マック・ナイト
叫び疲れた。もう……喉がカラカラ……。うえ……。
この「馬の付属品」に何を言っても無駄だということが、枯れ始めた喉の痛みとともに理解できてきた。私は大人しく、不本意ながらも彼の小脇に抱えられたまま、城門の外へと無慈悲に運ばれる。
そこで待っていたのは、私の人生の美学を根底から覆すような、一頭の哀れな醜い生物だった。
「……え!? なにこの四本脚の雑巾……」
そこにいたのは、白馬でもなければ、気高い駿馬でもなかった。
毛並みは泥と埃でゴワゴワに固まり、鼻からは絶えず荒い息を吹き出し、目は「いつでも蹴り殺してやる」と言わんばかりの凶暴な光を宿した、実用性全振りの軍馬だった。
「私の相棒、ボブです。戦場を共にした、最高の馬ですよ」
「最高? どのあたりが? 衛生概念が?」
この雑巾の背に乗るなんて、私の絹のドレスに対する冒涜だわ。私は必死に、城門のすぐそばにある「聖域」を指差した。
「ねえ、あっちに厩舎があるから少し寄っていきましょう。上等な馬が沢山いるし、それに丁度なにか飲みたいの。知ってた? 国や城下でいま有名な『マック・ナイト』のお店を、特別にこの城の敷地に置いてもらってるのよ。民間人には手を出してないと思うから、是非、寄って行きましょう?」
あそこの冷えたコー……じゃなかった、黒蜜炭酸水は最高なのだ。
「あんな錬金術のポーション塗れの食べ物は危険です。体を壊してしまいますよ」
アルフレッドは心底軽蔑したように、マック・ナイトの店舗を一瞥した。
「そう? 何度もあそこのサンドイッチ食べてるけど? チーズが最高なのよ。それに今ならドリンクホルダー付きの鞍が貰えるみたいだし。あれを食べてないなんて、あなた人生損してるわよ」
「……ドリンクホルダー? 騎士が戦いの最中に飲み物を嗜むなど、軟弱の極み! さあ、ボブに乗ってください!」
「嫌よ! 私はあの『ハッピー・ナイト・セット』の鞍を手に入れるまでは、ここを動かないわよ!!」




