役立たずのコスプレ達
「助けてー! 助けてー!! 誰か! 侵入者よ!! この不法侵入で誘拐犯の不審者を捕まえて!!」
私は喉がちぎれんばかりに絶叫した。
お城の「嘆きの塔」から引きずり出される私の声は、しかし、爽やかな午後の空気に空しく吸い込まれていく。
「……セレスティーヌ様、ひどく混乱されているんですね。無理もありません。自由の光が眩しすぎるのでしょう」
私の肩をがっしりと、岩のように硬い腕で抱え込んだアルフレッドが、慈愛に満ちた(と本人は思っているであろう)瞳で私を見下ろした。その視線が最高にうざったい。
しかし希望もまだある。
塔を抜ければ、そこは城内の中庭だ。
普段なら、私の平和な引きこもり生活を守るために、鉄壁の守りを誇るはずの衛兵たちが——ぶっ倒れてる!?
「……ちょっと、なに寝てんのよ!!」
そこら中に、鉄の塊が転がっていた。
ある者は茂みに突っ込みお尻を突き出し、ある者は噴水の縁で白目を剥いている。まさに全滅だ。
「ただの案山子じゃない。その鎧はコスプレなわけ? 誰でもいいからさっさと起きなさいよ!! なんでどいつもこいつも、こんな馬の付属品如きにやられてんのよ!!」
私は、倒れている衛兵の太ももを精一杯蹴りつけたが、重たい防具に跳ね返されて自分の足が痛んだだけだった。
「いったーー!!!!」
「無駄ですよ、セレスティーヌ様。彼らは私が『正義の鉄槌』で優しく眠らせておきました。彼らもまた、国家という歯車に組み込まれた被害者……。本当の自分を取り戻すため、しばしの休息が必要なのです」
「なにを訳の分からない事を。あんたの『優しく』は、一般人の『重傷』なのよ!」
アルフレッドは、私の抗議を「救出の興奮」と解釈したのか、さらに腕に力を込めた。ミシミシと、私の特注のドレスが悲鳴を上げる。
たっかいのに……。
「さあ、城門の外に私の相棒が待っています! 共に駆け抜けましょう、泥の地平線まで!」
「泥なんて一歩も歩きたくないって言ってるでしょー!! 誰かーー!!!!」
私の叫びに応えてくれる人は誰一人としていなかった。




