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第十六話

 にょっほーい。俺が屯所に引きこもってオタク演説ぶちかましている間に、後藤象二郎殿と近藤さんの会見も大政奉還も終わっちまいましたい。

 あとね、西本願寺の坊さん達に金積まれて『出てってくれ頼むから』と懇願されたんで、また屯所も移転しました。今度はね、まるっと村一つ(とまではいかないけど)借りたんで広いよー。土地代も建物代も全部西本願寺もち。やったね!

 前に松本先生にガミガミ言われたんで、立派な風呂も増築しました! んで商売物のお姉さん方を呼んで実地で授業……いやげふんげふん。つまり新選組オタク化計画の方は順調に進んでいるといっても過言ではないでしょうでございますよ。俺様手縫いのフリルエプロンで『お帰りなさいませ、ご主人様ぁ♪』とかやってもらったしね。超大好評。

 

 ごめんなさい理解してます、現実逃避なんです。現実見たくないんです。

 とりあえず近藤さんには「坂本竜馬の保護」を訴えてあっさり実現しました。原田を筆頭に、大石鍬次郎・谷周平両名をお供に、坂本さんが帰ってくるのを今か今かと待ちわびている状態。

 ただねー、どうも最近、京都見廻組が何かとウチに噛み付いてくるんですよ。あれだ、幕臣取立てで奴らと俺らが同格になったせいかな。『田舎侍もどきが( ゜д゜)、ペッ』て感じで。同じ市中見廻りの仕事やってる者同士、もっと仲良くできんものかね。

 それから、もうはっきり言ってバレバレなんだけど、正式に山口次郎君を新選組メンバーに迎え入れました。誰も何も言わないけど暗黙の了解。本人も何も言わない。彼はもう少し人とコミュニケーションをとるべきだと思うとです。友達いないのかな……先生は心配です。

 

 そんな感じでネコミミつけた舞妓さんに『ご主人さまぁ☆ミ』とか言わせてハァハァしていた俺の元に、一通のお手紙が届きました。

 

『よぉ、元気にしちゅうか? おんしの思惑通り近江屋に逗留しちゅうので、その旨きっちりこうして連絡入れたぜよ』

 

 らめぇぇぇ! 近江屋らめぇぇぇ! ちょっ、原田! 今すぐ二人連れて近江屋に向かってくれ俺もすぐ行く!! 何考えてんだあの馬鹿!

 

 俺の方が(遊んでただけだから)身軽に動けたので、とりあえず急いで近江屋に向かった。暗殺は夜だから今ならまだ大丈夫! だといいな!

 んで、近江屋に入ったとたんに刀突きつけられましたドボジデ?

 

「何者だ」

 

 さ、坂本さんのオトモダチです……。

 

「坂本? おい、才谷、降りて来い。こいつ知ってるか?」


 階段を下りてきた坂本さんがあわてて止めてくれたおかげで、俺は一命を取り留めました。つかアンタ誰よ?

 

「わしの盟友の石川君じゃ」


「おk把握した。絶世の笑顔写真で有名な中岡さんですね。ロッテの井口にちょっと似てる感じの」


 思いっきり殴られて、本名だしちゃダメって怒られました。俺がここにいる時点でいまさら変名使うのもどうかと思うんだけどねぇ。いや、だから刀向けないでくださいよ、わかりました才谷さんに石川さんですね了解しましたからその、早くソレ鞘に収めてください。


「まさか才谷と新選組の副長が繋がってるなんざ夢にも思わねぇだろうが。普通は手入れだと思うだろ」

 

 ソデスネ。でも俺はあんたらの命救いに来たとですよ。いやまじで。

 

「おんしは信じんじゃろうが、こん人は未来のことをようく知っちゅう。大政奉還のこともな、わしが言い出す遥か前から時期までぴたりと言い当ておった」


 うわっ、石川さんが胡散臭い眼で俺を見ています。才谷さん、それじゃあまるで俺が怪しい占い師かなんかみたいじゃないですか。もう少しうまい紹介の仕方があるだろうに。

 

「んで、こん人の先読みの力によると、わしらはもうすぐ、ここで暗殺されるそうじゃ。のう?」

 

 そうですけど、何だよその『先読み』て! 俺は預言者でもなんでもないただのオタクです! もういっそ、未来人だってばらしてくれた方がなんぼか怪しくない気がするとですよ……。

 

「ほう、それならば無論、その暗殺者がどこの手のものかも知っているんだろうな?」

 

 知らんですよ! 日本史三大ミステリーといわれる近江屋暗殺事件! 知ってたら今頃俺ノーベル賞! ……は、無理か。それでも平凡な高校教師なんぞやってないっつーの!

