『アナザーサイド ……これが漢の裁縫道』
ちくちく。
ちくちくちくちくちくちくちくちくぶしゅ!
ぎゃー! 針刺した!!
えー、ただいま上野にて松平容保公のお達しの通り引きこもっています。
色々と雑務はあるのですが、刀が振れなくなった近藤さんが俺に任せろといわんばかりに張り切っています。
なので俺様、思いもよらぬ休暇をいただけることに相成りました。
なったんですが。
「土方さん! これでどっすか!」
「あー、甘い甘い。もっとギャザー……えーと、あれだ縫い目に皺を寄せてだな。ふりっふりのふっるふるにしてやんよ」
うちの隊士、若干三名に拉致されました。
『土方さん!! めいど服の作り方教えてください!!』
俺の作った見本だけじゃ仕組みがさっぱりわからんかったらしい。
そんなわけで俺、土方歳三のお裁縫教室、絶賛開講中。
ていうかさ、お前さん嫁に作らせるとか言ってなかったか?
「はい! お借りした『めいど服』を嫁に見せて同じもの作れって言ったら『てめーが作れ』と蹴られました!!」
「うちも『着せたかったらもってこいやゴルァ』言われました!!」
……いつの世も、女は強いってことですかそうですか……。
洋服を作るのは、昔好きだった人(趣味:コスプレ)の手伝いでやってたからいいんだけど、まだまだ素材が足りないんだよなぁ。
ゴム? だがそんな便利なものはない! (あるけど高価) なので代わりに布で紐作ってゴム通す部分に通して絞ったりとか。
レース? だがそんな(ry
なので柄物の布を無地のエプロンの端に縫い付けてそれっぽく見せたり、染物屋に頼んでレースっぽく染め抜いてもらったりな。
あとはあれだ。パニエの代わりにがっさがさの安い麻織物を大量に仕入れてひたすらギャザーよせたりな。
案外、あるもんで代用は利くとですよ。ちょっとくらいヘンでもこいつらは本物を知らんから、充分納得してくれるしな。
「土方さん、袖を膨らませるにはどうしたらいいですか?」
「あーそれはね、袖の部分だけ固めの布を使って、根性で皺を寄せるんだよ」
基本は直角切りの着物なので、服を立体的にすると言うことがまだまだ伝わっていないこの時代。とりあえずギャザーの基本だけはしっかり仕込んで、後は応用だね。
例えばスカートも、パターンをとって縫うなんて無理だから、ひょろ長い長方形をいくつもつなぎ合わせてがーっとギャザー寄せて縫い合わせて輪状にして、それを何段か重ねてスカートにしたりな! ……通じるか? 意味。裁縫を口で説明するの難しすぎる。
ちなみに俺自身はセーラー服を作ってる最中。プリーツスカートは袴を応用して何とかできそうです。問題はセーラー部分の白いラインだよなぁ。どうしようか……組み紐縫い付けるとかか?
「トシぃ、助けてくれー!!」
近藤さんのヘルプコールには耳をかさないとです。自分がやるっつったんだから自分でやれよ馬鹿。
「ふーん、そんなこといっちゃっていいのかなぁ?」
いいに決まってるだろjk……って、こ、近藤さん、その右手に持っているお洋服は……ナンデスカ? も、もしや。
「南蛮渡来の『めいど服』正真正銘のモノホンだぜー!! おら、ひれふさんかいっ頭が高い!!」
うわぁぁぁあ本物だよ! マジモンだよ! 清楚な感じの紺のロングワンピースに白いフリルのエプロンに、うわっカチューシャまでついてますか! 背中はジップですかさすが西洋は進歩してますね!! 裾にはシンプルなレースが一回りだけ、だがそれがいい。メイドさんがゴテゴテ着飾ってたら意味ないもんね。ゴスロリとメイドさんは別物です。
「こ、これが本物っすか……じゃ、じゃあ今まで俺らが本物だと思ってたのは……」
「土方さん……日本で手に入りやすいモノで頑張ってくれてたんっすね!」
「おれやっぱり土方さんについていきます!!」
「ふーん。じゃあこのホンモノはいらねぇってことだな?」
「あっそれは別です! 近藤さんにも一生ついていきます!!」
俺を置いてきぼりでなんか変な上下関係が出来上がってしまったとです……。
「で、歳。こいつを交換条件に仕事、手伝ってくれるよなぁ勿論?」
はいはい、手伝わせていただきますです。だからそれ、ほらヨコセヨ。
いろいろとすんません。
久々にフリフリのお洋服作りたいなぁ、着る気はないけど。