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醜いアヒルの子で、行きましょう。

作者: ありま氷炎
掲載日:2026/05/13

 アカード家には、醜い子がいる。

 両親、兄は皆金髪碧眼なのに、その子だけ黒髪に黒い瞳だった。

 ずんぐりとした体形で、ドワーフのようだと言われて育った。

 八歳の時に、「本当の子」が戻ってきた。

 その子は、金髪碧眼の美しい女の子だった。

 妖精に取り違われたんだと、その子は金髪碧眼の女の子がいた孤児院に預けられた。


「ドワーフって、どんな生き物なの?」

「背が低くて力持ちの妖精のことだよ」


 孤児院の先生は、とても優しい人だった。

 その子は小さい時からドワーフの子どもだと言われて育ったので、ドワーフがどんなものが知りたかった。


「おっきくなったら、私ドワーフに会いに行きたい」

「そうだねぇ。そのためには冒険者にならなくきゃ。ドワーフは山奥に住んでるから、冒険者しかいけないんだよ」


 先生の言葉を信じて、その子は冒険者になった。


「先生。私、やっとA級の冒険者になったの。これでドワーフの森へ行けるわ!」


 八歳の時に孤児院に預けられ、十六歳で冒険者になったパウリーナは、十八歳になり、A級冒険者になった。

 冒険者にはレベルがあり、下からD、C、B、A、Sだった。

 パルリーナには魔法の才能があり、力もドワーフのように強かった。

 危険な依頼も頑張ってこなして、彼女はわずか二年でA級までになった。

 ドワーフの森には危険な魔獣が住んでおり、A級以上でなければ、入れないようになっていた。

 

 孤児院の先生は、ドワーフの話をして冒険者になることを勧めた自分を責めていた。A級となった今でも、危険なドワーフの森へ行くパウリーナを止めたかった。


「パウリーナ。どうしても行くのかい?ドワーフに会う必要はもうないだろう?」

「必要はないんだけど、私が会いたいの。冒険者仲間も、みんな私のことドワーフみたいだって言うし。すごい気になるのよ」

「そうかい。お前がそう言うのであれば、けれども必ず帰ってくるんだよ」

「うん。当たり前よ」


 そうしてパウリーナは街を旅立ち、ドワーフの森へ向かった。

 ワイバーンやケンタウロスを倒しながら、パウリーナはやっとドワーフの村を発見した。

 

「わああ。あなたがドワーフね!」


 門番を見て、パウリーナは感嘆した声を上げる。

 背は低いが、逞しい体躯。

 鼻が丸く、耳はとがっている。

 パルリーナが調べたドワーフの特徴そのものの男が門に立っていた。


「そういう、お前こそ、ドワーフ。いや、違うな!これは」


 門番が急に慌てて、村の中に入っていった。

 そうしてもう一人の男を連れてやってきた。


「呪いもちか。その風貌は、リタの呪いか」


 男はパウリーナの顔を見るとそう言った。


「呪い?リタ?」


 男はドワーフには珍しく魔法を使う男だった。

 名をベルントと言い、呪いを専門にしている闇の魔法使いだった。

 彼はドワーフの歴史も調べており、今までドワーフがかけてきた呪いについても知り尽くしていた。

 リタというドワーフも魔法を使い、ベルントと同じく闇の魔法使いだった。

 ドワーフの森に迷い込んだ男に惚れこみ、彼を屋敷まで送り届けた。

 男はとても美しい男で、リタに優しくしていたが、屋敷に着くや否、態度を豹変させた。彼には妻も子供もいたのだ。屋敷に無事に戻るために、彼はリタの恋心を利用したのだ。

 リタは激しく怒り、呪いをかけた。

 将来自分のように醜い子供が生まれるようにと。

 呪いはかけるほうに負担をかける。 

 リタは魔力を失い、ドワーフの森に帰るとしばらくしてなくなってしまった。

 リタを利用した美しい男は、パウリーナの祖先であったが、そのことを誰も記録していなかった。

 だから、パウリーナがドワーフのような容姿で生まれてきたのが呪いだと気づかなかったのだ。


「呪いを解く方法がある。リタは解呪方法を託していった。解いてほしいか?」

「別に」

「は?」


 ドワーフの魔法使い、ベルントは予想外の答えに口をあんぐり開けてしまった。


「リタさんの呪い。そのままもらっておく。私はこの姿好きだし。力が弱くなったりしたら困るもの」

「え?だって、あんた、元々は金髪碧眼の美しい姿だったんだぞ。戻りたくないのか?」

「うーん。あの家にいたらそう思ったかもしれないけど、今は、今の姿がいいの。だって、私は物凄い強いんだから」


 ベルントは、パルリーナがあまりにも無邪気で、本来なら毛嫌いされるはずの容姿を受けている状態に感心してしまった。

 いえ、惚れてしまった、それが正しいかもしれない。

 ベルントは、実はまだ二十歳になったばかりの青年であった。


「えっと、俺はベルント。あんたの名前はなんていうんだ」

「あ、自己紹介まだだったね。私はパウリーナ。よろしくね。ベルント。あの、折角ドワーフの森にきたので、しばらく滞在してもいいかな?あの、野宿するから」

「野宿。馬鹿言うなよ。魔獣がうじゃうじゃしているのにできるわけないだろう」

「光の魔法で結界作るから大丈夫だよ」

「光の魔法?!そんなものまで使えるのか?あんた?」

「あんた、じゃない。パウリーナ。そうよ。私は、光、火、水、三つの魔法が使えるわ。闇が使えないのが残念だけど」

「俺が教えてやろうか?」

「え?いいの?」


 そうして、パウリーナはベルントの家で、彼の闇の魔法を学ぶことになった。

 年若き男女。

 お互いに恋心を芽生えさせるのは当然で、二人は恋人同士になり、結婚に至る。

 生まれた子供は、ドワーフではなく、金髪碧眼の偉く美しい赤子だった。


「……パルリーナも呪いがなければ、こんな感じだったのか」

「そうかもね。でも呪いがあってよかった。ベルントにも会えたし、すっごく強くなったし」


 パルリーナはS級を超えて、SS級の冒険者にまでなっていた。

 その評判は、彼女の実家まで届き、生まれた子供が金髪碧眼であった噂も伝わり、会いたいと連絡を受けたが、パウリーナは生涯実の家に戻ることはなかった。


 ドワーフの森で、パウリーナは夫ベルントと幸せな家族を築き、末永く暮らしました。


(おしまい)


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