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第二十八話

 とりあえずできることはやっておきました。

 狸爺んとこへ面会に行って『おいおいさっさと出て行けよそうしないとこっちは開城の準備できないんだよ』的な視線をざっくざく受けながら、それでも何とか甲府への後詰めを出してもらうという条件を引き出しました。

 ……うん。それくらいしか、できることないんだ……。

 部下達に『今回の戦もいのちだいじに』って言おうとしたら近藤さんに察知されてタコ殴りにされたしな。

 ああ、それと、出兵前に、宗次のとこへ見舞いに顔出してきました。想像以上に弱ってました、凹む。高杉さんとダブる。超凹む。

 

「で、勝算はあるのかネ?」


「ぶっちゃけ、ナイです。多分敗走してくると思うので、そのときは先生のところに匿って頂けますでしょうか」


「そりゃ構わんがネ。いくらか金出してやろうカ?」


「ではお気持ちだけ……それよりも、宗次のことと負けた後のこと、よろしくお願いします」


 松本先生にもよろしく言っといた。皆の衆に、集合場所は松本先生んとこだって伝えとかなきゃな。近藤さんにまた殴られそうな気もするけど、負けた後のこと考えとかなきゃどう考えても勝てないんだもん、甲陽鎮撫隊。

 

 そしてとりあえず、道中はのんびりと、武器と弾薬と兵隊をかき集めながらじわじわと甲府に向かって進軍するとでした。やだよー行きたくないよー。


----------


 ただいま宴会の真っ最中です。結局、速攻は無理だと判断した俺は、近藤さんと相談して、のんびり旅路を急いでいた。現在八王子。

 

「呑んでるか、歳ぃ!」


 近藤さんと一緒になってはっちゃけてるこの御仁は、近藤さんの弟弟子、んでもって、俺のねーちゃんの旦那さんの佐藤彦五郎さん。ええと、義兄にあたるんかな。つまりよーするにだ、道中で俺の親戚んちにご厄介になってるわけです。


「馬鹿野郎! オレと彦さんは義兄弟の契りを交わした仲なんだぜぇ!」


 はいはい知ってますよあんまり呑み過ぎないでくださいね。明日からは強行軍なんですから、ちょっと彦五郎さんもあんま呑ませないでくださいよ。

 

「バーロィ! 明日から大変だってんならなおさら今日は呑みまくって英気を養わなきゃいかんだろーが!!」


「そうだそうだ!!」

 

 なんだろう、この……問題児が分身したような気分は……。実の兄弟じゃないかってくらいよく似てるよな、中身。

 でも、まぁ彦五郎さん達が言ってることも正論っちゃ正論。多分明日以降、正規兵(新選組隊士)以外はボロボロ逃げ出す奴が出てくるだろうから、今のうちに呑ませて楽しませて、少しでも長く、できれば甲府まで頑張ってもらわなきゃいかん。

 ……はぁ、これまでに人数だけは集められたものの結局調練はほとんどできなかったし、なんかもうレミングの大行進やらかしてる気分だ。ところでレミングはちゃんと泳げるんだぜ、知ってた?


「歳、ちょっと……」

 

 おねーたまに呼ばれたので、俺はこそっと席をはずしました。よかったこれ以上呑まされたら明日に差し支えるとこだった。

 おねーたまこと佐藤のぶ姉さん。彦五郎さんと結婚すると聞かされたときにはこっそり泣いた過去があったりする。美人で気立てもよく、簡単に言うと嫁にしたい女ナンバーワン。

 

「で、何? あっちで話さなかったのは、旦那か他の人だかに聞かれたくない話なんだろ」

 

 なんだかんだで、俺の兄弟の中で一番俺のことを気にかけてくれてるのは、この姉さんだったりする。割とこまめに手紙くれたり。

 

「……うん」

 

 そう言って、表情に暗い影を落とす。ああもう! 姉じゃなけりゃ抱きしめてやるのにトン畜生!

 おk落ち着け俺。相手は血のつながった実の姉だ。俺もそこまで節操無しじゃないぞ。

 

「あのね、彦五郎さんを……連れて行かないでほしいの」

 

 ん? 連れて行く? いやいや連れて行かないし。だって彦五郎さんこの辺の名主さんだべ? 金銭的な援助はありがたく受けさせてもらうけど、まさか本人は連れて行かないよ。

 

「それが、あの人は行く気満々で……このあたりの農兵隊にも声をかけて有志を募って、引き連れていくつもりなのよ」

 

 ……そなの? ああ、そうだよそういえば彦五郎さんも剣の道を志していた人、そういう風に考えてもなんら不思議はないんだよなぁ。

 

「あなた達が負けるとは思わないけど、戦なら死ぬ事だってあるでしょう? そんな危険な場所にあの人を行かせたくないの」

 

 うわーい、耳が痛い。ごめん姉さん、俺ら負けるんだわ思いっきり。こいつぁますます連れて行く訳にゃいかねぇな。うん、何とか説得するよ。頑張る……けど、ごめん、あの二人の勢いに勝てる気がまるでしないんだよね……。

 

 頼み込まれて戻ったら、近藤さんと彦五郎さんが肩組んで盛り上がっていた。まとめて殴りたくなった。

 

「おうトシぃ! 春日隊! いい名前だとおもわねぇか!?」


 春日隊? 新選組じゃなくて?


「馬ッ鹿、俺らじゃなくて、彦さんの連れてくる隊の名前だよ!!」


「この俺も未熟ながら力になるぜ、歳三くん!」

 

 はい\(^o^)/オワタ。隊名まで決まってんのかよ俺の出る幕まるで無しだ、ごめん姉さん。この二人を説得するのは俺には荷が重すぎたよ……。

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