第2話:自由
「……わかり、ました……。いままで、ごめんなさい……」
涙声でそう言い残し、私は木々の間を駆け抜けた。
ドレイク様たちの視線が届かない、森の奥深く。足音が完全に聞こえなくなったところで、私は静かに立ち止まった。
「追放、されてしまいました…」
涙をハンカチで拭いながら、私は傍らに在る「彼女」に向かって、愛おしむように語りかけた。
彼女は、私の言葉に同意するように、静かに微笑み返してくれる。
「ええ、本当に」
私が昨夜、オークの亡骸をいつもより長く観察していたのを見ていたのだろうか。
しかし、それはその様を、愛する彼女と静かに語り合っていただけなのだ。
「でも……本当に、残念です」
私はふと目を伏せ、ため息をこぼした。
勇者パーティという職場は、とても魅力的だった。
あのような素晴らしい舞台を失ってしまったのは、本当に悲しいことだ。
彼女に申し訳なく思いながら歩いていると、ふと、草むらを掻き分ける下品な足音が聞こえた。
「ひひっ、こんな森の奥で、上玉のねーちゃんが一人で何してんだ?」
「勇者パーティの聖女様じゃねえか。へへへ…」
薄汚い男たちが三人、品のない笑みを浮かべて現れる。
この辺りを荒らしている野盗か。私の神官服と、武器を持たない姿を見て、完全に「弱い獲物」を見つけたような目をしている。
「……まあ」
私は、追放された悲しみから一転、喜びの笑みを返す。
「私、困っていたのです」
「あぁ? 何言ってんだ嬢ちゃん、頭おかしくなったか?」
「俺たちがたぁっぷり可愛がって……」
「治癒」
私が指先を優雅に振るうと、男たちの足元に清らかな光の魔法陣が展開される。
「な、なんだ!? 暖かい…いや、体が熱……ッ、ぎゃあああああああああ!」
男たちの絶叫が森に響き渡る。
私の回復魔法は、少しばかり特別だ。
過剰に癒すことで、対象の細胞に様々な変化をもたらすことが出来る。
「生命の、神秘……」
「ひ、ぎぃぃぃ! たす、たすけ……ッ!」
「ああ、痛いのね。治癒」
「ごばぁっ……!?」
愉しくて、つい、弾けさせてしまった。
男たちが原型を留めない姿で地面をのたうち回る中、私は返り血で純白の神官服が汚れるのも気にせず、うっとりとその光景を見つめていた。
「……ねえ、とても素敵」
私は彼女にそっと手を伸ばし、血溜まりのそばで静かに微笑む。
「さあ、行きましょう」
血に濡れた頬に手を当て、私はこの上ない幸せを感じていた。




