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掌編

閃光のような冒険

作者: 綴 詠士
掲載日:2026/01/15

 こんなの全然楽しくない。一緒に屋台のご飯を食べたりしたいのに洞窟なんて。


「ほら行くぞ、リズ。巨大スライムは絶対中にいるぞ」

 

「ラディオやめようよ。今回は本当に危ないって、ねえ、聞いてる?」

 

 私の声も聞かずにラディオは洞窟に入っていく。


 街で巨大スライムが噂になっていた、それを聞いてラディオはいの一番に洞窟に乗り込んでいったのだ。


 ラディオが早く冒険家になりたいのは知ってたし、私も一緒にいれるから付き合ってたけど、こんなのは聞いてない。

 

 私はラディオを追いかける。

 

「ねえラディオ。危ないって」

 

 そんなことを言うが、ラディオは聞きもしない。

 

「大丈夫だぞリズ。お前は怖がりすぎだって」

 

「こんな洞窟怖いに決まってるじゃん。ねえ、街に戻ろう? そっちの方が楽しいって」

 

「街は散々冒険しつくしただろ? 俺たちの冒険はもう一歩進んだんだよ。大丈夫だ、剣も持ってきたし俺が守ってやるって」

 

 そう言ってラディオが見せるのは古くて一部が錆びた剣。

 

 こんな剣で巨大スライムと戦えるわけがない。

 

「……それ、おじいさんのじゃなかった?」

 

「ああ、じいちゃんに聞いたら貸してくれたよ。頑張って来いって」

 

「はあ、もうこの一家は」

 

 思わずため息をつく。


 ラディオの家は危険の標準がおかしい、下手したら死ぬかもしれないのに。


「あのね、ラディオの家は冒険家の一族かもしれないけど、だからってラディオも危ないことしなくていいんだよ?」


「危なくなんかないって。母ちゃんみたいなこと言うなよ。嫌だったら家で本でも読んでればいいじゃんか」

 

 ラディオの機嫌が悪そうだけど知るもんか。なんでわざわざ命を賭けないといけないの?

 

 とはいえラディオは止まる気がないみたいだし、ここで私だけ引き返すわけにもいかない。

 

 このまま放っておくと、何やるか分かったものじゃない。

 

 ここには巨大スライムがいるというから、なおさら心配だ。

 

 薄暗い洞窟を進む。空気はジメジメしている。地面の岩は硬く歩く度にコツコツ音を立てる。

 

 あちこちに白く光るキノコが生えていて、明かりは問題なかった。

 

 それは閃光ダケといい、私もよく知っているキノコだ。

 

 洞窟は静かだ。コウモリもネズミもいない。

 

 巨大スライムに食べられてしまったのだろうか?

 

 そして洞窟を進むと、奥に何かがいた。

 

 大きな緑の液体が洞窟の奥を這っている。

 

「巨大スライム?」

 

 私が呟くとラディオが猪みたいに突っ込んでいく。

 

「え、ラディオ!?」

 

「おらああ!! 俺の剣の力を見せてやる!」

 

 そう言って剣を振り上げ、ラディオが巨大スライムに突き立てる。

 

 だが剣は巨大スライムに当たると止まった。

 

 寧ろ剣が吸い込まれていく。

 

「うお!?」

 

 ラディオが慌てて剣の柄から手を放す。

 

 そして巨大スライムがこっちに這ってくる。

 

「ラディオ! 逃げないと!」

 

「分かってるよ!!」

 

 ラディオは怒鳴りながらこっちに走る。

 

「うわ!」

 

 だがラディオは転んだ。

 

「何やってるの!?」

 

「違う! 足が引っかかって!」

 

 見るとラディオの足に巨大スライムの一部が巻き付いていた。

 

 ラディオもそれに気が付き、大慌てになる。

 

「うわ! やめろ! リズ! 助けて!」

 

「えっと、こういう時は……」

 

 必死に考える。

 

 何も持ってない。本当に巨大スライムがいるなんて思ってなかったし。

 

 どうしようどうしよう。

 

 そして視界の端にキノコが見えた。

 

 白く光るキノコ。それがあちこちに生えている。

 

 閃光ダケだ。

 

 私は閃光ダケを引き抜くと、そのまま閃光ダケの茎を折る。

 

 するととんでもない光と、爆音がした。

 

「う!」

 

 目が真っ白になり、大きな音でくらくらする。

 

 だけど必死に状況を確認する。

 

 ラディオは耳を抑え、目をつむって蹲っていたが、巨大スライムの身体は少し後退し、ラディオの足に絡まっていた身体も解けている。

 

 私はラディオに駆け寄ると、その手を取る。

 

「ほら! 行くよ!」

 

「あ、ああ!」

 

 そして私たちは必死に逃げた。

 

 そして逃げて逃げてようやく洞窟から出られたのだった。

 

「はあ、はあ」

 

 二人して息を吐く。

 

 本当に死ぬかと思った。

 

 暫くそうしていると、ラディオがようやく口を開く。

 

「ありがと、リズ。お前がいなかったら死んでたかも」

 

「本当だよ! もう私の忠告を無視してどこかに行かないでよね!」

 

「分かったよ! 本当にすまん。これからはちゃんとリズの話を聞くよ」

 

「そうして!」

 

 私は少し怒ったけど、それでも二人で手を繋いで街に帰った。

 

 とんだ冒険だったけど、忘れられない閃光のような日だったかもね。





 

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