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第十二話

「バカ本竜馬出てこいや(゜Д゜)ゴルァ!!」


 山崎から坂本さんが寺田屋に居ると報告を受けた俺は、とりあえず寺田屋へと向かった。狸爺の一件でちょっと文句を言ってやらんと気がすまなかったからだ。あと桂さんとかとの会談のこともあるしね。

 で、入り口を入った途端に何故か、目から星が出て俺様強制シャットダウン。再起動したのは、およそ半日ほど経ってからだった。

 

「おお、気がついたか!」


 目覚めると煎餅布団。なんだかデジャヴ。起き上がると側頭部に激しい痛みが走る。触ってみたら包帯でぐるぐるまきにされていた。


「すみませんでした!」


 布団の脇で畳に土下座している女の人、と、その横にニラニラしている坂本さん。何だ? 何が起こったんだ?

 

「医者が言うには意識さえ戻れば後は心配ないちゅうことじゃった。いやぁ良かった良かった」


 何が何だかわからんので説明してもらった。坂本さんを訪ねてきた壬生狼の鬼の副長にやばいと思った奥さん(おりょうさん)が、たまたま抱えていた漬物石を俺に投げつけたらしい。なに、俺の頭と巨大な石って何か因縁でもあるとですか? 何度目だコレで死に掛けるの。

 

「てっきり竜馬さんを捕らえに来たのだとばかり……」


 だからっていきなり漬物石はないでしょう。夫婦仲が良くてうらやましいことですな( ゜д゜)、ペッ

 

「まあ、わしに免じて許してやってくれんかのう。幸い大事にも至らんかったことじゃし」

 

 まだアッタマ痛いですけどそれはスルーですかそうですか。それにしても漬物石ぶん投げるってどんだけ怪力なんだおりょうさん。火事場の馬鹿力ってやつですか? へのつっぱりはいらんですよ。おりょうさん顔は可愛いのに……だが俺なら漬物石投げる嫁は御免だ。だからそこ、ニラニラすんなバカ本!

 

「わしの自慢の嫁じゃ」

 

 適当に聞き流しますよー。これ以上心にまでダメージ受けたくないよ俺。

 

「はいはい。本題に入りますよ。申し訳ないけどおりょうさんは席を外してくれるかな? 別にこのヒトどうこうしたりしないから。また漬物石ぶつけられるのはカンベンだしな」

 

 顔を真っ赤にして、おりょうさんは出て行った。うーん、こゆとこだけ見ると本当に可愛いのにもったいない……。

 

「何を言うか。あの気性こそがあれの魅力じゃろうが!」


「はいはい、本題に入りますよー? 俺アンタのせいで勝さんに殺されかけたんですけど」


 アレー? って首を傾げても無駄です。ムサい兄ちゃんにそんなことされると、むしろキモいです。おりょうさんだったら許してしまいそうだけどな。いやしかし人妻は御免だ、それ以前に漬物石……。


「いや、勝さんはおんしを殺そうとまでは思うておらなんだと思うぜよ? 多分」


 その多分で俺は実際死に掛けたんですけど。とりあえず勝さんとその後連絡を取っていないようだったので、事の詳細を坂本さんに話してやった。

 

「あー。あの人らしいのう。わしゃおんしの言う事を信じちょるぜよ?」


「はいはいアリガト。で、何でそんな余計なことあの人に話したんだよバカ本」


「バカ本言うな。いや、未来の話のくだりは冗談混じりじゃったが……まさかあの人が本当におんしに突っ込んで聞くとは思わんでのう、まっこと申し訳ないことをした」

 

 あーもういいよ。一応無事に済んだし。思わぬところでお姫様と面識もできちゃったし。でもあの狸爺は一回ギャフンと言わせてやりたい。が、一応この人、ヤツの弟子なのでそれは口には出さないでおこう。

 

「桂さんか西郷さんと会談、できそう?」


「それがのう、どーにも忙しい人らで、なかなか捕まらんのじゃ。わしも必死で連絡をとっておるんじゃがのう……。代わりといっちゃなんじゃが、一人、今すぐに紹介できる人物がおるぜよ。ただし、おんしが長州まで足を運んでくれればの話じゃが」


 長州。イヤンな予感がします。こういう予感は当たるとです。不吉です。

 

「高杉君なんじゃが……」


 ほーらね! 俺の予想ビンゴ! ……あれ、でも待てよ、確かもう高杉さんは……。

 

「ああ、肺を病んじゅう。正直いつ死んでもおかしくないような状態じゃ。じゃが、おんしに一度会うてみたいと頼まれてのう……もしできるなら、行ってやってくれんか?」


 うーん……行きたいのは山々だけど、俺も今ちょっと京都離れるわけにはいかないんだよなぁ……。俺様年表見る限り、俺が長州行ってる隙にアンタ殺されそうなんだもんよ。

 

「まあ、それは無理にとは言わんぜよ。それに、桂さんや西郷さんとの面談も何とかしちゃるきに、もうしばらく待ってほしいぜよ」


 ああ、それはいいですよ。坂本さんも今、大政奉還に向かって必死に頑張ってる最中だろうしね。


「ははは、相変わらず耳聡いのう。どうじゃ、おんしの知っちゅう歴史では、今年中に成るかのう?」


「ああ、大丈夫。けどその先の方が問題だ。何とかして血を流さずに徳川と天皇を結び付けときたいところなんだが、長州と薩摩はどうせ武力討伐をすすめようとしてるんだろ? それだけは阻止したいんだよな」


「ああ、わしもそう思うぜよ。無駄な血を流すのはもう御免じゃ」


 大政奉還後の日本について、俺は坂本さんと激論を交わした。倒幕に逸る薩長をどう抑えるか、徳川のおさまる位置はどうすべきか。……気付いたら、外は真っ暗になっていた。

 

「あんま遅くなると怒られるんで俺帰るわ。俺にだけは居場所きっちり連絡入れてくれよ? あんた探すの大変なんだから」


「おう、ま、そのうちにのう。またしばらくは京を離れる予定じゃから、帰ってきたときはおんしに会いに行くぜよ」


 いやだからアンタが俺を訪ねてきたらやばいだろってjk。

 ま、聞きたいこと聞けたし言いたいこと言ったし、今日はこれでいいか。おりょうさんにも一言挨拶して、俺は寺田屋を出た。最後まで恐縮されっぱなしだった。京の街での俺の噂って一体どんななんだか。何をどう間違えたら俺が鬼の副長になるんだかねぇ?

 

 屯所に帰ったら斎藤……じゃなかった、山口にジト目で見られた。見なかったことにした。

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