表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お節介イケメン騎士のせいで快適引きこもり生活を奪われたので、詫びに豪華旅行を満喫できるように強いらせてもらいます。  作者: 逆立ちハムスター


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/14

安眠の代償

深夜。アルフレッドの「自由の謳歌」という名のキャンプ計画が森に響き渡る頃、私の忍耐は限界を迎えていた。

 馬車のシートは確かに最高級だが、いかんせん狭い。おまけに、バックミラー越しに発光するベレッタの視線を感じながら眠るなど、熟練の修行僧でも不可能だ。


「……ベレッタ。起きなさい」

「はっ! 既に起きております、セレスティーヌ様! 次の瞬きの回数まで数えておりましたわ!」

「気持ち悪いわね。いいから、その短刀を隠して。あそこの宿屋へ行くわよ。あの筋肉ダルマには内緒よ。面倒な説教を聞くのは御免だわ」


私はベレッタを影のように従え、こっそりと森を抜け出した。

 街道沿いの宿屋で、私は迷わず「一番高い部屋」を要求した。差し出したのは、ギムレットの金庫から「拝借」した金貨だ。


「……何これ。これが『特等室』? 冗談でしょう?」


案内された部屋は、お城の犬小屋……曰く、猟犬たちの休憩所よりも質素だった。ベッドのシーツは麻で、肌触りはまるでおろし金のよう。壁には謎のシミがあり、窓の外からは酔っ払いの歌声が聞こえてくる。

 けれど、あの「馬の付属品」の語る森と、ボブのうるさい鼻息が混じる狭い馬車の空気よりは数倍マシだ。私は溜息をつき、グリフィンの防具を脱ぎ捨ててベッドに潜り込んだ。


「ベレッタ、ドアの前で立っていなさい。一歩でも中に入ったら、あんたの給料をマイナスにするわよ」

「承知いたしました! 貴女様の安眠を、迅速に、命懸けでデリバリー(死守)いたします!」


なんとか眠りにつけた翌朝……。

 鳥のさえずりで目が覚めた……と言いたいところだが、実際は「視線の重圧」で目が覚めた。


「……ひっ!?」


飛び起きた私の目の前には、数センチの距離で私の寝顔を凝視するベレッタの顔があった。


「おはようございます、セレスティーヌ様。寝起きの第一声、大変可愛らしくて……嗚呼、鼓膜が幸せですわ」

「……あんた、ドアの前で立ってろって言ったわよね?」

「立っておりましたわ! この一時間ほどは、ベッドの横で直立不動で観察させていただいておりました!」


もはや怒る気力も失せ、ふと部屋の隅に目をやると、そこには異様な光景が広がっていた。

 三人の男たちが、まるで芋虫のようにぐるぐる巻きに縛り上げられ、猿轡をかまされて転がっている。


「……何、あれ。新しいインテリア?」

「いえ、夜中にセレスティーヌ様の部屋に忍び込もうとした不届き者――いわゆる『盗賊』ですわ。貴女様の眠りを妨げぬよう、音も立てずに迅速にパッキング(拘束)しておきました。……殺しましょうか?」


ベレッタが、朝食のパンを切り分けるような手軽さで短刀を抜く。


「やめなさい。死体処理で出発が遅れるのは嫌よ。……でも、せっかくの向こう見ずな訪問者だわ。手間賃くらいは頂いておきましょう」


私は盗賊たちの懐から、彼らが今夜稼ぐはずだった(あるいはこれまでに奪ってきた)現金をすべて回収した。

「不法侵入の慰謝料よ」と言い捨て、私は再びダサいグリフィンの防具に身を包み、アルフレッドが目を覚ます前にキャンプ地へと戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