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第二十六話

 横浜に到着しました。

 ひとまず先に入った富士山艦の負傷者をあらためた。覚悟はしていたけど輸送中に随分と死者も出たみたいだ。……結局……俺って歴史変えらんねーのかなぁ。色々と世話になった山崎も死んじゃったし。マジ凹む。

 怪我人はとりあえず医学所に運び込んだ。怪我人だけだと心配だから、えーっと……島田! お前こいつらについとけ。

 

「わかりました。土方さん達は松本先生のところへ?」


 ウン。近藤さんと宗次は松本先生に診てもらいたいし、余裕があればこっちにもきてもらうよう頼んどくけど……。俺はあとぁ駐屯地の確保だぁね。でもやっぱ怪我人最優先だからさ。よろしく頼むぜ?


 無事な人間引き連れて、俺らは陸路で江戸に向かった。とりあえず旅宿に落ち着いて、近藤さんと宗次には直で松本先生んとこに向かってもらう。ま、江戸はまだ幕府支配下にあるし、近藤さんには銃も持たせてるし、二人でも大丈夫だろう。

 

 取り急ぎやんなきゃなんねー事は終わったかな。さて、屯所探しに行くか……。まずは会津公んとこだな。文句の一つも言ってやんなきゃ気がすまねぇ。いやヘタレなんで無理ですけど。今後どうするかをね、話したいと思ってね。

 そんなわけで会津藩邸に向かいました。うっなんか嫌なデジャヴ。つい、周囲に勝の狸爺どもがいないか確認してしまった俺は、けしてチキンではないと思う。完全にトラウマになってやがるぞこん畜生。

 

 しばらく待たされて、会津藩主松平容保公との面会が叶いました。っていうか俺、実はこの人に会うの初めてなんだよね、遠くから見たことはあるけど。今までは大概近藤さんが話通してたから……ちょっとドキドキ。


「お初にお目にかかります。新選組副長、土方歳三です」


 頭を下げて……返事がない、ただの屍のようだ……って縁起悪いなオイ。いやでも妙に間が空いて返事が返ってこないので頭を上げてみたら、かっ容保公土下座してはるゥゥゥ!?

 

「すまなかった。おぬし達にばかり負担をかけて、我らが江戸に逃げ帰るなど、あってはならぬことだというのに……どうしても、将軍を説得することができなかった」

 

 ちょっおまっ頭上げてくださイッ!! 殿様が俺なんかに頭下げちゃ駄目だっつーの!! 何この人、想像と全然違う人なんだけど!? もっと偉そうにしててくださいよ調子狂うなぁもう。

 

「気にしないでください、それが俺たちの仕事なんですから!! つーか頭上げてくださいお願いします!!」

 

「いや、頭を下げてすむことではないと重々承知しているが……」


 違いますって単純にやりにくいだけなんですってば!! あーもう、幕府の重鎮(一応)がこんないいひとでつとまるかっつーの! もうちょっとこうさ、狸爺とか長州の桂とか薩摩の大久保とか見習ってずるく賢く行きましょうよ殿様!

 

「いや、しかし……」


 えーいもう黙れ!! そんなこといつまでもうじうじ話してる場合じゃねーんだよ! こちとら命かかってんだからもっと建設的な話しようぜ。

 

「過ぎたことよりも今後のことについて話した方がよろしいかと具申申し上げりゅあっ!」

 

 大事なところで噛むのはいつもの俺クオリティ。もうあきらめた。口内炎にならないといいなぁ噛んだところ。

 

「それは、そうであるな……。うむ」

 

 わかっていただけたようで何よりでごんす。んで殿様、今後はどうなさるおつもりで?

 

「まずは江戸を死守することを前提に物を考えねばならぬ。そこで軍を江戸守護の重要拠点である甲府へ派遣したいと考えておるのだが……」

 

 らめぇぇぇ! それ死亡フラグ、死亡フラグだからぁあ!

 

「何しろ慶喜公がすでに恭順の意志を固めておられるのでな、大軍を出すわけにも行かぬ」

 

 あるぇー、死亡フラグがどんどん強固になってる気がするじょー。ヤヴァイ。

 

「あの、えーと、恭順したいっつーならしていただいて、断固抗戦したいって人間だけまとめて会津に篭らせたらどうでしょう」

 

 群発的な戦でじわじわ削られるよりも、いっそ一箇所にまとめてガツンとぶつかったほうがよいと思うのですが。

 

「それでは江戸を守れぬではないか」

 

 ……駄目だ、こりゃどうあっても甲府攻めを強行する腹だなコン畜生。勝の狸爺に入れ知恵でもされたか?

 

「正直に申し上げます。現状の幕軍の中でも強硬派の面子を全てそろえて甲府に送ることができるなら勝ち目もあるでしょう。しかし、実際は慶喜公を始めとする恭順派の人たちに邪魔されて全部を動員することは不可能です。自分達……新選組が甲府に向かうことは可能ですが、それでは間違いなく負けます」

 

 腕組んでうなってはる……。心当たりがあるんだろうなぁ。恭順派の狸とか狸とか狸とか。

 

「では他に、江戸を守る方法はあるか?」

 

 だから……えーっと……官軍に頭下げれば強行突破はしてこないと思うから、そうしたいヤツだけを江戸に残してどこかしら引きこもれる場所(心当たりは会津か箱館)に集結するのが一番だと思うんですけど……。

 

「将軍を差し置いて別所に兵を集めるわけにはゆかぬ」

 

 ……ガンコですね。じゃあ負けるとわかってて甲府に突撃しますか? 俺らみたいな集団が江戸にいたら恭順なんて絶対無理ですからね、威嚇してるようなモンですから。新選組だけで甲府に突撃して霧散しますか? 俺りゃやだよ絶対。部下に死ねなんて言えねえよ。何かを守るためならともかくさ、それじゃあただの無駄死にじゃねぇか。

 

 といったことをオブラートにくるんで具申したところ、部下を無駄死にさせたくないという点でだけは同意を得られた。……だからー、甲府はヤバいんだってば。

 

「なぜ甲府占拠がまずいのだ?」

 

 えーっと……。

 

「すでに官軍も甲府城の地理的優位に気付き、開城を迫っているとの情報があります。真偽はまだ不確かですが、おそらく間違いないかと」

 

 しれっと嘘をつくのが生き残るためのコツなんですよ。知らんけど。

 

「……この件については、追って指示する。ひとまずは上野にて待機せよ」

 

 話、打ち切られました。とりあえず甲府はマジヤバイって事だけは伝わったかな……だといいな……。

 容保公いいひとっぽかったけど、ぶっちゃけ最近の俺の人を見る目はないからな。しばらくこっちの動向にも気を配る必要があるか……。

 

 もうやだ、オウチカエリタイ。

 何か最近コレばっかだなぁ。だって現状しんどすぎるもんよ。うまく恭順派に取り入れればいいんだけど相手はあの勝海舟だしなぁ……。容保公ももうちょっと世渡り上手になってくれればいいのに……って、そういう人だったらそもそも徹底抗戦叫ばないよなぁ。

 なぜに俺様、新選組副長なのでしょう。引退したらダメカシラ?

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