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第二十一話

 ふ、ふふ……俺には落ち込むヒマもないんですね、わかります。

 毎晩毎晩夢に出てくる血まみれの伊東先生や藤堂が俺を睡眠不足にするとです。必然的に俺は寝たくない症候群に罹り、徹夜して書類仕事をすることもしばしば。無茶な仕事させた原田達と油小路で働いた隊士達への褒賞も考えなきゃならんしなぁ。思考力がかなりダウンしているのが自分でもわかるのが切ない。近藤さんに無理やり寝かされても一刻しないうちに飛び起きるんだもんなぁ。

 そんな俺の様子を知っているからか、隊士から油小路の件について問い詰められることもなかった。だがそれが余計に苦しい。いっそ責めろよ、俺が悪いんだって。わかってんだって。

 伊東先生の件について調べた所、当初の帰還ルートと違う道を通られたために連絡が入れ違いになったらしい。監察全員が白装束姿で土下座しにやってきたけどスルーした。お前らに今死なれたら泣きっ面に蜂ぶんぶんだっつーの。特に処罰はしませんでした。待ち伏せルートをあらかじめ指定しておいた近藤さんにも責任はあるだろうしね。それにしても何で伊東先生わざわざ遠回りして帰ったんだ? 今考えても仕方ないか……。

 

 天満屋事件では無事に三浦殿を守りきったし、とにかく俺は目の前の仕事を片付けるのに躍起になっていた。ていのいい現実逃避とも言う。

 それでもま、出来る限りの事はしてますよ。勝さんにお手紙書いたり、桂さんにお手紙書いたり、届くかどうかは知らねーけどな!

 そんな感じで毎日を過ごしていた所に、王政復古の大号令の情報が届きました。早いよ早すぎるよ! なんも考えてなかったよ!! ああ、慶喜公が激怒してる姿が目に浮かぶようだ、会った事ないけど。

 近藤さんは土佐の後藤さんを通じて、徳川が公議議長就任の方に向かうよう動かしているみたいだけど……俺することない。ここから慶喜公が暴走して江戸幕府継続を仄めかしたり諸外国と勝手に会談したりするんだけど……ほらね、できること、ないじゃん?

 今年中に慶喜公の意見はまかり通っちゃうだろうしなぁ。うーん、戊辰戦争始まらないように薩摩になんか仕掛けるにしても……何しろ薩摩とは縁がないからなぁ。もうちょい長州いじってみるか?

 

 うんうんうなっていると、伏見鎮撫を命ぜられたので、新選組全員屯所を引き払って伏見奉行所に移りました。近藤さんは引き続き幕府のお偉いさんとの軍議に出席してるみたいだけど、うーん、幕府強気だよなぁ。このままじゃ戊辰戦争一直線だ……早く何とかしないと……。

 

「土方さん!!」


 はいはい今度はどしたぁ!? 島田が俺の部屋に駆け込んできた。

 

「近藤さんが狙撃されて重症です!!」

 

 アッー忘れてた!! あれか御陵衛士の残党か!! やべぇ近藤さんに声かけすんの忘れてた。

 

「容態は!?」


「右肩を負傷、命に別状はありませんがまだ詳細までは……」

 

 もういい! 俺が直に見に行ってくる!! 留守番頼むね。

 

 

 近藤さんは思ったより平気そうだった。左肩を包帯でぐるぐる巻きにされてるけど。

 

「よう、歳、心配かけたなあ」


「なんだよ状態はどうなんだよ!!」


 笑いながら近藤さんは、さくっと、はっきりと言った。

 

「もう剣は持てないらしい。いやあ、馬に乗ってる最中に狙撃されてさあ、落馬してたら命なかったかもしれんし、この程度で済んでよかったよ」


 顔は笑ってるけど、目は全く笑っていない。そりゃそうだ、剣の腕だけを頼りにここまで上り詰めた近藤さんだ、未練がないわけがない。ちくしょう、俺がもう少し早く思い出していれば……。

 

「そんなわけで、俺ぁしばらく療養生活だ。新選組のこと、くれぐれもよろしく頼むな?」

 

 了解です……。近藤さんが不在だろうがなんだろうが、俺がしっかりしなきゃ新選組はこのまま破滅へまっしぐらです。

 

 適当なところで切り上げて、俺は近藤さんの元を辞した。近藤さんはひとまず別宅にて宗次と一緒に療養するらしい。……宗次の病は、日に日に悪化している。時々しか覗きにいけないけど、確実にやつれているし、俺へのイジメもキレがない。

 

 さて……俺はこれからどうするか。とりあえず、大阪に腕のいい医者がいるというので、近藤さんと宗次を見てもらうように頼んで、……それから、新選組。できれば伏見からばっくれたいんだが、無理、だよなぁ……。面識ないけど松平容保公にもお手紙を書いておこう。新政府を認めて、幕府と共存できる道を探っていきましょうって。無駄だろうけど。

 鳥羽・伏見の戦いは……もう今となっちゃ避けられないだろう。出来る限り損害を減らすしか……あー、ええと、山崎と井上は奥に引っ込ませとこう、確かこの戦いで死ぬはずだ、あいつら。あとは……多分アレだ、錦の御旗が翻るから、その前に逃げるか……どうせ慶喜は途中でばっくれるしな、頃合見てウチも逃げようそうしよう。逃げれれば、だけどな……。

 

 考えれば考えるほど絶望的なこの状況。どっかに妙案落ちてないだろか。こう、根本からひっくり返せるような、何か。……とりあえず勝さんにもっかい手紙書いとこう……。

 

日本シリーズ、万が一ドラゴンズVSホークスなんてことになったらうっかり名古屋まで遊びにいってきます探さないでください。

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