むせ返る試練
いつも通り一緒に主人公と考察をどうぞ。
恒例のオリジナル門答。
■ 以下に答え。
石窯の内部は、私の想像を絶する熱量で満ちていた。
呼吸をするたびに、肺の奥まで熱せられた鉄を流し込まれるような苦しさが襲う。揺らめく炎は私を舐めとるように四方から迫り、出口は蜃気楼のように遠ざかっていく。
「……はあ、はあ。……ふざけないで。私のドレスが、この熱で変質しかけているじゃない」
汗の一粒すら流すまいと、私は奥歯を噛み締めて恐怖を押し殺した。
すると、その時。焦げ付いた煉瓦の壁そのものが震えるような、低く不気味な声が窯の内部に響き渡った。
『……本日のメニューの一品は、からあげ。しかし、からあげで腹が膨れることはなかった。なぜか……?』
……問い?
こんな、脳が沸騰しそうな極限状態の中で、この洞穴は私に「問いかけ」を強いるというの?
一瞬、意識が遠のきそうになる。けれど、門に掲げられていたあの不吉な言葉が脳裏をかすめた。
『質の悪い食材は、灰と化す』
……なるほど。知性なき具材は、調理される価値もなく焼き捨てられるということね。
「いいわ。不本意だけれど、その退屈な余興に乗ってあげる」
私は足を止めた。
思考を巡らせる。ボリューム不足? いえ、それでは答えとして品がないわ。脳と胃のギャップ? それとも、噛むたびに溢れる肉汁が食欲に火をつけてしまい、満腹中枢が作動する前に食べ終わってしまった……とか?
……いいえ、違う。
窯の温度が、目に見えて上がっていく。壁が赤熱し、足元の石畳がドロドロと溶け始めた。
早く正解を導き出さなければ、私はここで「焼き損じ」として灰になる。
私は深呼吸をし、喉の渇きを無視して、冷静にその言葉を反芻した。
「からあげ、からあげ……」……。「お腹が膨れない」……。
■
「……分かったわ。答えは、それが『空揚げ(からあげ)』だったからよ。中身が空っぽだったのよ!」
『……正解だ』
声が響くと同時に、肌を焼くような熱風がわずかに和らいだ。
「ふん。くだらない。何の教訓にもならない、冷めた料理のような問いだわ。でも、『問いで空腹が満たされない』という着点だけは、皮肉が効いていて合格ね」
扇子を一度開き、自分を仰ぐ。けれど、試練は終わらなかった。
『……次の問いだ。いつも文句ばかり言っている果物は、何だ……?』
また、下俗な問いかけ。
そんなの簡単よ。……。
言いかけて、私は一度言葉を飲み込んだ。
待つのよ、セレスティーヌ。これは命が懸かった問い。もう少し慎重に、脳のシワを伸ばして考えなさい。
「文句」……。
あれも無し、これも無し……梨(無し)かしら? いえ、あれは厳密には否定であって文句ではないわ。
柿? 泣き言は文句とは違う。
もっと、こう……直接的で、聞いているだけで不快になるような、そんな性質を持った果物……。
そうか、分かったわ。
■
「答えは、『モモ』よ。――もー! もー! と、いつも不満を漏らしているからよ!」
『……正解だ』
その瞬間、正面の煉瓦が音を立てて崩れ落ち、眩いばかりの光が差し込んできた。
熱気が引き、ようやく出口が開いたのだ。
「……はあ。真面目にこんなことを考えて答えている自分が、心底馬鹿らしくなるわ。一体どういうセンスをしているのよ、この街の支配者は……」
私は乱れた髪を指先で整え、光の先へと足を踏み出した。
けれど、出口の向こうから漂ってきたのは、解放の香りではなかった。
それは、鼻を突くような不気味な「脂」の匂い。
肉を焼き過ぎた後の、重苦しく、それでいて甘ったるい死の予感が鼻を刺激する。




