表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/40

第十九話

 俺の知らない間に、近藤さんとの間に入っていた亀裂。修復、完了だよな?

 よし、さればこそ酒など……伊東先生が居なくなったんだからいいじゃんよう。

 呆れ顔の近藤さんを尻目に、とっくりに手を伸ばす。おk、まだ入ってるぞ。

 

「ま、あんま飲み過ぎなきゃいーけどさ」

 

 よしきた! では早速一杯……。


「報告です!! 油小路にて奸賊伊東甲子太郎を討ち取りました!!」

 

 口をつける間もなくブホアッ!! 杯をひっくり返しちまったじゃねーか! いっ今なんつったテメー!!

 

「オレは撤収だと伝えたはずだぞ!?」


 近藤さんのまるで虚をつかれたような声が響いた。俺は、何を言うこともできずにただ成り行きを見つめている。ていうか現状把握デキテマセンヨ?


「その伝令は受けておりません! この後どうすべきかご判断願います!」


 監察に所属している……えーと、名前忘れた。隊士の表情が、冗談でもなんでもないと俺達に訴えかける。俺は近藤さんと顔を見合わせた。そして、どちらからともなく駆け出した。油小路へ……。

 


 そこには、道の真ん中でうつぶせに倒れたままの伊東先生が居た。念のために脈を取る。……完全に、絶命している。

 

「……っ、まさかこんなことになるとは……」

 

 完全に誤算だった。油小路の事件はもっと先のことだと思ってたってのもある。まさか伊東先生がここで死ぬなんて!! つかなんだよこの急展開は!

 

「っ、どうするよ、歳!?」

 

 近藤さんは完全にテンパっている。そりゃそうだ俺だってテンパりたい。けど近藤さんを責めるわけにも行かない、完全なイレギュラーだありえない! 意味がわかんねぇよ! 

 なんて現実逃避、してられない。時間がなさ過ぎる!!

 

「……隊士精鋭を集めろ! 銃士隊は除け、目立つ。山崎、いるか!?」


「ここに」 

 

 山崎は俺の命で、常に近藤さんのそばについていた。ぶっちゃけ監察はおれの思いのままに動かしている……はずだったんだが。どうもこの状況を見るに、そうではなかったことが明白だ、ちっくしょう、俺の命令で近藤さんのそばにいたんだから、余計なコト言われてホイホイ引き受けるんじゃありません!!



 ここまできてしまった以上、やるしかない。


「俺が指令を出したら御陵衛士の屯所に文を飛ばせ。『伊東討ち取ったり、遺体は放置してある故油小路まで取りにこられたし』と」

 

「歳! どういうつもりだ!?」

 

 腹くくるしかねーだろうよ。畜生、最悪の事態じゃねーか……。

 

「伊東先生を殺しちまった以上、御陵衛士は確実に新選組の敵に回る。その前に、殲滅する」

 

 俺の言葉に、近藤さんが息を飲んだ。俺の覚悟が、こんな所で試されるなんて思ってもみなかったけど……今は、こうするのが最善の策だ、新選組を守るためには。

 

「一人残らず斬る。近藤さん、アンタにも責任の一端は担ってもらうぜ。伊東先生を俺達が殺っちまった以上、御陵衛士はもはや全て敵だ」

 

 山南さん……こんな姿見たら悲しむかなぁ、でもさ、俺が選んだのはこんな道だ。幸い、アンタ斬った時に比べりゃ心は痛まねぇよ。しんどい思い、経験させといてくれてありがとうな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