は生まれた。


 野生の竜を人が飼い慣らし、ただひたすら速く飛ぶことだけに特化させる品種改良を幾世代にもわたって施した結果、レース竜より早く飛べるものは流れ星しかないと言わしめるほどに進化せしめた。

 

 そんなレース竜を使役して行われるレースがある。名をドラッグレース。人間がレース竜の背に乗って大空をコースに行われるこのレースは、目下この世界では最大級の娯楽であると同時に莫大な金額が動くギャンブルでもある。



 このお話はそんなドラッグレースの物語。



 ◇ ◇ ◇



 それは静かな興奮から始まる。レースの終盤、空中の最終チェックハロンを通過した竜たちが物凄い速度で一直線に急降下を始める。まだ遥か彼方にあっても竜の鱗・騎手の鎧の白銀がキラキラと太陽光を反射してとても美しい。


 竜たちが目指すのは、大地に造られたまるで滑走路のような直線の最終コース。幅約50m、長さ約800m、ゴールラインには高さ12mの塔があるのみというシンプルな構造。コース内及び地面から掲示板塔の高さまでの範囲を通過しなければゴールとは認められないというルールだ。


 十数頭の竜の滑空により空気が切れる音が聞こえてきたらいよいよその瞬間が近い。大空の中、はじめは豆粒ほどだった竜の姿が見る見るうちに大きくなってくる。滑空の音も徐々に凄まじい音に変わっていく。

 数秒の後、大気の抵抗をねじ伏せる爆音と竜巻のような突風と共に、竜の編隊が一斉に地面すれすれのゴールラインに突っ込んでくる。翼を広げると幅10mはあるレース竜たちが地上僅かの範囲を目指して大挙して押し寄せてくる様は何物にも形容しがたい迫力と恐怖がある。


 ゴールの瞬間、歓喜に祝福に嘆きに怒号に罵声にとおよそ人が出せる悲喜交々のすべてが入り混じったような大歓声が会場の空に響き渡る。そしてそれに合わせたかのように無数の白い紙吹雪が高く高く舞い飛んでいく。それらはほんの数瞬前まではまさに値千金の夢だったもの、人が竜に賭けた配当券だったものだ。

 そして興奮の坩堝るつぼと化した観客席に迎えられるようにレースを終えた竜たちが続々と降りてくると、歓声は万雷の拍手へと変わっていく。

 

 ドラッグレースのゴールはいつもこんな感じだった。

 


 ◇ ◇ ◇



「うわぁ、怖いなあ」

 

 ここはレースのスタート地点、眼下の彼方に会場を見下ろす崖の上。遠く離れていても聞こえてくる会場からの大歓声が彼を弱気にさせる。


「今、前の組が終わったってことは僕の出番は次の次ってことか」


 彼の名はバリトラ。長く厳しいトレーニングを積んで今日がようやくデビュー戦というピッカピカのド新米だ。


「先輩には大丈夫だって言われてるけど、いざここに来るとすっごく怖い。トレーニングの時より高いし周りもなんだか強そうだし・・・」


 横目でチラリと周囲を見回す。控え場所にたむろする者は一様に表情が硬くピリピリしている。緊張からか殺気立っている者もいるようで、うっかり目が合えばレースどころではなくなりそうな雰囲気さえある。はっきり言って険悪なムードだった。

 もっともそれもそのはず。バリトラの組は完全に新米で固められているグループで、皆今日が初レースというおめでたい組。レースの勝手も分からず先導役たる経験者もいないという有様では緊張しない方がおかしい。何でこんな組に当たっちゃったんだろうとナーバスになっているバリトラが端から見れば最も落ち着いているように見えるのだからこの場の空気は相当なものだ。


 この組は今日の第3レースの予定。今は第1レースが終わったところなので準備のためにそろそろ行かなくてはならないが、彼らにしてみれば呼び出しを目前にして気分はまさにまな板の上の鯉状態。皆できればこのまま1日が終わって欲しいと思っているようだが現実は厳しい。

 

