閃光のような冒険
こんなの全然楽しくない。一緒に屋台のご飯を食べたりしたいのに洞窟なんて。
「ほら行くぞ、リズ。巨大スライムは絶対中にいるぞ」
「ラディオやめようよ。今回は本当に危ないって、ねえ、聞いてる?」
私の声も聞かずにラディオは洞窟に入っていく。
街で巨大スライムが噂になっていた、それを聞いてラディオはいの一番に洞窟に乗り込んでいったのだ。
ラディオが早く冒険家になりたいのは知ってたし、私も一緒にいれるから付き合ってたけど、こんなのは聞いてない。
私はラディオを追いかける。
「ねえラディオ。危ないって」
そんなことを言うが、ラディオは聞きもしない。
「大丈夫だぞリズ。お前は怖がりすぎだって」
「こんな洞窟怖いに決まってるじゃん。ねえ、街に戻ろう? そっちの方が楽しいって」
「街は散々冒険しつくしただろ? 俺たちの冒険はもう一歩進んだんだよ。大丈夫だ、剣も持ってきたし俺が守ってやるって」
そう言ってラディオが見せるのは古くて一部が錆びた剣。
こんな剣で巨大スライムと戦えるわけがない。
「……それ、おじいさんのじゃなかった?」
「ああ、じいちゃんに聞いたら貸してくれたよ。頑張って来いって」
「はあ、もうこの一家は」
思わずため息をつく。
ラディオの家は危険の標準がおかしい、下手したら死ぬかもしれないのに。
「あのね、ラディオの家は冒険家の一族かもしれないけど、だからってラディオも危ないことしなくていいんだよ?」
「危なくなんかないって。母ちゃんみたいなこと言うなよ。嫌だったら家で本でも読んでればいいじゃんか」
ラディオの機嫌が悪そうだけど知るもんか。なんでわざわざ命を賭けないといけないの?
とはいえラディオは止まる気がないみたいだし、ここで私だけ引き返すわけにもいかない。
このまま放っておくと、何やるか分かったものじゃない。
ここには巨大スライムがいるというから、なおさら心配だ。
薄暗い洞窟を進む。空気はジメジメしている。地面の岩は硬く歩く度にコツコツ音を立てる。
あちこちに白く光るキノコが生えていて、明かりは問題なかった。
それは閃光ダケといい、私もよく知っているキノコだ。
洞窟は静かだ。コウモリもネズミもいない。
巨大スライムに食べられてしまったのだろうか?
そして洞窟を進むと、奥に何かがいた。
大きな緑の液体が洞窟の奥を這っている。
「巨大スライム?」
私が呟くとラディオが猪みたいに突っ込んでいく。
「え、ラディオ!?」
「おらああ!! 俺の剣の力を見せてやる!」
そう言って剣を振り上げ、ラディオが巨大スライムに突き立てる。
だが剣は巨大スライムに当たると止まった。
寧ろ剣が吸い込まれていく。
「うお!?」
ラディオが慌てて剣の柄から手を放す。
そして巨大スライムがこっちに這ってくる。
「ラディオ! 逃げないと!」
「分かってるよ!!」
ラディオは怒鳴りながらこっちに走る。
「うわ!」
だがラディオは転んだ。
「何やってるの!?」
「違う! 足が引っかかって!」
見るとラディオの足に巨大スライムの一部が巻き付いていた。
ラディオもそれに気が付き、大慌てになる。
「うわ! やめろ! リズ! 助けて!」
「えっと、こういう時は……」
必死に考える。
何も持ってない。本当に巨大スライムがいるなんて思ってなかったし。
どうしようどうしよう。
そして視界の端にキノコが見えた。
白く光るキノコ。それがあちこちに生えている。
閃光ダケだ。
私は閃光ダケを引き抜くと、そのまま閃光ダケの茎を折る。
するととんでもない光と、爆音がした。
「う!」
目が真っ白になり、大きな音でくらくらする。
だけど必死に状況を確認する。
ラディオは耳を抑え、目をつむって蹲っていたが、巨大スライムの身体は少し後退し、ラディオの足に絡まっていた身体も解けている。
私はラディオに駆け寄ると、その手を取る。
「ほら! 行くよ!」
「あ、ああ!」
そして私たちは必死に逃げた。
そして逃げて逃げてようやく洞窟から出られたのだった。
「はあ、はあ」
二人して息を吐く。
本当に死ぬかと思った。
暫くそうしていると、ラディオがようやく口を開く。
「ありがと、リズ。お前がいなかったら死んでたかも」
「本当だよ! もう私の忠告を無視してどこかに行かないでよね!」
「分かったよ! 本当にすまん。これからはちゃんとリズの話を聞くよ」
「そうして!」
私は少し怒ったけど、それでも二人で手を繋いで街に帰った。
とんだ冒険だったけど、忘れられない閃光のような日だったかもね。
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