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第八話

 坂本さんに頼んどいたミニエー銃が届きましたよー!! 坂本さん、弾をたっぷりおまけしてくれました。いい人だ!

 

「なぁに、ほんのココロザシぜよ」


 しー! シー!! アンタの土佐弁は目立つんだから。俺もこの街ではちったあ顔が知られてるんだから! 下手したら俺切腹モノよ?

 

「かっかっかっ、それもまた一興じゃろうて」


 一興で切腹させられてたまるもんですか!!

 

「まぁ冗談は置いておいて、ちゃんと新品で検品もしっかりした上物ばかりぜよ。なんに使うんかは知らんが……あまり、血を流さんように、わしとしては頼んでおきたいのう……」


 うん。俺もそう思ってる。でもそうも行かないのが戦乱の時代なんだよねぇ……。俺も部下死なせたくないしさぁ。最低限、自分の身は守ってもらわないと。

 

「それにしてもアンタ、わざわざ京都までコレ届けに来てくれたのかい?」


「いや、ちっくと野暮用があってのう。ぶっちゃけるとそのついでじゃ」


 野暮用の中身を話したら怒るかなぁ。びっくりするかなぁ。この人なら話してもあんまり問題はないかもなぁ。うん決めた! 坂本さんには本当のことを話そう!! この人なら信じてくれそうだ!!

 

「坂本さん、信じてくれないかもしれないけど、俺は未来からきたんだ」


「知っちゅうよ?」


 ナンデスト!?

 

「ははぁ、酒に酔って覚えとらんのじゃな? ほれ、長崎で酒を酌み交わした時『近江屋は……近江屋はダメなんですぅ~!!』とか言いながら自分の素性をとっくり話してくれたぜよ」


 ……覚えてない。うそん。ぜんぜん覚えてない。

 

「あとはあれじゃ。『無血革命には坂本さんの力が必要なんですぅ~』とか言いながら泣いてすがってきたぜよ」


 どこまでが本当なのか……やべぇ俺もう酒呑まん!! これはやばい。マジで全然記憶にない。

 

「いやぁ、色々聞かせてもらったぜよ。明治維新……じゃったかのう? それに天皇さんの治世に世界大戦……平成じゃったか? おんしの住んでいた時代は」


 どうやらガチで片っ端から話してしまってるみたいですボク。知らん間に他の人にも似たようなことしゃべってるんじゃないかと心配でならんとです。やばいやばいやばい。

 

「坂本さん、このことは……」


「おうわかっちゅう。というか、話したところでだーれも信じやせんぜよ」


 そこだけが救いっちゃ救いか……。幕府側の人間に似たようなことしゃべってたら、最悪抹殺されるよなぁ俺。

 

「坂本さん、それと、こいつは返しとく」


 彼に渡したのは以前譲ってもらった拳銃。

 

「ん?」


「コイツはアンタが持ってた方が良い。こっちじゃ弾もそうそう手にはいらねぇしな。それに……前にも言ったように、俺はアンタに死なれちゃ困るんだ」


 その為には……少なくとも俺より剣の腕は上だろうけど、それでも拳銃持ってたら助かる率は高いだろ、多分。

 

「じゃあ……遠慮なく返してもらうぜよ。実はのう、こいつを譲ってもらった奴に色々と突っ込まれて大変じゃった」


「誰ですか?」


「長州の高杉君じゃ。前に上海で購入したと言っておったぞ。この国には二つとない珍品じゃちゅうて……ああ、二つはあるんか、彼が持っちゅう分と、コレと」


 なーんか……最近、俺の周りで高杉さんのニオイがプンプンするんですがこれは何かの陰謀ですか? それともフラグですか? 嫌だ近付きたくない。その為には。

 

「坂本さん、できれば早いうちに、秘密裏に……桂さんか西郷さんと俺が接触を持つことは可能か?」


 この二人なら多分、すぐに殺されることはないと思うの。大久保・高杉は怖すぎて出来るならお友達になりたくない。

 

「うーん、おんしの頼みとあっちゃあ無碍に断るわけにもいかんしのう……。よし、交換条件じゃ。その二人のどっちかと席を設ける代わりに、わしにも一人、紹介してほしい人物がおるぜよ」


 誰だ? 俺が紹介できる人間なんかたかが知れてるけどなぁ。組の人間ならまぁ……。

 

「軍艦奉行の勝さんじゃ」


 無茶言うなー!!!!!!

 

「無茶は承知ぜよ。おんしが言っちゅうコトも、同じくらい無茶だっちゅうことをようく理解してもらわんとな」


 確かにそうですよ。新選組の俺があの二人に会うのが難しいってコトぐらいわかってますよ。でもさ、坂本さんは二人と知り合いでしょ? 俺、勝さんと面識も何もナイデスヨ?

 

「何、すぐにとは言やせんさ。今の勢いの新選組じゃったら、そのうち幕府中枢からもお声がかかるじゃろ。その頃でも一向に構やーせん」


 どうだろうなぁ……ぶっちゃけもう、ピーク過ぎてるんだよな、新選組……。まぁ、無血開城前に一回会っておきたいとは思ってたし、何とか手を回してみるか。

 

「おんしが本気で無血革命を望むなら、人と人との仲立ちが何よりも重要になってくるぜよ」


「長州と薩摩に同盟を結ばせたあなたみたいに……ですか」


 一瞬坂本さんはぽかんとした顔をして……それから大笑いし始めた。

 

「かっかっかっ、そうじゃった、おんしにゃあ隠し事はできんのう! じゃが未来のおんしが知っちゅうということは、歴史を動かす大きな出来事じゃった、ちゅうこっちゃ!」


 そのとおりですよ坂本さん。まぁ、そのせいで薩摩が敵に回って、俺らとしてはやりにくくなっちゃうんですけどねぇ。

 

「ほんじゃ、弾オマケしてくれた坂本さんに最後のお土産。数ヶ月のうちに、将軍家茂が死ぬ」


 さすがは耳ざといというか、彼の表情が一瞬で真顔に変わった。多分今、頭の中がものすごい勢いで回転してるんだろうなぁ。

 

「……おんしだけは敵に回したくないのう……ほんじゃ、わしはいぬるぜよ」


 そう言って、坂本さんは旅籠を出て行った。……ってあれ、もしかして俺が支払い? くっそうこんなところで金ケチるんじゃないよ社長様バーヤバーヤ。

 とか思ってたら、出て行くときに、坂本さんが支払ってたって聞いた。ごめんなさい坂本さん、アンタ本当にいい人や……。

 ということで、受け取ったミニエー銃を部下に屯所まで運ばせました。そして各隊組長から剣の腕がビミョーな人間を三名ずつ提出してもらう。んでそいつらは俺直轄の十一番隊、通称銃士隊として修練を積ませることになった。

 うーん、剣術が出来なくても戦力にカウントできるっていいよねぇ。

 

 どうでもいい話だけど、そのメンバー三十名、にも、俺は木刀の練習試合でコテンパンに負けたとです……。俺の実力ってどんだけ低レベルなんだか。哀れむような目で見られた。チクショー!

 

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