 不意に外から均衡が破られる。


「よう、今のところ1番人気なんだってバリトラ?」


 沈黙を破る明るい声に完全に虚を突かれ軽く飛び上がりながらバリトラが振り向くと、控え場所の出入り口に知った顔があった。


「やるな、楽勝だろきっと」


「せ、先輩!?ちょっとなんでここに!」


 不意に現れたのはバリトラの先輩であるシルバーランスだった。

 彼は既に何度か勝利経験もある中堅で、夕方の最終第6レースに出場を予定している。


「緊張しているカワイイ後輩を励ましに来てやったんだ、感謝しろよ」


 控え場所には誰でも自由に出入りできるわけではないが、通りがかりで挨拶くらいはできる。後輩を案じた先輩の心ばかりの激励のようだ。


「あ、ありがとうございます先輩」


「あーやっぱりコチコチに緊張してるな。大丈夫だってお前なら。いつも通り、練習した通りにやれば勝てるって。さ、そろそろ準備だろ。しっかり勝ってこいやバリトラ!」


「は、はい!行ってきます!」


 時間にして僅か1~2分だったがそれでも十分な励ましだった。この直後、バリトラ達は準備に向かうことになる。



 ◇ ◇ ◇



(11番、計量OKです!)

(こっちの装備を先にやってくれよ!)

(うわ、ちょっと長さが足りない。おい!おーい!)

(こらっ!暴れるなこの!!)


 準備場、通称パドック前は活気と熱気に溢れていた。ここで騎手と竜が装備を整えた後、レース前に観客にその状態を披露するのだ。観客はそれを参考に竜を選び、賭ける。実績のまだない新竜にとっては、これはある意味血統よりも重視される判断基準かもしれない。


「痛ッ!け、結構きついな、本番の兜って」


 顔面に食い込むほどに締め上げられた特性の兜は、他の竜の翼が当たってもケガをしないようにするためのものだ。風圧で吹き飛ばされないように念入りに、しっかりと固定する。


「腹当ては練習用より薄いんだね、キラキラしてて綺麗だな」


 飛んでいる時の見栄えの向上のため、腹当ては鏡面仕上げの白銀を薄く伸ばした帷子かたびら状だ。練習用は安全面を考えた頑丈な鋼鉄板だが、本番では観客を喜ばせることを優先するためにこのようになったという。


「おお、この足ガード凄いな。全然苦にならないぞ。 鞍も安定してる、軽いし擦れないし最高だね」


 バリトラのように指示に従って着々と準備が進んでいく者がいる横で、新米ならではのパニックを起こしてどうにもならなくなるものもいる。ギャーギャーと鳴き喚き、イヤだ離せと暴れ回るのは毎年よくある光景だ。


(おい!!コイツ!くそー! ドウ!ドウ! 落ち着け!)

(おいこっちだ!抑え込むぞ!)

(騎手は離れろ、危ない危ない!)


 当然この仕事の携わる人間は竜の扱いを熟知している。こういう時の対処は騎手よりも1枚上手だ、片翼5m近い翼を持つ竜の頭を3人がかりであっという間に抑え込み大人しくさせてしまう様は見事としか言いようがない。これもドラッグレースの日常ということか。


 バリトラの準備がひとしきり終わったとき、誰かがこちらに近づいてくる気配がした。顔をあげると、胸元に大きな数字が書かれた白銀の甲冑をまとい、腰に短剣を揺らした騎士風の人間がこっちにまっすぐ歩いてくるのが見えた。

 それはやがてバリトラの前で立ち止まり、そしてバリトラの全身をゆっくりと大きく眺めた後にじっと目を見据てきた。


「な、なんだこの人? あ、もしかしてコレが僕の・・・」


 その騎士はバリトラから目を逸らさずに、腹の底が響くような低い、低い声で


「バリトラ号か、いい竜だ」


そう呟いたのだった。




プロローグ 終わり。

 

 

いかがでした?

そう、主人公は竜なんですよ!奥さん!


このお話の主人公は人間じゃありません。レースの世界に生きるイケメン(?)騎手ではなく、その騎手が乗るガンバリ屋の竜の方にスポットを当ててお話が進行していきます。


人間はほとんど出てきません。出てきても喋ることはないでしょう(・・・多分 笑)


こんなニッチな物語でよければ、ぜひ楽しんでいってくださいねー!


次回からいよいよレースが始まります。そこで色々と世界観も出せたらいいなと思っています。

他の個性的なレース竜もどんどん登場する予定。

お気に入りのレース竜を見つけて応援してくださいね。


お気軽にご感想を、ではでは~。

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