 

「なんだ、使えない占者だな」


 やっぱり占い師だと思われてたー!!

 

「冗談だ。新選組の土方歳三といえば知らぬ浪人はいないだろう。だがお前がなぜそれを知っている? 新選組の手のものではないと言い切れるのか?」


「言い切れます! 絶対ウチのもんにゃ手出しさせんです! つーか守るために三人派遣しますんでいくらでも好きなようにパシらせてください!」


「……ぱし?」


「はっはっ、わしの知らん異国の言葉じゃな。あとで意味を教えとおせ!」


 この空気読めてない馬鹿何とかしてください……。

 

「それじゃあとりあえず、新選組は敵ではないと思っていいんだな?」


「はい。才谷・石川両名には手出し無用の触れも組で出しときました。あ、本名でですけど」

 

「だから最初っから言うちょったろうが!」


 アンタもう黙れ。

 

「だがそれを信じられるだけの何かが、お前にはあるのか?」

 

「俺が今こうして武器も持たずここにいることで、まず一つ信じてもらえればと。それで足りないなら幕府の勝さんなり長州の桂さんなりに聞いてください。もっとも、その前に襲撃される可能性が高いですけど」

 

 そう、俺、慌てて来たんで超丸腰。ナイフひとつ持ってやしない。今の俺ならスライムベスにだって負ける自信があるぞ、えっへん!

 

「土方様、お連れ様が到着されましたが……」


「あ、入ってもらってください」

 

 俺に遅れて数十分。完全装備の原田以下二名が到着しました。ちょっ、まさか昼間っからその格好で街歩いてきたんかお前ら!


「あん? だって戦になるんだろうがよ」


 ダメでした……この子やっぱりちょっとオバカでした……。

 

「あー……一応紹介しとくわ……ウチの十番隊組長……戦の時はいつも殿を務めてくれる天下無双の剛の者、種田宝蔵院流槍術の使い手、原田左之助……ってお前馬鹿か! 室内で人守るのにそんな長い槍もって来る奴がいるか!」


 あはは……二人が呆れて見ているよ……やべぇ、新選組の三大馬鹿と思われる(主に俺が言ってる)原田を選んだのは俺の人選ミスだったか……。

 

「あー……あと、監察の大石鍬次郎。居合いならウチで右に出るヤツはいねぇ。それにウチの近藤の元養子で今は実家の姓を名乗っている谷周平。剣の腕はまぁまぁ」


「まぁまぁって、ひどいなぁ」


「あー。少なくとも俺よりゃ強ぇわな。こいつも監察から引っ張ってきた。以上三名、襲撃までの間、アンタ方を守ってもらう。ウザいと思うかもしれんがガマンしてくれ」


 才谷さんはニラニラしてるからいいとして、石川さんはまだ胡散臭そうに俺らを眺めてる。信じてくれっつー方が無茶かなぁ……。

 

「お前は?」

 

 へっ?

 

「お前はここには残らないのかと聞いている」

 

 えっだって俺がいたって足手まといにしかなんないし組の仕事もあるし。てゆーか俺まで巻き込まれるのは御免だ!←ここ重要。

 

「才谷と俺が信用したのはお前であって、お前の部下ではない」

 

 あっ、一応俺のことは信用してくれたのね。

 

「石川は変なところで頑固じゃからのう。気にせんでええぜよ」


「ちょっ、才谷さん……」


「はっはっ、このオレが来たからにゃあ百人力だぜ? 安心して密談でも何でもやってくれや!」

 

 お前は少し黙ってなさい原田。頼むからこれ以上馬鹿を露見せんでくれ新選組が馬鹿の集団だと思われる。大石、谷、フォローしてやってくれな?

 

「大丈夫ですよ。原田さんはいざとなれば頼りになる人ですから」

 

 そうだといいんだけどなぁ……。

 

「チッ、わかったよ。だが俺たちに何かあったときには新選組の仕業だということにしておく。それでもいいか?」

 

 守れなかったら……はい、その時は覚悟しています。ていうか守れなかったら多分ウチも終わりだろうしね。

 

「安心せえ、わしもこいつもそうそう簡単にくたばるようなタマじゃあないぜよ」


 はいはいそうですね(棒読み)

 

 こんな感じで、何とか二人とウチの三人を合流させることに成功した俺は、とりあえず一安心して屯所に戻ることにした。後のことは任せたぞマジで。


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