『アナザーサイド……彼らから見た土方歳三』
アナザーサイドとして、主人公以外の視点を時々お届けします。
番外編みたいなものでしょうか。
Kさん(仮名)
「んー、俺とケンカして死にかけたとき以来、どぉーも人が変わっちゃったんだよな、あいつ。剣が弱くなっちまったのはアレだけどまぁ、変な悪戯とかはしなくなったし、気性も穏やかになったみたいだし、浪士組に入ってからは雑務を一手に引き受けてくれたりもして、今じゃ逆にこういう性格になってくれてよかったかもとか思ってるんだよねー。前は良くも悪くも頑固だったからなぁ。でも、無理やり連れて来てよかったと思ってるよ。今じゃ新選組になくてはならない存在ちゅー事だね」
Oさん(仮名)
「僕は今の歳さんのほうが好きですよ? からかいがいが……あ、なんでもないです。今の歳さんは優しいし。僕が壬生寺でこっそり猫を飼っているのがばれた時、ぶつぶつ言いながら自分の懐から餌代を出してくれたりして……前の歳さんからは想像つかないですよね。でも最近なんか不審なことやってましたよ。勘定方のところにお金を溜め込んでるのは知ってましたけど、一人でその溜め込んだお金の前で『ふっふっふ、越後屋、おぬしもなかなかワルよのう……』とかブツブツ言ってました。声をかけたら『俺\(^o^)/オワタ』とかいって逃げていきましたけど。あれ、なんだったんでしょうねぇ……?」
Yさん(仮名)
「土方君? うん、だいぶ昔とは変わったね。以前は剣の力に任せて色々と揉め事を起こしたりもしていたけど、今では私とともにもっぱら仲裁役に回っているよ。記憶喪失というけれど、人間とはあそこまで変わるものなんだと。今の彼は刀よりもむしろ知識や情報を重視しているようで、僕としては以前の彼よりも非常に話しやすいね。僕の話にも興味を持って聞いてくれるようだし」
Sさん(仮名)
「……甘いんだか厳しいんだかわからない人ですね。Kさんが連れて来ただけあって腕はそこそこ立つようだが、それでも副長という地位にはふさわしくない……剣の腕だけをとってみればの話ですが。むしろ彼の才覚はもっと別の場所にあるような気がします。特に討伐の時の指揮能力には目を見張るものがありますね。けれどそれを言うと調子に乗ってしまうので言いませんけど……。あの、調子に乗りやすい性格だけは、何とかしてほしいと思うんですが」
Tさん(仮名)
「彼は実にいい男ですな。人の嫌がるようなことでもすすんでやる……上に立つものにはなかなかできない芸当ですよ。それにあの色気……あ、いや、特に意味は無いのですが。あの人は時々妙に守りたくなるというか、守ってやらないと死ぬんじゃないか、というような錯覚を起こさせますね。副長である以上、守る必要もないとは思うのですが……まぁ、なんとなく、ですな」